女性が活躍しやすい職場づくりを進める上場企業を経済産業省と東京証券取引所が選定する「なでしこ銘柄」について、2024年度は更年期症状などの女性特有の健康課題を解決に導く「フェムテック」を活用した支援などを評価項目に新たに加えることが8月25日、分かった。女性の健康課題による社会全体の経済損失は年間約3兆4000億円に上るとされ、評価項目の見直しで企業に前向きな対応を促す。
女性は月経周期や女性ホルモンの変化が心身に与える影響が大きい。特有の健康課題として月経に伴う腹痛や頭痛といった「月経随伴症」や、ホルモンバランスの乱れによる「更年期症状」、乳がんなどの「婦人科がん」が指摘されている。
働く女性が増える中、こうした健康課題により仕事のパフォーマンスが落ちたり、離職を余儀なくされたりするケースが目立ってきた。働く人の半数に迫る女性の不調に伴う損失は看過できないほど大きくなっている。
経産省の試算では、経済損失は年間約3兆4000億円にも上った。このうちパフォーマンスの低下による損失は約1兆300億円、離職では約1兆3800億円。欠勤の損失は約4300億円、休職は約3000億円とした。
政府は6月に決定した女性活躍や男女共同参画の重点方針「女性版骨太の方針2024」で、企業の健康診断で月経随伴症や更年期障害などの早期発見につながる問診実施を促す方針を掲げた。産婦人科受診などにつながる相談事業を促進することも盛り込んだ。
こうした状況を踏まえ24年度のなでしこ銘柄では、女性特有の健康課題に対する支援の取り組みを評価項目に加える。女性従業員が健康課題を解決して仕事を継続し、共働きや子育てとの両立を後押しする狙いだ。
新たな評価項目は26日に経産省が発表、募集を始める。24年度は参画企業の裾野を広げるため、選定企業の声をグロース・スタンダード市場の上場企業などにPRする取り組みも実施。経産省の聞き取り調査では、投資家や就職活動を行う学生へのアピールになるといった回答が寄せられた。
なでしこ銘柄は女性活躍に前向きな企業を選定することで、こうした企業への投資を呼び込み、積極的な取り組みを産業界全体へ広げようと12年度に始まった。23年度は両立支援の評価に重きを置く新カテゴリーの「Nextなでしこ共働き・共育て支援企業」も創設し、計288社が応募、最終的に計43社が認定されている。
英語のfemale(女性)とtechnology(技術)を掛け合わせた造語。生理や出産育児、更年期といった女性の健康に関わる悩みを最新技術で解決に導く製品やサービスを指す。生理用吸水ショーツの他、月経管理アプリや妊活サポートアプリなどが代表例。市場の拡大が急速に進んでおり、2025年に世界で5兆円規模になるとの推計もある。
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