スマートフォンのオンラインゲーム上のチャット機能で女子小中学生を脅迫し、わいせつな動画や画像を送らせる──大人の目が届かないところでこうした性犯罪が横行し、被害者支援団体が注意を呼びかけている。小中学生のスマホ所有率が高まるのに比例し、被害相談も増加。団体は「一度性被害に遭えば、大人になってからも深刻な影響が続く」と対策の必要性を訴える。
「女児の性行為に性的興奮を覚えた」
今年5月、オンラインゲームで知り合った女児を脅迫したとして不同意性交や映像送信要求などの疑いで逮捕された少年(17)は、大阪府警の取り調べにこう供述した。埼玉県三郷市に住む高校2年生。大阪府だけでなく、北海道、神奈川県など広範囲の女子小中学生10人以上が被害に遭っていた。
ターゲットにしたのはチャット機能のあるオンラインゲームをプレイする子供たち。自身も女児を装って「一緒にゲームしよう」とメッセージを送り、「地元が同じだ」などと偽り距離を縮めた。「ボイスチャット」という通話機能で相手が男性の声に違和感を覚えると、「風邪をひいてて声が変」などとごまかしたという。
親しくなると、SNSの連絡先を交換。投稿の中から相手の顔写真を入手し、態度を豹変(ひょうへん)させる。「(顔写真を)晒されたくなかったら裸の写真を送れ」と脅迫し、ビデオ通話中にわいせつな行為を指示した。少年のゲームアカウントをブロックしても、少年は別のSNSから再びメッセージを送り、脅し続けた。
要求するわいせつ動画の内容はエスカレートし、押収された少年のスマホには、被害者が下半身を自撮りさせられるなどの複数の動画が残されていたという。
小中学生のスマートフォンの所有率は年々上昇。それに比例するように、SNSをきっかけとした性犯罪被害も増え続けている。
NTTドコモの研究機関である「モバイル社会研究所」は、小中学生のスマホやキッズケータイ所有状況を調査している。直近の1年間でスマホの所有率は全学年上昇しており、昨年11月時点での小学生高学年(4〜6年)の平均所有率は4割超。中学1年からは7割を超え、中学3年では8割に達した。
これに伴い、小学生が性犯罪の被害に遭うケースも増加している。
警察庁が今年公開したデータによると、SNSがきっかけで児童買春、児童ポルノ、不同意性交・不同意わいせつなどの被害に遭った小学生の人数は2023年、過去最多の139人となった。平成30年と比較すると2倍以上に増えている。
被害事案別では、児童ポルノが72人、不同意性交が23人、不同意わいせつが19人だった。
「年々子供の性被害の相談は増えていく」。性被害にあった子供やその両親へのカウンセリングなどの支援を行う認定NPO法人「大阪被害者支援アドボカシーセンター」(大阪市)の木村弘子事務局長(64)はこう話す。
SNSやオンラインゲームをきっかけにした性被害の相談も少なくないが、加害者から口止めされていることが多く、すぐには表面化しないケースがほとんどだ。
木村事務局長は「大人の目の届かないところで子供たちがひどい性被害に遭っている。一度被害に遭うと、大人になってからの性思考にも影響が出てしまう」と危惧する。「子供にスマホを与えるなら有害なサイトやアプリが制限できるフィルタリング機能などをつけてほしい」とした上で、学校と家庭が連携し、見知らぬ相手を安易に信用して個人情報を明かさないなどのネットリテラシー教育を徹底する必要性も訴えた。(鈴木源也)
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