米国のエンターテインメント業界で、生成AIへの規制を求めるストライキが再燃している。今回ストを行ったのは、ゲームに出演する声優ら。自分たちの声を無許可で再現した「AI声優」によって雇用が失われるリスクを強く危惧。利用の制限などを求めて7月からストを実施し、9月5日には一部の制作中のゲーム作品との間で、AI利用を制限する暫定合意を締結した。危機感の高まりを受け、州議会などでは法整備の機運も高まりつつある。
今回のストの主体は、昨年の大規模ストを実行した「映画俳優組合―米テレビ・ラジオ芸術家連盟」(SAG-AFTRA)に加入するゲーム声優や、モーションキャプチャー(現実の人の動きをデジタル化する技術)の演者だ。
声優らは、「生成AIは自分たちの仕事を脅かしている」として「AI声優」の台頭を危惧している。組合側はゲーム会社に対して生成AIの使用制限や、声優らへの適切な報酬の支払いなどを求めてきた。
だが、数カ月に及んだ交渉は決裂。組合側は7月下旬にストを通告し、8月に米西部カリフォルニア州のワーナー・ブラサース・ゲームズやウォルト・ディズニー・スタジオの前でピケを張った。
ストを牽引(けんいん)する声優のリアンナ・アルバニージーさんはロイター通信に対し、「ゲーム会社が使用する(AI声優の)声のモデルは、私たちの同意も報酬もなしに、私たちの声を元に生成したものだ」と主張。生成AIは「脅威」であると強調した。アルバニージーさんは日本のゲーム「ペルソナ5 タクティカ」(英語版)のエル役などを務める。
組合は今月5日、80作品のゲームとAI利用に関する暫定合意を締結したと発表。AIによる声の「搾取的利用」からの保護や賃金面の改善などを保証した。一方、AP通信によると、ワーナーやディズニーなど大手企業に対するストは今後も継続するという。
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