素材大手の三井化学が物流倉庫向け搬送ロボットで世界に挑戦しようとしている。スタートアップ(新興企業)のラピュタロボティクス(東京都江東区)と二人三脚で進める「自在型自動倉庫ラピュタASRS」の事業で、国内に続き米国展開に乗り出す構えだ。
ラピュタASRSは小型搬送ロボットが、樹脂構造の収納ラックの枠組み内の全フロアを縦横無尽に動き回り、商品を運ぶ。事業主体はラピュタだが、三井化学は樹脂部品の設計から製造、今後は搬送ロボットの最終組み立ても手掛け、事実上、ラピュタの製造部門の役割を担う。最終製品を原料供給で支える素材メーカーの領分を超えた付加価値を提供する”素材屋超え”を目指している。
両社の連携は、ラピュタからの軽量化の相談がきっかけだ。金属製の重いロボットを樹脂で作れば、駆動モーターの負荷や電力消費の軽減、ロボットの動きに伴う衝撃も小さくできるなどメリットが多い。そこから発展して、鉄製が一般的な自動倉庫の収納ラックを、強度と柔軟性を併せ持つ樹脂製部材でブロック玩具のように組むというラピュタの斬新なアイデアを三井化学が具現化した。
唯一無二というブロック組みの樹脂ラックは倉庫の内部形状にかかわらず、空間を最大限に生かす組み方が可能で、導入後の規模の調整や移設も簡単にできる。複数の搬送ロボットを最適に動かすラピュタ独自の群制御技術と合わせて物流業界での評価は高いという。
ラピュタとの協業を担当する新事業開発センターロボットソリューション室の田和努室長は「(規模に勝る欧米の化学大手に)素材だけでは勝てない」と、世界をにらんで新事業に挑む意義を強調。将来はより素材の特性を生かせるよう「ロボット自体の設計も手掛けたい」と話し、付加価値ビジネスの拡大へ意欲を示している。(池田昇)
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