SNS「Bluesky」(ブルースカイ)のユーザーや開発者らによる交流イベント「Bluesky Meetup in Tokyo Vol.3」(ブルースカイ ミートアップ イン トーキョー)が10月11日夜、東京都内で開かれ、会場とオンラインで約170人が参加した。
米Bluesky社のソフトウェア開発者、ダン・アブラモフ氏が来日して講演したほか、同社最高技術責任者(CTO)のポール・フレイジー氏がビデオメッセージを寄せた。来場者は講演に耳を傾けたり、互いに意見交換をしたりして、サービスの仕組みや使い方について議論を深めた。
ブルースカイは、Xの共同創業者、ジャック・ドーシー氏らがアメリカで立ち上げた新しいSNSだ。2023年2月にスマホアプリがリリースされると、Xの対抗馬や代替サービスとして注目を集め、アメリカや日本を中心に利用者を増やしてきた。今年2月には招待制が廃止されて誰でも登録できるようになった。さらに、8月末にブラジルの最高裁判所がXの国内利用を禁じた後は、代替先として新規登録が急増。今年9月16日に登録ユーザー数が全世界で1000万人を超えたと発表した。
ブルースカイの特徴は、XやFacebookのようにひとつの企業が中央集権的に管理する仕組みとは異なり、利用者や開発者の連携によって成り立つ「分散型」のサービスであることだ。画面上の見た目や使い方はXとよく似ているが、基盤となる技術や思想が分散型で、プログラムもオープンソースとして公開されている。
Xではオーナーである米起業家のイーロン・マスク氏の投稿が優先的に表示されるのに対し、ブルースカイでは、外部の開発者が作った美味しい料理や猫の画像の投稿を集めるアルゴリズムが人気を集めるなど、まったく異なる仕組みが支持されている。
東京での交流イベントは昨年と今年4月に続いて3回目。冒頭でフレイジーCTOが「日本は、ブルースカイの最大のコミュニティの一つで、素晴らしいアプリケーションがたくさん開発されており、とてもワクワクしている」とビデオメッセージを寄せた。
基調講演では、アブラモフ氏が「壁のないウェブ」をテーマに、基盤技術である「AT Protocol」の概要や、同氏らが実現を目指すよりユーザー主体の分散型のインターネット、SNSについて熱弁。
ブルースカイのユニークな点として、ユーザーがアカウント名に、個人や組織で持っている「.jp」や「.com」などで終わるドメイン(アドレス)を設定できることを挙げ、「これは非常に珍しいことで、これまで見たことがなく、初めて知ったとき、本当にクールだと思った」と強調した。
「例えば、新聞社では、ワシントン・ポスト紙のwashingtonpost.comがあり、彼らのブルースカイのアカウント名は単にwashingtonpost.comだ。私もブルースカイに参加した後、初めて(自身のアカウントのために)danabra.movというドメインを購入した」と語った。
また、もう一つのユニークな点として「ツイッターの『おすすめ』や『フォロー中』のようなアルゴリズム(投稿を集めて表示させる仕組み)を、ソフトウエア開発者なら誰でも独自に作って提供することができる。開発者がこのように深く拡張できるのは、とても興味深い」と話した。
こうしたブルースカイならではの特徴は「他のソーシャルメディア製品とは根本的に異なる方法で構築されていることを反映している」と説明。ブルースカイは新しい分散型のSNSを作るため、インターネット上でデータをやり取りするための根本的な「ルールや仕組み」であるプロトコルから開発していると強調した。
アブラモフ氏はXを念頭に、「既存のサービスでは新しい経営陣が入ったりして、方向性が変わることがある。ユーザーの視点で考えると、それは本当は正しくない」と指摘。実際に目の前でブルースカイに投稿し、そのデータがどのように保存されているか見せて、分散型のブルースカイの独自性を説明した。
アブラモフ氏は、世界中の多くのWebサービスで使用されているプログラムの一種「React」や「Redux」の開発者として世界的に著名なエンジニア。参加者は真剣な表情で耳を傾けた。
講演の最後には「会社や製品を潰すことはできても、アイデアを潰すことはできない」と締めくくり、ブルースカイのデータは分散して存在することから、仮に会社が倒産しても、誰かがサービスを再稼働できるとアピール。会場からは拍手が起こった。
アブラモフ氏は昨年、Meta社からブルースカイ社へ移籍した。講演後、産経新聞の取材に対し「ブルースカイのチームとして、日本のコミュニティーが早くから寄せてくれた熱意に深く感謝しています」と話した。
11月16日午後には、福岡でも交流会「Bluesky Meetup in Fukuoka」が開催される。(西山諒)
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