液晶テレビ製造などを手がける船井電機(大阪府大東市)が10月24日に東京地裁から受けた破産手続きの開始決定は、「FUNAI」ユーザーや従業員、創業地・大阪の経済界などに大きな衝撃をもたらした。ハローワークでは解雇された従業員らを対象に再就職支援を開始。主力のテレビ事業が中国勢などに押され、経営の多角化を目指したが苦境からは脱却できず、9月に社長が退任するなど先行きの不透明さが際立っていた。
同社は、持ち株会社「船井電機・ホールディングス(船井HD)」傘下の事業会社。帝国データバンクによると、破産手続きを申請した時点での債権者は524人。負債総額は約469億6482万円に上る。
経営破綻を受け、本社が立地する大東市では急遽(きゅうきょ)、船井電機が製造したテレビをふるさと納税の返礼品から除外。会員企業として名を連ねる大東商工会議所の担当者は「あれほどの企業だけに衝撃を受けた。同社から要請などがあれば対応を考える」と説明する。
また地元の「ハローワーク門真」では解雇された約550人向けに再就職支援の実施を決定し、個別相談のほか求人情報誌の作成にも着手。11月4日まで、就業地が近畿地方か住居支援が可能な求人を募集している。玉野裕子所長は「しっかりと寄り添う」と話す。
船井電機は1961年に創業。テレビ事業では2017年からヤマダ電機(現ヤマダデンキ)で「FUNAI」ブランドの独占販売を開始した。
同社は2000年代に北米市場で好調だったこともあり、プロ野球の松坂大輔さんがレッドソックスに入団した07年からレ軍とパートナーシップを結び、フェンウェイパークに広告を掲出していた。記者会見などが行われる際に使われるインタビューボードにも「FUNAI」のロゴが入ったものが使われ、大輔フィーバーが起きていた当時のボストンでは目立つ存在だった。
ただ、中国製の安価なテレビが市場を席巻し、業績は伸び悩んだ。07年3月期連結決算で4000億円近くあった売上高は、24年3月期には851億円に。21年には出版会社に買収されて上場廃止となった。その後、持ち株会社制に移行し、再建を図っていた。
東京商工リサーチ関西支社などによると、船井HDは経営の多角化を目指して脱毛サロン大手「ミュゼプラチナム」を買収したが、24年3月に売却。脱毛サロン大手はネット広告会社に多額の未払いがあり、船井HDが連帯保証をしていたが、支払いが滞った。
船井HDが保有する船井電機株の仮差し押さえが地裁からネット広告会社に認められ、船井電機の社長だった上田智一氏が9月27日付で退任していた。
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