理化学研究所(以下、理研)とソフトバンクは、2025年2月12日に「量子・スパコン連携プラットフォームプロジェクトシンポジウム」を開催する。スーパーコンピュータなどのHPCの計算基盤を利用する企業ユーザーや研究者にとっては、現在の量子コンピュータとスパコンの連携利用技術の現況をつかむのに適したイベントだ。
理研はソフトバンクと共に2023年11月から、量子コンピュータとスパコンを連携利用するためのプラットフォーム研究開発プロジェクトを進めている。経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による研究開発支援事業「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業/ポスト5G情報通信システムの開発(委託)」に基づく取り組みだ。理研の研究代表者である佐藤三久氏(計算科学研究センター量子HPC連携プラットフォーム部門 部門長)は、プロジェクトの概要をこう説明する。「まずは量子コンピュータの実機を導入し、それをスパコンと連携させる量子スパコン連携プラットフォームを構築・運用します。量子コンピュータとスパコンを連携させることにより、現在の量子コンピュータの優位性・有用性を実証することを目指しています」
理研の計算科学研究センター(兵庫県神戸市)には、2025年5月に133量子ビットの「IBM Quantum Heronプロセッサー」を搭載したIBMの超伝導型量子コンピュータを導入。そして埼玉県和光市の研究拠点には、2025年2月にQuantinuumのイオントラップ方式量子コンピュータを導入する。この2種類の量子コンピュータは、本プロジェクトで開発した連携ソフトウェアでスパコン「富岳」と連携し、量子スパコン連携プラットフォームを構築・運用する。これから順次、テストユーザー企業を募る予定だ。
2025年2月12日のシンポジウムでは、テストユーザープログラムの先行事例となる3社が登壇し、量子・スパコン連携プラットフォームで実際に開発されているアプリケーションの概要やプロジェクトの現状などを語る予定だ。基調講演は、量子計算の医科学応用に関する展望、量子コンピュータの技術紹介なども予定している。
テストユーザープログラムの具体的な申請手続きもこの場で案内があるという。理研の児玉祐悦氏(量子HPC連携プラットフォーム部門 副部門長)は、「本シンポジウムの大きな目的の一つは、テストユーザープログラムの参加企業を募集することです。テストユーザープログラムに先行参加いただいた企業の事例を、ぜひ聞いていただきたいです」と話す。
テストユーザープログラムに採択された企業・組織は、プロジェクトの量子・スパコン連携プラットフォームを無償で利用できる。Quantinuumの量子コンピュータは2025年4月ごろから、IBMの量子コンピュータは2025年10月ごろから利用可能になる予定だ。ただし「量子コンピュータとスパコンのリソースでどのような価値を実現したいのか」という実証実験の骨子や、「プロジェクトに対してどのような成果をフィードバックできるのか」というレポートなどを提出することが、採択時の条件となる。ビジネスシーンで量子コンピュータの実用性を試したい企業・組織にとっては、無償で最新のコンピューティングリソースを利用できるチャンスと言えよう。
「現時点の量子コンピュータはまだまだ業務や産業分野に役立つ状況ではないですが、将来的にはより具体的な実用性を備え、社会を大きく変え得る技術になっていきます。分子構造の解析やエネルギー計算など量子化学領域はもちろん、個人的にはAIと機械学習の領域で、より高精度な学習を高速に実現するようになるのではと期待しています」と佐藤氏は語り、「実用化のアイデアを持つ企業・組織には、ぜひテストユーザープログラムに参加いただきたいです」と意気込みを示す。プロジェクトの共同提案企業であるソフトバンクの宮田聡氏(データ基盤戦略本部ソリューション開発統括部ソリューション設計部部長)も次のように話す。「ソフトバンクは、量子コンピュータを活用した次世代社会基盤の構築を通じて、さまざまな社会課題の解決を目指しています。本プロジェクトでは、研究成果を生かしたユースケースの創出や社会実装をサポートします。共に未来を創りましょう。プログラムへの参加をお待ちしています」
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