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「全人類を苦役から解放」目指す 人機一体が開発した零一式カレイド「人型ロボット」の実力(1/2 ページ)

» 2025年02月12日 15時49分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 「機動戦士ガンダム」「マジンガーZ」──多くの大人が子供のころ心を躍らせたロボットアニメ。そこから抜け出てきたかのようにカッコいい、人の代わりに重作業をおこなうロボットを開発して実社会へ投入しているのが、ロボットベンチャー「人機一体(じんきいったい)」(滋賀県草津市)だ。4月開幕の2025年大阪・関西万博には二足歩行タイプを出展予定で、優れた日本のロボット工学技術をアピールする。

photo ロボットを操縦する操作機 =滋賀県草津市(柿平博文撮影)

 高さは約2m。人の遠隔操作で2本の腕が動き、2本の足で歩くこともできる。

 同社の「零一式(れいいちしき)カレイド」というタイプの人型ロボットで、9月9〜15日、万博会場で「大阪ヘルスケアパビリオン」のりそなグループのスペースに、1体出展する予定となっている。

 「有毒な物質や高電圧を扱ったり重量物を運んだりなど、今は生身の人がやらざるを得ない作業を代替する」

 人機一体社長の金岡博士(はかせ)はこう語る。金岡博士はビジネスネームで、対外的に本名は使っていない。

 有線でロボットとつながれた「操作機」に人が座り、手足の操縦桿(かん)を動かせば、リアルタイムでロボットの手足が動く。

 操作する人は、ロボットの頭部にあるカメラが写した映像をVRゴーグルで見ながらロボット目線で作業できる。しっかりバランスをとって歩けるよう、ロボットのコンピューター制御システムも開発中だ。

 人機一体のロボットにはいくつかのバージョンの試作機があり、万博にどれかを出すのか、または新たにつくるバージョンを出すのか現在、検討している。

 立命館大発のスタートアップ(新興企業)として、同大の研究者だった金岡博士が前身企業を1人で設立したのは07年。ロボットの本格普及を目指そうと、15年、インパクトある人機一体に社名を変え、同大にも近い草津市内に本社を構えた。

 現在、社員は18人。産業界の期待は高く、JR西日本やりそな、竹中工務店各社の系列企業など、そうそうたる顔ぶれが株主に名を連ねる。社風は遊び心にあふれ、本社を「秘密基地」と称し、オフィスのあちこちにガンプラ(ガンダムに登場するロボットのプラモデル)を飾っている。

 目標は39年末までに「あまねく世界からフィジカル(肉体的)な苦役を無用とする」こと。人型ロボットだけでなく、完全電動式のシャベルなど、いくつもの種類・バージョンの試作機を「数えきれない」くらいつくってきた。

 すでに実用化したものもあり、昨年7月からは、JR西が現場で、人機一体の技術が実装された日本信号製の高所作業用の人型ロボット「多機能鉄道重機」を使い始めた。高さ約1メートルの上半身を高所作業車の、クレーンのような「ブーム」の先に固定。JR和歌山線五条駅(奈良県五條市)近くの線路で、遠隔操作によって架線をつり下げている梁(はり)を塗り直した。

 腕の先端にはモノをつかむ「グリッパー」がついているが、作業によって使用するツールを変更することでさまざまな作業への対応が可能。はじめは人機一体で試作機をつくって実証実験し、それを踏まえて、連携する日本信号が製品をつくった。

 「今後はJR西以外の鉄道会社、第2段階として電力や土木などほかのインフラ産業に高所作業用のロボットを広げ、第3段階として、あらゆる分野の高所以外の作業にも拡大したい」

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