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小惑星衝突から地球を守れ、強まる国際連携 米欧は共同実験 JAXAも専門チーム

» 2025年02月17日 10時28分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 地球に接近する軌道を持つ小惑星は現時点で約3万7000個が見つかり、年々増加している。地球に衝突した場合は甚大な被害が生じかねず、早期発見や衝突回避などを担う「プラネタリーディフェンス」が国内外で注目を集める。日本では宇宙航空研究開発機構(JAXA)が2024年4月に専門チームを設置。2032年に地球に衝突する可能性が指摘される小惑星「2024 YR4」に関しても、国際的な連携を強めている。

ツングースカに匹敵

 小惑星の衝突で近年知られるのは、13年にロシアのチェリャビンスク州で起きた事例だ。このときの小惑星は直径約17mとされるが、上空で爆発して衝撃波が発生し、約1500人が負傷した。

 今回の小惑星「2024 YR4」はより大きい同40〜90m程度とされる。1908年にロシアの森林地帯で起き、東京23区の約3倍の面積で樹木をなぎ倒したツングースカ大爆発や、約5万年前に形成された直径1km以上のバリンジャークレーター(米アリゾナ州)の原因となった小惑星に匹敵する大きさだ。一つの都市圏を吹き飛ばす程度の威力といえる。

探査機衝突で軌道変化

 小惑星の衝突から地球を守るプラネタリーディフェンスは、2つの段階に大別される。

 第1段階では、地球に接近する小惑星を発見して追跡し、軌道を推定。地球への衝突が予測された場合、回避に向けて小惑星の特徴を詳細に調べる。

 第2段階では地球への衝突回避や被害の最小化を検討。人為的に小惑星の軌道を変えたり、住民避難につなげたりする。

 小惑星の軌道を変える場合、探査機などの物体を衝突させる手法が考えられる。

 既に米国と欧州は共同実験を開始。2022年に米航空宇宙局(NASA)の探査機「DART」が小惑星ディモルフォス(直径約160m)に衝突し、軌道の変化を確認した。昨年10月には衝突後のディモルフォスを調べる欧州宇宙機関(ESA)の「Hera」が打ち上げられ、26年12月にも到着する。

 一方、JAXAが昨年4月に設置した「プラネタリーディフェンスチーム」には、小惑星探査や軌道計算の研究者など約30人が所属。国際的な連携の強化に加え、小惑星の早期発見につながる観測技術の開発などにも力を入れている。(小野晋史)

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