2025年10月14日に迫るWindows 10のサポート終了(EOS)。それだけでなく、場所を問わない柔軟な働き方への対応や「Microsoft Copilot」の登場など、ビジネスPCを取り巻く環境は大きな変化を見せている。
こうした変化に適応するには、Windows 11への移行やPCのリプレースが必要だとも聞く。しかし既存のPCで問題なく業務ができているのに、本当にOSの移行や機材のリプレースが必要なのだろうか。それほどクリティカルな影響はないのではないか──こんな疑問も正直感じるところではないだろうか。
そこで本記事では、デバイスからソリューションまで幅広くITのトレンドを報じているITmedia NEWS編集長の井上輝一に、Windows 10をそのまま使い続けることのリスクや、リプレースの必要性について聞いた。さらにPC選定のポイントや、Intel vPro® プラットフォームとWindows 11がセキュリティや業務効率化などにもたらす効果についても詳しく解説してもらった。
そもそもWindows 11に移行しないとどうなるのか。井上編集長は「セキュリティだけでなく、取引先との関係継続の面からもリスクがあります」と指摘する。
「サポート終了となると、セキュリティ更新プログラムの提供もなくなります。セキュリティ対策が更新されない製品をインターネットなど社外ネットワークに接続してしまうと当然、その脆弱(ぜいじゃく)性を突いてPCや社内ネットワークに侵入される可能性が高まります」
昨今サイバー攻撃は高度化の一途をたどっており、ランサムウェア被害によって業務が停止するケースも後を絶たない。攻撃者は常に企業の脆弱な部分を探り、攻撃を試行している状況だと井上編集長は警鐘を鳴らす。
サプライチェーンの観点からも注意が必要だという。「特に大手企業と取引がある企業は要注意です。大手企業ほどサイバー攻撃の標的になりやすく『取引先のセキュリティホールから自社に侵入される』というケースがあります。そのため自社だけでなく取引先のセキュリティ対策を厳密に評価しています。Windows 10のサポート期限切れを放置するといったセキュリティ対策の不備が判明した場合、取引停止に至るケースもあるでしょう」
将来的には、業務ソフトウェアのWindows 10対応が打ち切られる可能性もある。
「Windowsは歴史的に後方互換性が高い傾向があるので、既存の業務ソフトウェアがEOS後にすぐ動作しなくなることはまれですが、使い続ける状態が望ましい環境とは決して言えません」
Windows 11への移行はセキュリティリスクを回避するだけでなく、業務効率の向上にもつながるという。
井上編集長がまず挙げたのが、複数のアプリケーションウィンドウを整然と自動配置できる「スナップレイアウト」機能だ。
「特に高精細な大画面ディスプレイに接続したときに真価を発揮します。ノートPCに27〜32型のWQHDモニターや4Kディスプレイを接続してスナップレイアウトを使うと、画面を最大4分割して4枚の外部ディスプレイがあるような環境で作業できます。ウィンドウを整頓することで今集中すべきタスクもはっきりし、業務効率化につながります」
作業に集中できるアプリケーションは他にもあるという。
「通知をオフにできる『応答不可モード』や、音声入力の日本語精度が向上した文字起こし機能なども搭載しています。『クロック』アプリにはフォーカスセッション機能が追加され、集中する時間と休憩する時間を管理できるので、生産性向上手法として有名なポモドーロテクニックのタイマーとしても活用できます。画面キャプチャーツール『Snipping Tool』も進化して、選択範囲を動画でキャプチャーできるようにもなりました」
セキュリティ面での必要性に加え、これらの生産性向上機能を活用できることもWindows 11への移行を後押しする理由となりそうだ。
Windows 11への移行方法としては既存のPCを使い続けてOSだけアップグレードする選択肢もあるが、ハードウェア要件を満たさない機種も存在すると井上編集長は指摘する。「TPM 2.0というセキュリティ機能を提供するモジュールが搭載されていない機種は、基本的にWindows 11にアップグレードできません。また、既存PCのOSアップグレードを各従業員の手元で行うとなると『OSのアップグレードがうまくできない』などの問い合わせも発生することを考慮に入れるべきです」
その対応コストを考えると、この機会にPCをリプレースするという選択肢も検討に値するという。
「2025年10月のEOSに向け、PCベンダーや販売パートナーが各種キャンペーンを展開しています。交渉次第でPC入れ替えコストを大幅に抑えられるタイミングと言えます。有償の拡張セキュリティ更新プログラム(ESU)を適用すればEOS後もWindows 10の延命が可能ですが、そうすると買い替えキャンペーンを逃す可能性があります」
リプレースを考えたときに気になるのが、無数のビジネスPCの中から何を選べばいいかということだ。最近ではAI処理に強みを持つ「AI PC」が登場しているが、ビジネスシーンでどのようなメリットがあるのだろうか。
「AI PCはCPU、GPUに加えてNPU(ニューラル・プロセッシング・ユニット)を搭載したPCです。NPUはAI処理に特化したプロセッサで、GPUに比べて少ない消費電力でAI処理を実行できます。NPUを使う“キラー業務アプリ”は今のところ登場していませんが、それでも多くの企業がAI PCの導入を進めています。その背景には、ローカル環境でAIを実行できることの将来的価値と、従来機に比べて性能がかなり向上したという2つの要因があります」
現在、主要な生成AIサービスは米国のサーバで運営されている。APIを使えば日本を指定できるAIサービスもあるものの、いずれにせよ自社ネットワーク外に情報を送信する必要があるという。AI PCは「情報を外に出したくはないがAIは使いたい」というニーズに適しているようだ。
「大規模で高度なAIモデルの処理はできませんが、音声のリアルタイム認識や直訳といった処理なら現在のAI PCでも可能です。小規模な言語モデルをローカルで実行する方法も公開されています。近い将来、インターネットに接続していなくてもプログラミングや文書作成をAIが支援する環境が実現するでしょう」
ローカルでのAI処理を視野に入れる場合、メモリ容量も重要になるという。
「現在の小型AIモデルでも、比較的高度な処理をするものは16GB以上のメモリを必要とします。将来的なAI活用を見据えるなら32GB以上のメモリを搭載したモデルを選択するのがお勧めです」
AI処理などPCへの負荷が大きいタスクを実行すると、排熱のためにファンが高速回転して雑音が生まれてしまう。だが最新PCの多くはプロセッサの電力効率が大きく改善しており、処理性能が向上しているにもかかわらずファンの回転音が抑えられているというメリットもある。こうした快適な作業環境は、業務効率と従業員のエンゲージメント向上にもつながる。
リプレース先のPCを選ぶ上で重要なポイントが運用管理機能だと井上編集長は指摘する。PCを運用管理できる機能自体は多くの企業が提供しているが、選択肢の一つとしてよく挙がるのが「Intel vPro® プラットフォーム」(以下、vPro)だ。
「vProはビジネスPCの遠隔管理や柔軟なセキュリティ対策を可能にするさまざまな機能を備えています。この機能で、ビジネスPCが社内外のどこにあっても一元管理して遠隔操作できるというメリットがあります」
井上編集長の言う遠隔管理機能は、「インテル® アクティブ・マネジメント・テクノロジー」(インテル® AMT)と「インテル® エンドポイント・マネジメント・アシスタント」(インテル® EMA)のことだ。
インテルの公式説明によると、インテル® AMTはPC本体の電源から独立して通電しているため、PCの電源がオフでもOSが機能していなくても遠隔操作が可能。インテル® EMAはファイアウォールの外にある端末にも接続してインテル® AMTの利用を可能にするものだ。
「具体例を挙げると、会社のファイアウォールの外側にあるPCにソフトウェアをインストールしたりパッチを適用したりアップデートしたり、といった遠隔操作ですね。従業員の作業を妨げない業務時間外に遠隔から作業を実施し、完了後に電源をオフにすることもできます。在宅勤務中のPCにトラブルが発生した場合も、システムの状態を確認してリセットや再起動といったトラブルシューティングができます」
インテルによれば、vProはハードウェアレベルのセキュリティ対策を実現する「Intel vPro® セキュリティー」も備えており、「OSの下層のセキュリティ」「アプリケーションとデータの保護」「高度な脅威の検出と対応」の3種類のセキュリティを提供する。
OSの下層のセキュリティとは、ファームウェアへの不正な書き込みを防ぎ、近年増加しているOS起動時を狙ったサイバー攻撃からPCを守るためのもの。アプリケーションとデータの保護ではメモリを暗号化し、メモリからのデータリークを防ぐ。「高度な脅威の検出と対応の支援では、面白いことにGPUを使います。GPUにより脅威の検出を高速化しつつCPUの負荷を軽減するわけです」
井上編集長によればvProは長年の実績に裏打ちされた使い勝手の良さもあるという。
「vProは企業の端末保護機能として長年使われてきた歴史があります。そのため、情報システム部門の担当者が交代する場合でもスムーズに引き継げることが多いでしょう。2024年夏に起きたセキュリティ製品の障害によって多くの企業でPCにログインできなくなった際は、vPro搭載PCであれば遠隔で回復できたケースがありました。こうした非常時の対応手段としても重要な機能です」
Windows 10のEOSを契機としたPCリプレースは、単なる入れ替えにとどまらない意味を持つようだ。
「これまでお話してきた通り、セキュリティ対策的にWindows 10を使い続けるのはあり得ません。アップグレードは無料なのでWindows 11にしましょう。PCの買い替えはコスト投入が必要ですが、いずれ更改はしないといけないのですから、渋らずに今やってしまう方がいいです。作業環境が改善すれば従業員は快適に働けますし、動かないPCに不満を持つ従業員からの対応に情シスが追われることも減るでしょう」
新しいPCとWindows 11の業務効率を高める新機能に、PCを遠隔から一元管理できるvProを組み合わせることで、従業員と情報システム部門のエンゲージメントと生産性の向上も期待できる。EOSが迫る今こそ、Windows 11とvProを搭載したPCへのリプレースを検討する良いタイミングと言えそうだ。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2025年3月19日