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「OD(オーバードーズ)よりSD(相談)」政府動画、批判で削除 「ダジャレは逆効果」

» 2025年03月13日 15時55分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 医薬品の過剰摂取(オーバードーズ、OD)を啓発する厚生労働省の広告動画が、削除された。ゆるいタッチの羊のキャラクターが、「ODするよりSD(相談)しよう」と呼びかける内容で、関係者から「過剰摂取の被害の深刻さに比べてトーンが軽すぎる」などと批判が出ていた。同省は「若者を中心に被害が拡大する中、広く相談支援につなげるため、ある程度のキャッチーさは必要と考えた。批判は真摯に受け止める」としている。

photo 批判を受けて削除された、厚生労働省のオーバードーズ啓発広告動画の一部

羊のキャラクター「睡眠薬を連想」

 動画は今月3日に政府広報のウェブサイトなどで公開されたが、11日までに削除された。長さは30秒で、ゆるいタッチの羊のキャラクターが、「つらい気持ちになったなら、ODするよりSDしよう」「あなたに寄り添いたい、そんな支援があります」などと呼びかける。クリックすると、ODの説明や相談窓口を案内する厚労省サイトに移る。

 公開後、支援団体などから批判が噴出。SNS上でも「ダジャレにしても予防やサポートにはならない」「韻を踏み、『うまいことを言ってやった』という雰囲気が頭に来る」などの声が上がった。羊のキャラクターについても、「睡眠薬を連想させ、ちゃかしているように感じる」といった指摘があった。

 風邪薬やせき止めなどを大量に服用するODは、一時的に気分が高揚することもある一方、意識障害や呼吸不全を引き起こす危険がある。厚労省と総務省消防庁の調査によると、ODが原因と疑われる救急搬送者は令和2年が9595人、3年が1万16人、4年が1万682人と増加傾向にある。このうち10〜20代の若年層が、各年とも半数近くを占めている。

韻踏みは「若者に伝わりやすいかと」

 厚労省の担当者は動画公開の経緯について、「広告代理店が提示した複数の案の中から、内閣府と相談して選出し、ブラッシュアップした上で公開した」と説明。動画の主眼は、「OD当事者の方々は、人間関係などに悩みを抱えているケースが多いことが分かっており、何とかして事前に相談窓口につなげたいという思いだった」と述べた。

 また、羊のキャラクターを採用したことについては、「特段の意図はない」としつつ、「特に若年層への啓発に重きを置く中で、『ODは絶対ダメだ』というような、押さえつけるような雰囲気になるのを避け、柔らかい印象を抱いてもらうためだった」。「相談」を「SD」と表現するなど、全体として韻を踏んだようなフレーズになったのも、「若年層に、より伝わりやすいのではないかと考えた」とした。

 今後、代替の別動画を制作するかどうかに関しては、「現状、そういったことは検討していない」としている。

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