
再開発が進む大阪・うめきたエリアに、新しい施設「Blooming Camp」がオープンした。さくらインターネットの本社兼オープンイノベーションのための施設で、誰でも出入り自由な「オープンコミュニケーションエリア」、会員向けの「コネクトエリア」「イベントスクエア」の3つの機能を備える。
施設に加えて「いつでも」「どこでも」参加できるオンラインコミュニティーを運営することで「みんなの熱量を共鳴させ、新しい一歩を踏み出す場」という考え方を大切にしながら、大阪から全国へ所在地を問わないチャレンジの場を提供している。
同施設は、イノベーション創出のための伴走支援プログラム「BLOOMING DRIVE」を会員である「シーズメンバー」に用意している。参加者の「やりたいこと」をサポートする3カ月の短期集中プログラムで、参加者は専門家のメンタリングや進捗(しんちょく)面談、マッチング支援を受けられる。
2024年12月から第0期メンバーとして7組がBLOOMING DRIVEに参加している。参加者は、AI×モビリティー人材の育成を手掛けるエンジニアやXR開発クリエイター、学生起業家などさまざまだ。
2025年3月8日にはBLOOMING DRIVE初の成果発表会「BLOOMING STAGE」が開催された。本記事はその様子をお届けする。
BLOOMING STAGEでは、各団体がこれまでの取り組みや今後の計画を発表。古殿研究所の大谷諒馬氏は、パーソナライズドリンク提供サービス「DRIGGER」のビジネスモデルや機器のインタフェースなどを紹介した。
コメンテーターとして、安斎勇樹氏(MIMIGURI 代表取締役Co-CEO/東京大学大学院 情報学環 客員研究員)や木村和也氏(TOPPAN/PLAT UMEKITA企画編集室ディレクター)、加々本裕樹氏(ピコリ取締役)が参加。これまでの取り組みに対する感想や次のチャレンジに向けたヒントを伝えていた。
会場にはサービスを体験できるブースも用意されており、イベント参加者がサービスを試したりメンバーに質問したりする様子が見られた。
イベントの締めくくりは、コメンテーターの安斎氏による基調講演だ。「冒険する人生のつくりかた」と題して、変化の激しい現代における探究的な生き方の重要性を説いた。
安斎氏は、ビジネスの世界は1940年代以降「戦略」「戦術」といった軍事用語や考えが急速に普及し、指示を効率良く実行する「軍事的世界観」による組織づくりが主流になったと指摘する。軍事的世界観は従業員を目の前の業務に集中させて生産性の向上を図った一方で、長期的な視点や新たなアイデアを生む創造性が失われる原因となった。
しかし「人生100年時代」の到来と働き方の多様化により、会社のためではなく幸せな人生を送るためにどうすべきかというキャリア観を持つ人が増えている。安斎氏はこの変化を「軍事的世界観から冒険的世界観へのパラダイムシフトが起きている」と表現した。働く意味そのものが問い直されるようになったのだ。
企業もキャリア形成に対する考え方をアップデートしなければならない。安斎氏が提案するのは「目標逆算型」から「関心探究型」への移行だ。先が読めない現代は、数年後の目標を掲げることも難しい。「3年後どうしたいか」を問うよりも「今、心がひかれることは何か」を基準としたアプローチが創造性を育むという。重要なのは“探究し続けること”だ。
「探究とは、自分と世界のつながりを探る往復運動だ」と安斎氏は説明する。“自分がどういう視点で関心の対象を捉えているのか”“なぜ興味を持ったのか”を絶えず振り返ることが次のアクションにつながると説く。
「今日のイベントは、7組が3カ月の探究の成果を話した時間です。『次どうするか』も大切ですが『自分はなぜ面白いと思ったのか』と絶えず探究することが、次に進むための力になるでしょう」
イベントは、挑戦者の熱意を肌で感じられ、多様なバックグラウンドを持つ人が探究心を刺激し合う場として機能していることが見て取れた。Blooming Campで芽吹く挑戦の種は、日本のイノベーション創出における新たなモデルになる可能性を秘めている。
シーズメンバーになる、イベントに参加する、オープンコミュニケーションエリアにシェアキッチンで出店する……「やりたい」という熱意があれば所在地を問わず参加できるBlooming Campへの関わり方はさまざまだ。情報交換や仲間の募集、壁打ち相談など多様な用途で利用されている。「やりたいこと」を「できる」に変えるこの試みに加わってみてはいかがだろうか。
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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2025年4月17日