「GPUを用意できない」 AI開発に挑むセキュリティカメラ国内シェアNo.1企業 壁に直面したエンジニアたちの奮闘に迫る

PR/ITmedia
» 2025年06月03日 10時00分 公開
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 AIの進化が予想以上に速く、追い付くのがやっとだ――こう話すのは、パナソニックの画像センシング部門を源流とするi-PRO社のエンジニアだ。松下電器産業時代を含めると60年以上にわたって映像解析や画像センシング技術の研究開発を続け、国内シェアNo.1にまで成長。そんな同社は、AI技術の急速な発展を前に開発インフラの再検討を余儀なくされた。
※調査会社Omdia「Video Surveillance & Analytics Market Share Database - 2024」の映像セキュリティ部門におけるパナソニック/i-PROとしての実績

 「AIの高性能化によって、AIモデルの学習に必要な演算リソースの規模が大きくなっています。性能を向上させるにはGPUリソースが欠かせませんが、GPUの価格が高騰しているので自社で用意するのは難しいというジレンマに陥っています」と説明するのは、i-PROで研究開発を担当する古賀雅士氏だ。

 i-PROはセキュリティカメラなどのエッジデバイスに搭載するAIに強みを持つ。AI開発用のデータに人物や社外秘の情報が含まれるため、外部サービスの利用にはこれまで慎重な姿勢を取っていた。しかし、そうも言っていられない。円滑なAI開発環境を求めて奔走した古賀氏らエンジニアの奮闘を追う。

photo i-PROのエンジニアを取材した

10件以上のAI開発プロジェクトが進行 「GPUリソースが欠かせない」

photo i-PROの古賀雅士氏(テクノロジーエンジニアリング アドバンストテクノロジー エキスパートエンジニア)

 i-PROの歴史は、松下電器産業が業務用セキュリティカメラを開発した1957年に始まった。ハードウェア開発に加えて、セキュリティカメラシステムや映像解析AIなどのソフトウェア開発に参入。顔検知や人物判定などを得意とするAIの領域で頭角を現して現在に至る。カメラに搭載したAIで映像を処理するため、ネットワーク環境がない場所でも処理できる。重要拠点の侵入検知や作業現場のモニタリングに“AIカメラ”を導入することで、省人化につなげられる。

 「カメラに搭載するAIの性能改善に日々取り組んでいます。次々に登場する新しい技術を当社製品に取り入れることでどのような成果が出るのかを確認するために、AIモデルをファインチューニングして検証しています。そのためにGPUリソースが欠かせません」

photo i-PROの事業(提供:i-PRO)

 10件以上のAI開発プロジェクトを同時進行させているi-PROの前に、GPUリソースの不足という課題が立ちはだかる。GPUリソースを自前で確保していたが、AI開発の段階によって必要なGPUリソース量が変わるため効率的に運用できていなかった。AIモデルの学習時は大量のGPUリソースが必要だが、推論や検証だけならそこまで大規模なGPUリソースは使わない。ピーク時はGPUリソースが足りず、閑散期は余るという無駄が発生していたと古賀氏は話す。

 GPUリソースを開発メンバーに配分する形式のため、一つの開発プロジェクトにリソースを集中させるなどの調整が難しい。各人が自身の割り当て分をやりくりするしかなく、古賀氏は「実行中の処理が終わらないと次の作業に移れません。複数の処理を並行で試せないので、時間がかかってしまいます」と説明する。

 同社で物体検知モデルの改善に携わるエンジニアのU氏は「さまざまなAIモデルや学習パターンを試すので、試行回数が多くなります」として、割り当てられたGPUリソースに限界が来ていたと訴える。

AI開発に必要なコストを試算 検討ポイントは

 2023年、GPUリソース不足の解決に本腰を入れることになり、U氏を中心に調査を開始。演算性能、費用、利用までの工数、セキュリティ対策などの観点で検討した。

photo i-PROのU氏(テクノロジーエンジニアリング ソフトウェアプラクティス シニアエンジニア)

 U氏が重視したのが費用だ。費用をかければ高い演算性能が手に入るが、予算には限りがある。AIモデルの学習に必要な演算性能と時間を1カ月単位で試算し、それを基に月額を算出。GPUサーバの購入も検討したが、パブリッククラウドの利用とGPUクラウドサービスの契約の2パターンが現実解だった。

 「パブリッククラウドは多様なプランがあるので利便性が高い一方で、ハイスペックな仮想サーバを長期間利用すると割高になりがちです。GPUリソースだけを借りられるクラウドサービスはプラン数が少ないものの、安価な傾向にあります」(U氏)

 人物の映像や社内データなどの機微なデータを扱うため、セキュリティ対策は妥協しなかった。国内にデータセンターを構えていること、セキュリティ対策の認証を取得していることなどの条件で絞り込んだ。

「GPUSOROBAN」で演算リソースを確保 「開発に集中できた」

 「調査の結果、総合的な観点から『GPUSOROBAN』というGPUクラウドサービスを利用することに決めました」(U氏)

 ハイレゾが提供しているGPUSOROBANは、NVIDIAのGPUを搭載したインスタンスを利用できるクラウドサービスだ。AI開発やシミュレーションなどの研究用途に特化したサービス設計にすることで機能やファシリティーを限定し、高性能なGPUサーバを低価格で提供している。都心に比べて地価が低い石川県や香川県にデータセンターを構えていることもコストダウンにつながっている。

photo GPUSOROBANの概要(提供:ハイレゾ)

 i-PROは、「NVIDIA RTX A4000」を搭載したインスタンス3台を3カ月間、1台を半年間契約。同インスタンスの場合、従量課金制なら1時間当たり50円、月額契約なら1カ月当たり3万3000円で利用できる。

 「GPUSOROBANを導入したことで、異なる学習パターンや推論条件を同時に検証できました。オンプレミスのGPUリソースとGPUSOROBANのインスタンスで比較するなど、複数の環境を使えるメリットも大きいですね」(U氏)

 古賀氏も「GPUSOROBANを使用することで、新しいAIモデルの検証で一定の知見を得られました」と評価する。学術論文の内容を検証すると、報告されている数値にならないことが多々ある。GPUリソースの性能差が要因の一つだと予想しており、NVIDIA RTX A4000で計算すると求める成果に近づいたという。ハイスペックなGPUを使えば解決するという仮説を裏付けられた。

 「画像はデータサイズが大きいため、画像AIの開発時に大きなリソースを消費します。メモリがボトルネックになることが多く、効率良く開発するためにはリソースを確保するしかありません。社内で確保するには予算や開発状況を鑑みる必要がありますが、GPUSOROBANは一時的かつ安価に利用できるので社内調整の負担が減り、開発に集中できました」(古賀氏)

 GPUSOROBANは、演算リソースを貸し出すだけではなく、ハイレゾの手厚いサポートが付いている。導入時は、ハイレゾが環境設定に対応。OSのインストールや計算ライブラリなどを自力で準備するのは手間と時間がかかるが、普段使っている環境と同じものをスムーズに使えたとU氏は振り返り、次のように続ける。

 「スーパーコンピュータの遠隔利用サービスを使った際、環境設定に時間がかかりました。GPUSOROBANはワンクリックでインスタンスの起動や終了ができ、管理画面が分かりやすいので開発も効率化できます。技術的な不明点があったときは、ハイレゾのユーザーサポートに質問すると分かりやすい説明が即座に返ってきました」

photo ハイレゾが運営するデータセンター(提供:ハイレゾ)

AI開発を支えるGPUクラウドサービスの価値

 AIの開発と検証に関する成果が出たとしてGPUSOROBANの利用には区切りを付けたが、i-PROは開発の手を緩めたわけではない。開発時に万全を期したAIでも、顧客の利用環境によって精度が変わってしまうことがある。顧客が現場に合わせてカスタマイズできるAI現場学習アプリケーションも提供しているが、基本となるAIモデルの精度を継続して改善し続けることが特に重要だ。「最新技術をいち早く取り入れて、GPUSOROBANを活用しながら高性能なAIを開発します」と古賀氏は語る。

 i-PROはAIの開発に取り組みながら、AIカメラで実行できるアプリケーションの開発を支援するソフトウェア開発キットの提供にも力を入れている。AIカメラを有効活用できるアプリケーションが増えることで顧客が得られるメリットが大きくなるという考えだ。

 AI開発が盛り上がる状況を前に、ハイレゾは最新GPUを搭載したインスタンスを次々に提供している。2024年12月にはハイスペックGPU「NVIDIA H200 Tensor コア GPU」を利用できる「AIスパコンクラウド」のサービス提供を開始。さらに、AIスパコンクラウドを30日間0円で使える無料トライアルキャンペーンを2025年5月にスタートした。同社は「AI計算力が世界で一番安い国を目指す」という目標に向かって、コストパフォーマンスが良いサービスの提供にチャレンジしている。

 GPUリソースを自社で用意するためには、GPUの購入費用、ファシリティーの整備、保守・運用の体制など考慮すべき事項が多々ある。GPUSOROBANやAIスパコンサービスのようなクラウドサービスを利用すれば、煩わしい手間をスキップしてAI開発に集中できる。AI開発をスピードアップさせたい企業は、導入を検討してみてはいかがだろうか。

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提供:株式会社ハイレゾ
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2025年6月11日