「触るだけ」で終わっていない? 生成AIの「真の活用」と「未来戦略」を考える

PR/ITmedia
» 2025年06月30日 10時00分 公開
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 生成AIへの注目度の高さは言うまでもないが、多くの企業がその活用や普及に課題を抱えている。その答えを探るWebセミナーが、2025年6月24日に開催された「有識者に聞く『生成AIの活用ハードル突破法』」(主催:ITmedia NEWS、協賛:日本HP)だ。本記事では、講演内容を通して生成AIがもたらす新たな可能性やビジネスに応用するための知見を紹介する。

生成AIは活用率ではなく“使いこなしているか”が重要

 「AIネイティブ時代のビジネス戦略 企業が知るべき“真の活用法”と未来戦略」と題したパネルディスカッションには、ハヤカワ五味氏と小澤健祐氏が登壇した。モデレーターは、ITmedia AI+/ITmedia NEWS 編集長の井上輝一が務めた。

photo (左から)井上輝一(ITmedia AI+/ITmedia NEWS 編集長)、ハヤカワ五味氏(ウツワ 代表取締役)、小澤健祐氏(AICX協会 代表理事)

 冒頭、ITmedia AI+が2024年9月に実施した調査で、生成AIを何らかの形で業務に活用していると答えた人が約8割だったことが井上から紹介された。この結果に対してハヤカワ氏は、「生成AI活用といっても『ツールを導入して終わり』という企業が多く、生成AI活用を前提にワークフローを組み直している企業と、やっていない企業とでは大きな差があります」と指摘。続けて小澤氏も「活用率という言葉に疑問がある」とした上で次のように持論を展開した。

 「私が登壇した講演会の受講者に『生成AIを使って給料や生産性は1.5倍になりましたか』と尋ねると、多くの人がそこまで達しておらずにわずかな改善しか実感できていないと答えます。生成AIが登場したばかりのころは、導入だけで大きな進歩でした。しかし現在は、生成AIの本質を科学的に捉えて何をすれば活用と見なせるのか、綿密な設計が求められるフェーズになっています。

 全員がプロンプトを書く時代は間もなく終わるはずです。業務に対する解像度が高くないと『業務をプロンプトに変換すること』は不可能です。生成AIをワークフローに組み込んだり基本テンプレートを用意したりしないと、本質的な現場活用につながらないでしょう」

 生成AI活用に当たってよく耳にする課題が、最新情報をキャッチアップできないという点だ。しかしハヤカワ氏は「無理にキャッチアップしなくてよい」と断言した。

 「好きなメディアや発信者の話を聞くだけでもよいと考えます。それよりも実際に生成AIに触れて自身の生活や業務に生かすことを優先すべきです。最新の情報を知らなくても今あるツールで業務改善は図れます。そのフェーズまで到達していない人が多いと感じています」

photo 「触っただけ」でも「活用」になってしまう可能性がある(出典:小澤健祐氏講演資料)《クリックで拡大》

生成AIの活用は「組織戦略」として考える

 では、本質的な活用を目指すにはどうすればよいのか。小澤氏は「組織として生成AIを導入できている企業とそうでない企業とでは大きな差が出ています」と解説する。生成AIの導入をIT部門やDX部門だけに任せている企業も多い。生成AIの影響度合いを考えると、組織や経営戦略も同時に再考すべきだ。企業の生成AI導入に関わってきたハヤカワ氏も小澤氏に続けて以下のように話した。

 「生成AIの導入は、採用計画や評価制度の再設計など人事部門との連携も欠かせません。その議論を後回しにすると影響はより大きくなるでしょう。早いうちに着手するか、議論が難航する場合はトップダウンで意思決定することも選択肢の一つです」

 続けて議題になったのが「生成AIの導入効果をどう測るか」だ。小澤氏は「ROIやKPIといった数値はそぐわず、今後は“KPIが分散する時代”になる」と指摘。

 「生成AIの影響は広範囲に及ぶため、その効果を単一のKPIで測るのは難しくなります。工数削減効果やROIだけで評価していたり『専門チームに任せているから大丈夫』と楽観的な姿勢になっていたりしませんか。生成AIは全ての業務を変える可能性を秘めています。生成AIの導入目的を業務効率化だけに置くのではなく、収益やお客さま満足度など『会社にとって何がプラスになったか』に変換すべきです」

 ハヤカワ氏は生成AIの登場を「産業革命に近い感覚」と表現する。生成AIはトレンドワードではなく、速いスピードで社会に浸透して新興企業が既存企業を押しまくる可能性を秘めている。「本来は経営の危機と捉えて取り組むべきですが、そう認識できていない経営者も多いのではないでしょうか。転換点だからこそ、今までと違う姿勢を認めることが重要になるでしょう」

Microsoft 365が生成AI導入の課題を解決する

 日本マイクロソフトの仲西和彦氏の講演では、生成AI導入の課題とその解決策について紹介された。

 MicrosoftはAIの会社へと大きくかじを切って、「Copilot」ブランドで多様なAI製品を提供している。同社のAI戦略について仲西氏は「安全に使えることを根幹に置いている」と説明した。

 日本企業において生成AIを導入する課題は何か。仲西氏が「Microsoft Copilot」に尋ねたところ、提示されたのが「情報漏えいリスク」「既存システムとの統合」「AIに対する知識不足」などだ。Microsoftが実施したアンケートでも同様の回答が挙がった他、従業員が生成AIを使いこなせるのかという声もあった。こうした課題を解決するのが「Microsoft 365」であると、仲西氏は続ける。

photo 仲西和彦氏(日本マイクロソフト デバイスパートナーセールス事業本部 マーケティング戦略本部 Commercial Windows 戦略部 部長)

 「Microsoft 365には、動的アクセス制御が可能な『Microsoft Entra ID』と、データを構造化してAIが利用しやすい形にする『Microsoft Graph』という仕組みが入っています。データを結び付けるためにも、Microsoft 365の活用をお勧めします。

 従業員が使っている『Microsoft Office』に、生成AIという“ふりかけ”をかけることが、負担なく活用できる方法だと考えます。『Microsoft 365 Copilot』を使えば、普段使っているMicrosoft Officeで生成AIをシームレスに利用できます」

 生成AIをいくら「安全に使える」と言われても、不安を拭えない読者も多いだろう。仲西氏はこの不安を解消するためにも生成AIを使い分けるべきだと提唱する。

 「公開情報を処理させる場合は、無料で使えるMicrosoft Copilotを使ってみてください。イントラネットのデータを処理する際は、Microsoft 365 Copilotが威力を発揮します。簡単なAI処理を手元のデバイスで行う必要があったり、個人的なデータを処理したりする場合はCopilot+ PCが適しているでしょう」

AI PCはパーソナルコンパニオン

 企業のデジタル変革が加速する中、AI PCがPCの概念を変えようとしている。次のセッションに登壇した日本HPの岡宣明氏は、PCの進化の過渡期にあるものがAI PCであると説明する。

photo 岡宣明氏(日本HPパーソナルシステムズ事業本部 クライアントビジネス本部 CMIT製品部 部長)

 単なる計算機から、ユーザーに寄り添う知的なパートナーへ――。日本HPは、AI PCを個人の性格や働き方、業務内容といった要素を学習して業務のサポートをする存在として「パーソナルコンパニオン」と表現している。

 AI PCの核心技術であるオンデバイスAI処理は、クラウドベースAIの課題を解決するアプローチと言える。オンデバイスAI処理のメリットとして岡氏が述べるのが、セキュリティ対策の強化と処理スピードの速さ、コストの低減、省エネ性能の向上だ。

 特にセキュリティ対策の強化は多くの企業が課題に感じているところだろう。顧客情報や経営データをクラウドに送信することに対する心理的抵抗は根強く、業界によっては禁止されているケースもある。オンデバイスAI処理は全ての処理がローカル環境で完結する。この特性によって高度なセキュリティ要件を持つ組織でも安心してAI機能を活用できる環境を整備できる。

 続けて岡氏は「PCもAIで制御されるようになっている」と話す。「PCの構成要素は変わらないものの、中身は全く違うものになっています。HPのAI PCは、パフォーマンスはもちろんパーソナル化を重要視して設計しています」

 HPの最新ラインアップは以下の図の通りだ。AI PCの中でも、高いAI処理性能を持つCopilot+ PCがミドルレンジやエントリークラスにも広がっている。「法人PCは、3〜5年は使用することになる。だからこそ先んじてAI活用を前提にAI PCを選定するべきだ」と解説する。

photo (出典:日本HP講演資料)《クリックで拡大》

 HPの新製品として注目すべきは「HP EliteBook X G1i 14 AI PC」と「HP EliteBook X G1a 14 AI PC」だ。前者は軽量かつスタイリッシュな筐体が魅力で、Intelの「Core Ultraシリーズ2」を搭載。48TOPSのNPU性能を実現している。後者はAMDの「Ryzen AI 300」を搭載し、最大55TOPSという高いNPU性能を誇る。

 HPの製品はセキュリティ機能が優れていることにも定評がある。岡氏は、新たにAIを活用したのぞき見防止機能の「HP Sure View」や5年間データ量無制限でLTE/5G通信を利用できる「HP eSIM Connect」、電源オフ、通信オフラインの状態でも遠隔でデータ削除などができる「HP Protect and Trace with Wolf Connect」について紹介した。

 企業の生成AI導入や定着を支援するCynthialyの國本知里氏(代表取締役CEO)による講演もあった。ビジネスにおける生成AI活用は待ったなしだ。組織全体の課題として捉えて、ソフト面、ハード面双方の準備を早急に始めるべきだろう。

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