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中国へAI半導体の輸出許可 米の譲歩に安保懸念、技術覇権掌握促すとの批判も

» 2025年07月30日 18時52分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 【ワシントン=塩原永久】米国と中国の貿易協議でハイテク関連の輸出規制が争点に浮上した。これまでの合意を受け、中国がレアアース(希土類)の輸出を再開。一方のトランプ米政権は、半導体の対中輸出を容認した。ただ、輸出対象にAI向け半導体が含まれたため、中国が技術覇権を握ることに手を貸す「戦略的誤り」との批判が出ている。

米半導体大手に対中輸出許可

 7月28、29日の第3回の米中閣僚級協議では、双方が停止した関税の扱いが焦点となった。一方、6月の第2回協議から輸出規制が重要議題となり、今回も中国側のレアアース供給が話し合われた。

 中国が大きな世界シェアを握るレアアースは、モーターやリチウムイオン電池などのハイテク部品に不可欠だ。一時、中国の輸出規制で供給が途絶え、各国の自動車生産などに多大な影響が出た。

 米政権の輸出規制では、米半導体大手NVIDIAが今月中旬、AI半導体「H20」の対中輸出許可を米政府から得たと表明した。ロイター通信によると字節跳動(ByteDance)などの中国IT大手が大量にH20を発注していた。

 米NVIDIAのAI半導体はバイデン前政権時代から規制対象とされてきた。米国勢をしのぐ技術を公表し、話題となった中国新興AI企業「DeepSeek」が、NVIDIA製の高性能品を何らかの方法で調達した可能性が指摘されたこともあった。

「米国の経済的、軍事的優位性を脅かす」と批判

 そんな経緯を踏まえ、元米政府高官や専門家ら20人が28日、H20の輸出許可に懸念を示す米政府あて書簡を公開した。輸出許可は「AIにおける米国の経済的、軍事的優位性を脅かす戦略的な誤りだ」と批判した。

 トランプ米大統領は今秋、中国の習近平国家主席と会談すると取り沙汰される。英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)は28日、輸出規制を担当する米商務省が、米中の首脳会談と貿易合意の妨げとなる厳しい対応を避けるよう、政権側から指示されていると報じた。

 米国で厳しい対中政策が超党派で共有される課題となる中、経済安全保障や戦略的優位性を左右するハイテク分野の対中規制を、トランプ氏が中国に譲歩する交渉カードとすることに対し、反発が強まる可能性がある。

 米国家経済会議(NEC)のハセット委員長は29日、米FOXテレビで「中国が米国から半導体を購入しなくなれば、彼らは独自に技術革新した半導体を保有する可能性がある」と述べ、中国に先端半導体を輸出する政権の判断を擁護した。

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