「GPUコスパ×即立ち上げ×国内完結」──だけじゃない さくらインターネットのGPUクラウドが自動運転AIを開発するティアフォーに選ばれたワケ

PR/ITmedia
» 2025年09月30日 10時00分 公開
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 生成AIの急速な普及によって高性能な計算資源の需要が爆発的に拡大している。こうした中、さくらインターネットが展開する生成AI向けクラウドサービス「高火力」シリーズがAI開発の現場で存在感を発揮している。

 先進的な活用事例の一つが、自動運転ソフトウェアの開発を手掛けるティアフォーだ。同社は「高火力」シリーズを活用し、周辺環境の認識から自動操縦の判断、車体の制御まで一体化した次世代の自動運転AIを開発している。なぜティアフォーはさくらインターネットの「高火力」を選択したのか。両社のキーパーソンが、AI開発インフラの現在地と今後の展望を語った。

想定より早く訪れた「推論」需要の拡大

 生成AI市場は驚異的な速度で拡大を続けている。さくらインターネットの霜田純氏は、市場環境の変化について「想定よりも早期に推論需要が急拡大し、顕在化しています」と指摘する。

ALT さくらインターネットの霜田純氏(執行役員)

 同社は経済産業省の経済安全保障推進法に基づく「特定重要物資クラウドプログラムの供給確保計画」の認定を受け、GPUサーバーを構築するために大規模な投資を進めてきた。当初はAIモデルの学習・開発用途を中心に想定していたが、学習したAIモデルを動かす「推論」の需要が予想を上回るペースで立ち上がってきたという。

 推論フェーズに入ることで、企業は開発したAIを基にビジネス展開を加速させ、収益化への道筋を立てられる。その結果、より高度なAIモデルの開発意欲が高まり、新たな学習需要を生み出すという好循環が生まれていると霜田氏は分析する。

 こうした市場の変化に対応するため、さくらインターネットは生成AI向けクラウドサービスの「高火力」シリーズを展開している。同シリーズは、用途やワークロードの規模に応じて選択できる3つのサービスで構成される。物理サーバーを丸ごと提供するベアメタル型の「高火力 PHY」、仮想マシンで柔軟に利用できる「高火力 VRT」、コンテナ環境に特化した「高火力 DOK」だ。

ALT 「高火力」シリーズのラインアップ(提供:さくらインターネット)《クリックで拡大》

AI開発の先進事例としての自動運転

 AI技術の活用が高度に進んでいる分野の一つに自動運転がある。日本発の自動運転技術として世界的に注目を集めているのが、ティアフォーの主導で開発されているオープンソースソフトウェアの「Autoware」だ。

 同社は2015年の創業以来、国内で着実に実績を積み重ねてきた。2024年には、国内初となる公道での最大時速35kmでの走行によるレベル4(特定条件下での完全自動運転)認可を長野県塩尻市で取得し、2025年には許可を取得。運転手が乗車しない路線バスへ一歩近づいた。同社が掲げる「自動運転の民主化」というビジョンの下、日本の道路環境や交通事情に適した自動運転技術の開発を推進している。

 ティアフォーでアーキテクトを務める大里章人氏は、「現在、人間が設計し切れない機能部分をAIに置き換える流れが加速しています」と説明する。従来の自動運転システムは、周辺の車や歩行者、信号機の状態などを認識する「認知」の部分にディープラーニングを利用するのが中心だった。しかし近年は、認知から判断、制御まで一体化した「End-to-End AI」というアプローチが主流になりつつある。

ALT ティアフォーの大里章人氏(アーキテクト)

 「例えば都心の環境は交通量が多く、複雑かつ動的に変化しています。対向車も多く、歩行者もたくさんいる。それらが予期せぬ動きをする中で、安全かつ効率的に走るには高度なAI技術が必要になります」と大里氏は語る。狭い道路や複雑な交差点、歩車混在の環境に対応するために360度の立体情報を認識し、数百メートル先までの交通状況を把握、正確な運転判断ができるような高度なAIモデルが求められる。

 AI活用は車載システムにとどまらない。開発プロセス全体にかかわるAI技術が研究開発されている。安全性評価のためのシミュレーターをAIで構築する、晴天時のデータから雨天時のデータを生成してデータを増強する、個人情報保護のためにナンバープレートや人の顔を自動で匿名化する――このように、さまざまな場面でAI技術の活用が見込まれている。「認知タスクだけでも複数のモデルを組み合わせた高精度化が必要であり、さらにこれがEnd-to-End AIになるとより大規模なモデルが必要となります」と大里氏は指摘する。

ALT 自動運転に使われるAI技術(提供:ティアフォー)《クリックで拡大》

「高火力」を選んだ理由とは? 用途でリソースを使い分け

 これらのAI開発のために、ティアフォーはさくらインターネットの「高火力 PHY」と「高火力 VRT」を導入している。選定における最大の理由は、圧倒的なコストパフォーマンスだ。最新のGPUサーバーは1台当たり数千万円に達し、スタートアップ企業にとって大きな負担となる。「高火力」を利用することで、インフラ構築における初期投資やその運用コストを大幅に削減できたという。霜田氏は「自社で全て構築しているためコストをコントロールしやすい環境にあります」と説明する。

 導入スピードの速さも決め手となった。「契約開始からわずか1日で開発環境を立ち上げられました」と大里氏は振り返る。AI開発では、最新の技術動向をキャッチアップしつつ、モデル改善の実験サイクルを高速に回すことが競争力につながる。「高火力」は申し込みから利用開始までのリードタイムが極めて短く、開発の機動性を損なわない。

 データの保管や利用を国内で完結させられることも重要な選定理由だ。「セキュリティや転送コストの観点から、海外へのデータ転送はハードルが高い」と大里氏は指摘する。自動運転開発では大容量、かつ道路映像などの機密性の高いデータを扱うため、国内でのデータ管理が望ましいと考えている。

 「高火力 PHY」の最大の特徴は、物理サーバーを丸ごと専有できるベアメタル環境だ。「PHYはピュアなベアメタル環境であり、OSやミドルウェアのバージョンまで自由に選択できます。実験対象に合わせて効率を追求したチューニングが可能となります」と大里氏は評価する。仮想化のオーバーヘッドがないため、GPUの性能を最大限に引き出せる。

 この自由度の高さは、最先端のAI開発において重要な意味を持つ。ティアフォーは、物体認識やEnd-to-End AI、仮想データ生成やシミュレーションといったさまざまなタスクに対し、Transformer やDiffusionなど複数のアーキテクチャを組み合わせて利用している。「8枚のGPUが搭載されたサーバー複数台をフル稼働させ、データパイプラインと合わせて独自の環境を構築して最適化できます。この自由度がイノベーションを生み出す源泉になるのです」と大里氏は強調する。

 用途に応じた使い分けも重要だ。「PHYは1ノードにGPUを8枚搭載し、要求性能が明確な用途で安定したリソースを専有したいときに利用しています。VRTはGPU 1枚ごとの従量課金(1時間、1日、1カ月単位)のため、小規模でフレキシブルな実験に適しています」(大里氏)。長期的な学習には月額固定のPHY、短期的な実験や検証には時間課金のVRTという戦略的な使い分けにより、コストを抑えながら開発スピードを最大化している。

 サポート体制の手厚さも高く評価する。「技術的な課題が発生した際にも迅速な対応をして頂いています」と大里氏。霜田氏も「トラブル発生時に初動対応をどれだけ早くできるかが重要です。『高火力』は自社構築だからこそ問題の原因を素早く特定し、解決に導けるのです」と、自社開発の強みを強調する。

AIインフラサービスを今後も拡充 学習にも推論にも対応

 さくらインターネットは、GPUリソースの提供価値を高めるために組織体制を大幅に刷新した。2025年8月、AI事業に関する機能を一つの部門に集約した「AI事業推進室」を新設。霜田氏が管掌し、戦略、企画、開発、営業が一気通貫で連携する体制を構築した。「市場の動きを機動的に捉え、サービスに反映できる組織が必要でした」と霜田氏は狙いを説明する。

 戦略の柱は「高付加価値サービスで収益性を向上」と「売る力の向上」の2つ。高付加価値サービスの代表例が、提供準備中のスーパーコンピュータ「さくらONE」だ。クラスタ型で大規模な計算が可能で、ジョブスケジューラーも標準搭載している。

 推論需要の拡大に対応するため、2025年5月には「さくらのAI」の提供も開始。学習用途の固定料金型から推論用途の従量課金型まで、幅広いニーズに対応できるサービスラインアップを整えた。「さまざまなLLM(大規模言語モデル)を使えるようにして、従量課金で提供しています。国内完結で機密性の高さが評価され、かなりの問い合わせを頂いています」(霜田氏)

ALT 学習向けから推論向けまで幅広いサービスを用意した(提供:さくらインターネット)《クリックで拡大》

 販売面は、従来の直販に加えて再販パートナーとの連携をより強化し、さらなる販路の拡大を目指している。「作る・売る・支える」の機能軸で上級執行役員レイヤーを新設し、全社横断での営業体制を構築。パートナー企業と連携することで、より多くの企業にサービスを届ける体制を整えつつある。

 技術面も他社との差別化を進めている。2025年8月には「高火力 PHY」にて「NVIDIA Blackwell GPU」が利用できる「B200プラン」の提供を開始。コンテナ型データセンターの構築により、提供スピードも向上させている。「コンテナの増強でGPUサーバーをどんどん増やせます。これによって市場の需要に機動的に対応します」と霜田氏。従来の建物型のデータセンターよりも構築期間を大幅に短縮できるという。

日本のAI開発力を底上げするインフラを提供

 さくらインターネットは着実に計算資源の増強を進めている。「2028年3月末までに総計算能力18.9エクサフロップスを目指しています」と霜田氏は明かす。これは現在の4.81エクサフロップスから約4倍の規模拡大だ。この投資計画は、経済産業省の経済安全保障推進法に基づく「特定重要物資クラウドプログラムの供給確保計画」の認定によるもので、国を挙げてAI開発基盤を強化する取り組みの一環だ。

 「市場の趨勢(すうせい)を捉えながら、プロダクトミックスを考えています。学習から推論まで裾野の広いサービス展開で、AIインフラのプロバイダーとして第一に想起される存在を目指します」と霜田氏は意気込む。

 ティアフォーの事例で実証された「高火力」シリーズの価値とは、LLM、画像生成AIなど、高度な計算資源を必要とする幅広いAI開発分野に応用が期待されている点だ。国産クラウドプロバイダーとして安定供給と手厚いサポートで差別化を図るさくらインターネットの強みが、日本のAI開発力を底上げする重要な基盤となりつつある。

ALT 左から、さくらインターネットの霜田純氏(執行役員)、ティアフォーの大里章人氏(アーキテクト)

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2025年10月20日