日本シーゲイトは「Seagate Solution Day 2026」を開催した。AIの急速な普及に伴うデータ激増時代に高信頼、高性能、大容量が求められるストレージインフラをどう再構築すべきか。その解決策を探るイベントの模様をレポートする。
ストレージ製品を手掛ける日本シーゲイトは2月24日、最先端ストレージ技術とパートナーソリューションを紹介する「Seagate Solution Day 2026 AI時代のデータ基盤〜現場が選ぶ大容量ストレージの最適解〜」を開催した。日本シーゲイトとパートナー企業4社によるセミナーの他、パートナー8社のサービスを紹介する展示ブースにも多くの来場者が集まった。
日本シーゲイトは同社の安河内智氏(日本市場統括 営業本部長)が「Seagateが実現する、AIに最適化されたストレージ」をテーマに講演した。安河内氏は、ストレージが再び注目されている背景には構造的かつ不可逆的なデータ量の増加があり、今後はAIを中心に据えたストレージインフラの再構築が必要だと述べた。
安河内氏は、AI時代のストレージ構築において企業が直面する課題を技術と運用の2軸から解説した。
技術面の問題は、データ量が加速度的に増大している点にある。ストレージ設計には数年先を見据えた計画が欠かせない。しかし、AIによる爆発的なデータ増大を前にしては、将来的に必要な容量の想定は困難だ。予測を超えるデータ増大に対して、いかにパフォーマンスや信頼性の維持とデータ品質の担保を続けるかが課題だ。
運用面については、導入費用や電力消費などのコスト、リソースの安定確保が論点になる。コスト効率のみを優先すればセキュリティやガバナンスが不十分になり、不正アクセスのリスクが生じる。昨今のデバイス不足などの情勢を踏まえると、HDDや半導体デバイスを含めたハードウェアを計画的に確保し、調達可能なリソースをいかに賢く配分するかがビジネスの継続性に影響する。
安河内氏は、これらを解決する鍵は「データ配置の最適化」にあると説いた。データセンターからエッジまでの役割分担や筐体(きょうたい)内の応答速度に応じた階層化設定が、インフラ全体の効率を左右する。ここで重要なのが、AI環境におけるデータのライフサイクルを正しく把握することだ。
AI環境というとGPUやSSDによる高速処理に注目が集まりがちだ。しかし、データライフサイクル全体を見ると、学習済みデータや生成コンテンツ、ログ、履歴など、長期間の保持が必要なデータが全体の約90%を占める。
「SSDは高速処理に不可欠ですが、全てのデータを置くためのメディアではありません。AIをスケールさせる土台となっているのは、コスト、電力、拡張性の観点で合理的なHDDによる大容量ストレージです。AIに限らず、企業データの大半はバックアップ、オブジェクトストレージ、ファイルサービスといった容量の大きい汎用(はんよう)ワークロードなので、容量とコスト効率が重要な要件になります」
この戦略を支える同社の新技術「Mozaic 3+」は、熱アシスト磁気記録(HAMR)技術を採用してディスク1枚当たり3TB超の面密度を実現した。安河内氏は「HAMRの実用化によって30TB超のHDDが誕生しました。今後は40TB、50TBへと容量を拡大する見通しも立っています」と説明した。
24TBのHDDをMozaicの40TBドライブに置き換えた場合、同一容量当たりの消費電力と設置面積を約40%削減できるという。これは運用コストだけでなく、将来的な拡張の自由度にも影響する。こうした技術を実装したストレージシステム「Exos 4U100」は、4Uサイズで最大3.2P(ペタ)Bの容量を構成できる。前モデルと比較して消費電力を30%、冷却負荷を70%削減した。
「3ラック分のデータを1ラックに集約し、消費電力を62%改善したという導入事例もあります。環境負荷低減の観点からも高く評価されています」
安河内氏は、データのライフサイクル全体を支えるソリューションとしてクラウドストレージ「Lyve Cloud」を紹介した。Amazon S3互換のオブジェクトストレージで、API利用料やデータ転送料(エグレス料金)がかからない定額制を採用しているため、予算を管理しやすい。
安河内氏は「AI時代の到来によって、企業規模にかかわらずデータはコストから資産になりました。コストをどう抑えるかだけでなく、データを資産として最大限に活用する方法を考えることが重要です」と講演を締めくくった。
続いてSeagateのパートナー企業4社が登壇して、それぞれの専門領域からストレージ課題へのアプローチを紹介した。各社は「データ増加」「コスト」「セキュリティ」といった課題に対して、Seagate製品と自社のソリューションを組み合わせた解決策を提案した。
ストレージ専業ベンダーのニューテックは、研究機関における膨大なデータの蓄積と維持の課題を提示した。ドライブの自己修復機能を備えたSeagate Exosストレージシステムの導入事例を紹介し、今後のAIインフラは単なるスペック競争ではなく、実験の継続性の担保が重要になると説明した。
映像制作業界のITソリューションに強みを持つビジュアルグラフィックスは、同社の「MediaFort Pro」とSeagate製品の組み合わせを紹介した。高精細コンテンツの制作が主流となる中で不可欠な「データ管理」と「リアルタイム編集を支える性能」を両立させるストレージ実現のヒントを提案した。
バックアップと復元ソフトウェアを開発するアクティファイは「No Backup, No Security」をテーマに講演した。Lyve Cloudのオブジェクトロック機能で、ランサムウェア感染時も削除や上書きがされない不変(イミュータブル)な保護体制を構築できると説いた。
NASの世界的ベンダーであるQNAPは、同社が提唱する次世代インフラの要としてSeagateの「Exos 5U84」とQNAPのZFSベースOS「QuTS hero」の組み合わせを位置付けた。不変スナップショットでバックアップデータをランサムウェア攻撃から物理的に隔離する機能やデータ肥大化時代のストレージ課題を解決する同社の支援体制をアピールした。
会場には日本シーゲイトとパートナー企業8社の展示ブースも設置された。日本シーゲイトのブースはHDDの最新製品「Exos 32TB」と、自己修復機能を備えた次世代ストレージシステムを中心に展示し、エッジからクラウドまで包括するデータソリューションを紹介した。
展示ブースの解説を担当する日本シーゲイトの岩田太郎氏(営業本部 営業技術部長)によると、Exos HDDはHAMRを搭載したMozaic 3+を採用。記録ヘッドに搭載されたナノ秒単位のレーザーダイオードがプラッタ(円盤)を局所的に加熱して書き込むことで、1プラッタ当たり3TBを超える記録密度を実現したという。今回は3.5インチで32TBという大容量製品を展示した。
Exos HDDと並んで来場者が注目していたのが、大容量ブロックストレージのExosストレージシステムだ。19インチラックに格納できる4Uの筐体には最大100のHDDを収容でき、最大3.2PBの容量を実現した。Seagate独自の自律ドライブ再生技術「ADR」(Autonomous Drive Regeneration)による自己修復機能が特徴だ。障害が発生したヘッドやプラッタをシステムが自動的に切り離して、コントローラーがドライブを再構成する。
「Exosストレージシステムは単なるディスクの集合体ではなく、自社開発のASICによる高度な管理機能を備えています。独自のイレージャーコーディング技術Seagate ADAPT(Autonomic Distributed Allocation Protection Technology)は、従来のRAID 6と比較してリビルド時間を最大95%短縮できるため、PB級のデータ運用でも高可用性と低TCOを両立させます」
Seagateのストレージシステム製品は、日本市場では後発であるものの、2025年に前年比約30%増という高成長を記録したという。特にコンテンツ制作、学術研究、AI開発といった分野での需要があり、今後は製造業のOT(運用技術)分野におけるストレージ基盤の共通化といったニーズに対して、パートナーと共に最適なソリューションを提案する構えだ。
パートナー8社による展示ブースでも、Seagate製品を核とした多様な「共創」の姿が示された。セミナーに登壇した4社以外の展示ブースをのぞいた。
HPC領域のシステムインテグレーション事業を展開するプラナスソリューションズは、ネットワーク転送が困難な大容量データを物理的に輸送するSeagateの「Lyve Mobile」を展示し、データ移行とデータ搬送の考え方やユースケースを説明した。
エレクトロニクス商社のレスターは、クラウドデータセンターやストレージソリューションを幅広く紹介した。Exosを組み込んだエフサステクノロジーズのx86サーバ「PRIMERGY RX2540 M8」の実機を展示し、サーバベンダーとの強いつながりを印象付けた。
ディストリビューターのダイワボウ情報システムはLyve Cloudの展示に注力していた。ブースの担当者によると、Amazon S3互換オブジェクトストレージを安価に利用できるコストメリットが、パートナー企業に高く評価されているという。
ディストリビューターのTD SYNNEXは、Exosストレージシステムの展示の他、Seagateストレージ製品向け導入支援パッケージ「ServiceSolv」を紹介し、導入のハードルを下げる取り組みを提示した。
Seagate Solution Day 2026は「データはコストから資産になった」という安河内氏の言葉を体現するように、資産を守り活用するための手法が、パートナー各社とのエコシステムを通じて示されたイベントとなった。同イベントは2027年にも開催予定だ。ストレージ運用に関するヒントをぜひ会場で掴んでほしい。
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提供:日本シーゲイト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia NEWS編集部/掲載内容有効期限:2026年4月29日