無機質な空間にデスクを並べ、1人1人区分けされたスペースで仕事する――そんな従来型のオフィス環境が今、急速に見直されつつある。高性能なタブレットやモバイルPCの普及を背景に、ITツールを使ってよりよい働き方を実践しようとする企業が増えている。
そんな中「企業のオフィス空間に対するニーズはここ数年でだいぶ変わってきた」と話すのは、リクルートマーケティングパートナーズやASUS JAPANなど多くのオフィス空間づくりを手掛ける空間デザイン会社・ドラフトの山下泰樹代表。現役クリエイティブディレクターでもある山下さんによれば、かつて注目を集めた「フリーアドレス」などのオフィストレンドはいまや「下火になりつつある」という。
現代の企業がオフィス空間に対して抱えている悩みとは。また、そうした課題を解決する新しいオフィスデザインのあり方とは――日々多くの企業からオフィスに関する相談を受けている山下さんに聞いた。
――ここ数年、フリーアドレス(自席を持たず社内のどこでも働ける制度)の導入をはじめ、ITツールを用いた働きやすいオフィス環境が注目を集めてきました。こうしたニーズは実際どれほど広がっているのでしょうか。
山下さん オフィスでのIT活用はかなり広がっていると感じます。フリーアドレスについては7年前ぐらいからニーズが増えてきました。営業など、社外で活動することの多い職種にとって働きやすい環境を整えたいという要望が多かったですね。
しかし最近では、フリーアドレスのニーズはすっかり下火です。率直に言って「フリーアドレスを取り入れよう」という提案は3〜4年前をピークに少なくなっていますね。今ではたまに「あ、フリーアドレスですね」というぐらい。
――フリーアドレスのニーズが減っている。
山下さん そうです。その理由の1つとして考えられるのは、営業主体だった会社が“企画型”に変わるケースが増えてきているからだと思います。
国内企業の多くは数年前まで、営業マンが顧客のところに行って商品をガンガン売り込むスタイルが主流でした。しかしネットで誰もが商品情報を手に入れられるようになった今、多くの顧客に足しげく通って売り込むよりも、自社製品を中心としたソリューションを企画し、1社の顧客により多くの提案をすることが求められるようになっています。
こうした流れを受け、その会社で働く社員の“社内在席率”も高まっているようです。
フリーアドレスはもともと外回りが多い営業スタッフのためのシステムですから、決まったメンバーが社内で集中して企画を考えるためには不向き。「営業マンをたくさん抱えて外回りに行かせる」という発想のフリーアドレスは実のところ“20世紀っぽい”考えで、企画系社員の生産性を高める手段としてはあまり評価されていないようです。
――フリーアドレスは「企画型の働き方」には合わない?
山下さん フリーアドレスって「居場所がない」感じがしますよね。その日のうちにデスクを片付けなくてはいけないし、次の日には別の誰かが座っているかもしれない。社員が「自分たちがここにいる」という感覚をなかなか持てないんです。
売れる企画を生み出すためには、自分の居場所に帰ってきて集中したほうがいいんじゃないか。やはり1人ずつスペースを与えるべきだよね――というのが最近の経営者の主流な考えになりつつあります。実際、フリーアドレスに一度挑戦してから「やっぱりやめた」という企業は当社のお客さまにも多いですよ。
――では、最近はどのようなニーズが多く寄せられているのでしょうか。
山下さん いま勢いがあって業績もよく、われわれがオフィスデザインを提案している会社の多くは「社員が帰ってくるオフィスをどうやって作るか」を考えているようです。
その考えが顕著に表れているのが、社内にカフェスペースを作ったり、時にはオフィス内で社員がお酒を片手にコミュニケーションできるようにするといった取り組みです。つまり、オフィスに福利厚生機能を持たせるなどして“帰ってきたくなる仕掛け”を用意する会社がとても多い。当社も例えば、壁に社員1人1人がメッセージを書けるようにして在席意識を高めようといったアイデアはよく提案しています。
――米Yahoo!も“在宅勤務禁止令”を出して「なるべくオフィスで仕事するように」という方針を打ち出していますね。
山下さん やはり「同じ場所に人が集まって仕事をする意味」は確実にあります。特に、日本人はそうした潜在ニーズが非常に高いと感じています。
こうした流れを受け、われわれもオフィスデザインを提案する際、人が集まりやすい場所を意図的に設けることが多いです。例えば、通路におもむろにモニタを置いて社員のPCと接続できるようにする。あとはそこにちょっとしたソファースペースとホワイトボードを置いておくだけで“勝手”にミーティングが生まれていくんです。
――今回、デルの協力でいくつかの最新IT機器を山下さんにお試しいただきました。社員が帰ってきたくなるオフィス環境を作る上で、これらのITツールはどのように活用できそうですか?
山下さん まず、お貸し出しいただいた曲面モニタ(34インチ曲面ウルトラワイドモニタ「U3415W」)は真っ先に「使えるな」と思いました。
ノートPC1台でどんな仕事もできる今、自分のデスクよりも一段階深く集中できるスペースを作りたいとつねづね考えていました。そこでこの曲面モニタを使えば、社員が一時的に集中力を高めるための“パーソナルブース”を作れるんじゃないかと思ったんです。
1つのブースに2台の曲面モニタを並べて、まるで飛行機のコックピットのような没入感をもって仕事に打ち込めるようにする。「今は集中したいからあそこにいこう」と、エンジニアなどのモチベーションの源泉になる。そんな“道具に応援される感じ”を演出できると考えました。
実際、このアイデアは当社のお客さまである株式会社ジーニー様に採用いただけることになりました。同社は今「日本一働きやすいオフィス」を目指してレイアウトを改装中で、社員の生産性アップにつながる仕掛けとして高く評価いただけたようです。
――ノートPCやデスクトップPCとしても使える“3-in-1”のWindowsタブレット「Dell Venue 11 Pro」は、実際に触れてみていかがでしたか。
山下さん このタブレットが持つ、ドッキングステーションとキーボードを組み合わせられるという個性は、社内会議やミーティングをがらりと変える可能性があると感じます。
最近のビジネスパーソンは、ノートPCをミーティングの場に持ち込むことが多いですが、人によってはそれを「ちゃんと話を聞いてくれているんだろうか」と感じることもあります。もちろんプレゼンターはPCを持っていたほうがいいですが、聞き手はタブレットのようなライトな端末でディスカッションしたほうがいい。このタブレットを手にした時、それがすごく実現しやすそうだと思いました。
参加者全員でWindowsタブレットを1つずつ持って会議室に入り、まずは紙を持っているようなライトな感覚でプレゼンや打ち合わせに臨む。一方、会議室内には1セットだけドッキングステーションとキーボードを用意しておき、文字をたくさん打つ書記の人はそれを使って“デスクトップPCモード”で使う。こうしたフレキシブルさは、ミーティングの場に大きな変化をもたらすはずです。
――変化、というと?
山下さん いまやYahooやGoogleといった超一流IT企業も、オフィスに社員が集まることを大事にしています。その理由は「熱っぽく会議をするため」だと思うんです。例えばミーティングでも、全員でPCを開きながらだとどうしても“見えない壁”のようなものが生まれてしまう。もしかすると、紙の資料とトークだけで会議していた昔のほうが熱はあったかもしれませんよね。
それが今、タブレットを使えば紙の時代の“熱っぽさ”を生かしたままミーティングができるはずです。しかも紙と違って資料がかさばることもなければ、必要に応じてキーボードを接続してPCとしても使える。つまり、企業としては「タブレットさえ持たせておけばミーティングが盛り上がる場所」をオフィスデザインの中に仕込めるわけです。
また、タブレットを使って会議をした後に、ちょっとしたスペースで続きができるようにすることもできます。例えば今回貸し出していただいた「Dell Cast」を使えば、タブレットの画面をそのままワイヤレスでモニタに映し出してミーティングを続けられるはずです。
会議室でミーティングをする時間はどの会社でも1時間なりと決まっていますが、終了後にも必要に応じて「分科会」を生み出したいというニーズは確実にある。こうした経営課題も、“オフィスデザインとITの組み合わせ”でクリアできると考えています。
――最新のITツールによって、紙の時代の“熱っぽさ”を取り戻せるかもしれない。
山下さん そう思います。ただ、これだけ社会が複雑化する中で、オフィスデザインをとっても正解は1つではありません。コミュニケーション活性化だけではなく、個人が集中できる仕掛けも大事。そんな社員のさまざまなニーズに対し、ITの使い方や選択肢もいくつか持っておくのがちょうどいいのではないでしょうか。
時代とともにベストな働き方は変わっていくもの。デルは日本の自社オフィスで、効率と満足度を高めるためのさまざまなワークスタイルを実践。職種や仕事内容が異なる社員1人1人に最適な働き方を追求しています。
提供:デル株式会社
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