変革は “働き方”だけじゃない──
地方に突然やってきた東京の会社が「農業×IoT」の信頼を得られた理由とは

2017年04月28日 10時00分 更新
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 自然を相手にする第一次産業の世界にも、IoT(Internet of Things)の波が押し寄せている。東京から約900キロ離れた地、長崎県南島原市にあるイチゴの生産地では、ビニールハウス内にセンサーや通信デバイスを内蔵した専用装置を設置。温度や湿度、日射量、土壌水分、CO2濃度といった圃場(ほじょう:作物を栽培する場所)環境データをスマートフォンからいつでもチェックできる環境を整えている。

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ビニールハウス内に設置されたモニタリングシステム。センサーや通信機器が内蔵されている

 その中でも特に目を引くのが、一粒約1000円もの値が付く“桃のような香りと味わい”が特徴のイチゴ「桃薫」(とうくん)だ。生産者の栗原雄一郎さん(KAWAKIYA代表取締役/加津砂佐苺組合事務局)も、2016年にこのモニタリングシステムをビニールハウスに導入した1人だ。

 「離れた場所にいても(ビニールハウス内の)状態をリアルタイムで把握できる。農地の状況が心配になって『一晩のうちに3回も確認しにいく』といったことも無くなりました」(栗原さん)

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生産者の栗原雄一郎さん(KAWAKIYA代表取締役/加津砂佐苺組合事務局)
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大きなピンク色のイチゴ(左)が「桃薫」(とうくん)

 「例年1日に1回しかできなかった収穫が、2回できるようになった」「不慮のボイラー停止による(ビニールハウス内の)急激な温度変化に気付くことができ、3000万円の損失を回避できた」──このシステムを活用することで、こんな事例も生まれているという。

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スマートフォンからビニールハウス内の環境や映像をチェックできる

 確かな成果を出しているサービスを提供しながら、積極的にIoTの活用を試みている農業生産者を“すぐそば”で支えているのが、東京都新宿区に本社を置いているセラクだ。社員数およそ1400人、ITインフラ構築やWebシステムの開発などを得意とする同社の温室環境遠隔モニタリングシステム「みどりクラウド」は、電源に接続すればすぐに使える簡単さと低価格から、北海道から沖縄まで、全国でユーザーを抱えている。

 みどりクラウドの研究開発効率をさらに向上させようと同社が取り組んでいるのが、開発拠点を農業生産者がいる地方に置く、サテライトオフィス設置だ。

 そこには、開発に携わるエンジニアが本社からやってきても、いつもと変わらない業務を遂行できる「テレワーク環境」の工夫があった。

廃校になった小学校が先端のサテライトオフィスに

 セラクがサテライトオフィスを置いているのは、長崎県南島原市加津佐で14年に廃校となった旧山口小学校だ。現在は「赤い屋根のふるさと交流館」として内装をリノベーションし、地域住民の交流の場、そして南島原市が以前から実施しているIT企業向けサテライトオフィス誘致の場にもなっている。

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校舎外観
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 みどりクラウドは農業とIoTを組み合わせたサービス。セラクの担当者(経営管理本部経営戦略室長)は、「南島原農業IT研究所」と呼んでいる南島原オフィス設立のきっかけについて、「実際のデータや設置後の活用ノウハウを持っているのは農業生産者さん。その方々に密着し、ユーザーの声を聞きながらの機能開発や収集したデータ利活用の取り組みを進めたかった」と説明する。

 「当社では、みどりクラウドがビジネスとして立ち上がる前から『いつかITによる地方創生を』と考えており、都内で誘致活動をしていた南島原市さんと2010年頃からコミュニケーションを取っていた。具体的に話が進んだのは15年頃。みどりクラウドの基礎技術が出来上がってきたころで、南島原市さんからも『廃校になる木造の立派な小学校がある』とタイミングのいいお話をいただき、実現に至った」(担当者)

 セラクのサテライトオフィス設置は、総務省が実施する16年度の「ふるさとテレワーク推進事業」にも採択されている。開発の中心はあくまで本社にありながらも、農業生産者と共同研究することで、効果の上がるものはサテライトオフィス(以下、南島原オフィス)で行う──効率と効果を最大化する働き方を実現するつもりだという。

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テレワーク環境を構築して気付いたこと

 「外部からの電話に“出張中”とは絶対に言わないで」──担当者が南島原オフィスに訪れる前に東京本社で指示したのは、あくまで出張ではなくテレワークであるというスタンスだ。

 南島原オフィスに整えたテレワーク環境で重視したのは、「東京本社に掛かってきた電話をそのまま受けられること」「テレビ会議で常時接続し、それぞれの部屋が常に見える」という2点だったと担当者は話す。

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東京本社とテレビ電話で常時接続

 「本社にいるのと同じ感覚が大事。イントラネットや社内ポータルへのアクセスなど、日々の業務が滞りなくできるようにシステムをクラウド化し、PCさえあればどこにでも居られる環境を作った。もともと会社全体が既にクラウド化の流れだったということもあり、追加投資はそこまで大きくない」(担当者)

 サテライトオフィスの一角に設けられた会議スペースは、東京本社と常にテレビ会議で接続されており、オフィスの様子が画面越しに見られる。

 本社にいる人からすれば、南島原オフィスにいる人が何をしているのか分からない、逆もまたしかり。姿だけでも見えるようにすることで、心理的な不安を取り除くちょっとした運営の工夫だという。

 「『出張中だから』ではなく、遠く離れた南島原市にいても東京と同じ仕事ができる。これらが実現できるのは本当にITの力だと思う。ここに来ることが特別なことではなく、『普段の仕事を行うのが、たまたま違う場所ですよ』となるようにしたい」(担当者)

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「テレワークで南島原に来るなら、土日も楽しんで」

 南島原オフィスを構えた理由は、農業生産者との共同研究が大きな目的の1つ。しかし、管理部門の視点では「リゾートオフィス」としての機能も企てている。

 担当者がIT業界全体の課題だと懸念しているのが、オフィスやクライアントが都市部に集中する中で社員の心身と健康を保ち、長く働ける仕事環境を提供するにはどうしたらいいかという問題だ。大人数の社員を抱える企業として、そういった心身のケアは非常に重要な要素だという。

 「東京で働くのと自然が豊かな南島原で働くのでは、業務内容や勤務時間は同じでも気分的には大きく違う。例えば長期間のプロジェクトに従事する人が、プロジェクトとプロジェクトの合間の1カ月間は南島原オフィスに来て業務を行う──山も海もあり、近くにはサーフィンができるポイントや有名な温泉もある。この場所なら、普段の業務をしつつも英気を養うことができるのではないか」(担当者)

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南島原オフィスで働いている社員の姿

 設備だけでなく会社の制度を整える重要性を担当者は訴える。セラクでは業務内容がテレワークでも支障が無い場合、直属の上司が許可すれば南島原オフィスで働くことが認められるという。「南島原オフィスで働くことは、出張ではなくテレワークである」とルールで明確化し、手当も出張とは異なるようにしているという。

 テレワークのルールにも細やかな配慮がある。南島原のサテライトオフィスに来る場合は、期間は最低1週間、さらに土日を必ず挟むように規定しているという。

 「平日に滞在するだけではリフレッシュとはいえない。『どうせ行くなら土日を挟んで仕事以外の時間も過ごしてきなよ』ということを明確化する工夫を施している。また、ある程度の立場がある人間が率先してテレワークをやってみせるのは重要でしょう。1、2年たったときに、一般の社員でも『テレワーク、やってみようか』と思ってもらえるようになれば、それが成功といえるのかもしれない」(担当者)

働き方を変えて得たもの

 担当者が実際にサテライトオフィス事業を進めていた中で実感したのが、行政の力強さだ。行政が地元とのコミュニケーションを促してくれることで、会社についての理解をスムーズに得られたという。

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校舎の中にはこれまでの歴史を振り返るスペースも

 「サテライトオフィスを設置する場所には、地元のコミュニティーと生活がある。そこに東京からいきなり『IT企業です』とやってきても普通は受け入れられない。地元の人が違和感を持つのは自然なこと」(担当者)

 「一企業が拠点にオフィスを構えれば、仕事ができる」──これは間違っているというのが担当者の考えだ。セラクを受け入れた南島原市の小関克稔さん(南島原市企画振興部商工観光課)は、「市が(企業を)誘致して終わりではない、という姿勢を示すのも大事」と説明する。

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南島原市の小関克稔さん(南島原市企画振興部商工観光課)

 「セラクさんが現地に来て、『農業IoTの聖地を目指しましょう』と言葉にしていただけるだけでも全然違う。しっかり地元に入ってもらえることで安心感があり、(農業生産者の人は)相談してみようとなっているのでは」(小関さん)


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 セラクが南島原にサテライトオフィスを設置したことで、サービスの研究開発の効率が上がるだけでなく、実際にサービスを利用する人たちの信頼を得ることにも成功している。

 最新のITツールで働き方を変えることで、さらなる価値を生み出す事例も出てきている。あなたの会社でも、これまでにない新しい働き方を検討してみてはいかがだろうか。

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