ポータル各社のブログ(Blog)サービスが盛り上がっている。3月に入り、既に参入済みのニフティやライブドアなどを追いかける格好でAOLジャパン、NTT-X(goo)、NTTコミュニケーションズ(OCN)、NEC(BIGLOBE)が参入を発表、春の訪れと共にブログが“旬”を迎えた。特にISP系ポータルは、接続料頼みの収益構造を改善させるチャンスと見て拡大を急いでいる。
“接続業者”からの脱却
「ADSLを筆頭に、ブロードバンド接続サービスが限界まで低価格化した今、ISPは単なる“回線接続業者”を超えた付加価値サービスを模索する必要がある」──3月18日、都内で開かれたOCN「ブログ人」の発表会で、NTTコムの小林洋子OCNサービス部長はブログに参入した意図を説明した。
接続料頼みからの脱却を目指して久しいISP各社だが、ブロードバンドコンテンツ配信などは期待ほどには伸びておらず、今だ収入の8割程度を接続料が占めるのが現状。ネットの普及で接続会員の増加も多くは望めず、料金の値上げは考えられない以上、接続料に代わる収益の柱づくりは急務になっている。ブログサービスの開始が相次ぐ背景には大手ISPのこうした思惑もある。
ブログサービスからの収入と言えばまず利用料だ。各社のサービスでは、基本サービスを無料で開放し、容量アップなど付加サービスを有料としているところが多い。NEC・BIGLOBEサービス事業部の古関義幸事業部長代理は「利用料だけでも利益を上げられる」とそろばんを弾く。
ただ、「システムを自社開発したため安上がり」というNECと異なり、米Six Apartの「Type Pad」を採用したNTTコムなどはライセンス料の支払いなども必要。「利用料は最低限の経費に充てるため、そこから利益はほとんど出ない」(NTTコム)という。ところが同じType Padを採用したニフティの「ココログ」は会員向けに無料でスタートし(3月16日に有料の高機能版を追加)、業界を驚かせた。
広告媒体としての期待
各社が当面の採算を犠牲にしてまでブログに参入するのは、ポータルの集客力を高めることで得られるメリットも大きいためだ。
例えば各ブログサイトに広告を掲載することも収入を得る有力な手段。「ブログはテキスト中心で相互リンクも多く、検索エンジンに拾われやすいため、広告を掲載すれば多くのユーザーに見てもらえる可能性が高い」(NTTコムの小林部長)。実際、ブログ先進国である米国では、ブログ向け広告が効果を上げつつある(関連記事を参照)。
また、NTTコムが採用したようなアフィリエイトプログラムもブログサービスの価値を高める独自の取り組みだ。ユーザーがAmazon.co.jpの商品を紹介し、その商品がブログ経由で購入されれば一定の手数料をもらえる仕組みだ。「オピニオンリーダーとなる人のブログで商品が紹介されれば、闇雲に広告を打つよりもずっと効果が高いはず」(NTTコムの小林部長)。
商品紹介のページにトラックバックを送れるようにした書籍販売サイト「bk1」のような試みも出てきた(関連記事を参照)。ブログの普及は、ショップへの“入店口”を増やしたいECサイトの思惑とも一致する。
ブログサービスでユーザーを増やせば、ポータルの広告媒体としての価値も高まる。そのためにも早期にブログユーザー自社サービスにを囲い込んでおく必要があるわけだ。
企業ツールとしての可能性も
さらに、ブログツールや関連システムを外販するという手もある。NTTコムは、ブログと連携したアフィリエイトシステムを各ECサイトに販売する予定で、いくつかの業者と話が進んでいるという。
また自社開発したシステム自体を外販する取り組みも考えられる。ポータル向けにとどまらず、企業が業務ツールとして活用する可能性も出てくる。例えば企業がユーザー向けサイト更新を迅速に行える手段としてブログを活用したり、あるいは社員の営業日誌をブログ化し、トラックバックを使って助言を出し合うナレッジコミュニケーションツールとして使うなど、“Web日記”を超えたビジネスツールとしてのアイデアも広がる。
問われる差別化の工夫
NTTコムの小林部長は「ブログはまだまだ黎明期。これから1−2年の間に爆発的に普及する」と見る。構築・更新の簡単さが売りのブログは、“ホームページ作り”よりも簡単で、初心者層をさらに幅広く取り込めるとの読みだ。
ただ、さらに広くユーザーに普及させるには、“Web日記”を超えたネットならではの楽しさや利便性を提供していくことも必要になるだろう。今は各社とも今はブログの普及を急ぎたい考えで、「独自機能を入れることより、サービス開始のスピードを優先させた」(NTTコム)という姿勢。だが独立系の「はてな」が人気を集めているように、ユーザーを囲い込むにはターゲットに“選んでもらえる”サービスを提供できるよう、各社の知恵と工夫が問われそうだ。
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