「GeForce 6シリーズは単なるGPUではない」GeForce 6800 Ultraが日本でもお披露目
新しいアーキテクチャを実装したNVIDIAの新世代グラフィックスチップ「GeForce 6」シリーズの国内製品発表が16日に行われ、「GeForce FX 5950の2倍」という高いパフォーマンスと浮動小数点テクスチャによる精細な表現力が紹介された。
GeForce 6シリーズとして最初に登場する「GeForce 6800」は上位バージョンの「GeForce 6800 Ultra」とエントリーバージョンの「GeForce 6800」の2モデル。GeForce 6800 UltraではGDDR3がサポートされ(GeForce 6800はDDRのみ)、パイプラインの数もGeForce 6800 Ultraが16本であるのに対し、GeForce 6800は12本と差別化が図られている。どちらもPCI ExpressバージョンとAGPバージョンが用意される。価格はGeForce FX 5900並みの価格となる予定だ。
説明会では、製品紹介に先立って日本法人のエヌビディアから、エンベデッド・ビジネス担当シニアマネージャーの斎藤道雄氏が、NVIDIAビジネスの現状とこれからの展開について紹介。PCからハンドヘルド、コンシューマー機器と幅広い分野で製品を供給し、デスクトップPC向けGPUやDirect X 9 対応GPUのビジネスで過半数のシェアを占めているとアピール。「急速に市場が拡大し、NVIDIAの成長にも大きく影響する」と、これからはデジタルメディアネットワークの分野に注力していくと説明した。
「PCはマルチフォーマットに対応しているので、デジタルメディアの処理に最も適したデバイス。これからのユーザーは“聴ける見れる”だけでなく、品質を求め、さらにコンテンツを自分で保存するだけでなく、ネットワークを介してやり取りする。NVIDIAはグラフィックスとマルチメディア処理、ネットワークに特化して製品を投入していく。GeForce 6シリーズは単なるGPUではなく、マルチメディアの処理能力を付加した新世代のチップだ」(斎藤氏)
続いて、GeForce 6シリーズの第一弾として投入される「GeForce 6800」の具体的な説明が、米NVIDIAから来日したデスクトップGPUシニアプロダクトマネージャーのスティーブン・シムズ氏によって行われた。
シムズ氏は、GeForce 6シリーズの開発に当たって設定された「五つのゴール」を紹介。「GPUとして最速であること。先進的な構造であること。最新APIのすべてをサポートすること。ビデオメディアの処理も融合すること。フォトリアリスティックなレンダリングを可能とすること」と、GPUとしての描画処理能力向上に加えて、ビデオ映像の加工処理能力も目指したGeForce 6シリーズのコンセプトを明らかにした。
シムズ氏が、GeForce 6シリーズのアーキテクチャで最も大きな特徴としてアピールしたのが「16パイプ・アーキテクチャ」と「スーパースカラ・シェーダ・アーキテクチャ」。
従来機種「GeForce FX 5950」が8本のパイプライン(実際に実装するのは4本で、処理によって8本相当にしていた)だったたのを、物理的に16本と拡張しただけでなく、各パイプラインでスーパースカラによる並列処理を可能したことで「単にパイプラインが増えただけでなく、それぞれのパイプラインの太さが倍になった」(シムズ氏)と説明。NVIDIAが行ったGeForce FX 5950とのパフォーマンス比較テストで、ほぼ2倍の性能向上が実現したデータを示した。
GeForce FX 5950と比較したGeForce 6800 Ultraの相対性能。Quake 3からDoom 3、Halo、FarCryなど多数のゲームでベンチマークテストが行われているが、アベレージで2倍の性能アップが確認されたとしている
説明会で示された3DMark03の結果。米国で発表された結果より高い値となっているが、こちらはよりクロックが高いPentium 4 エクストリーム/3.40GHzで測定した結果といわれている。ただし、解像度やフィルタリングの条件などは明らかにされなかった
また、GeForce 6800の重要な機能としてシムズ氏は「Direct X 9の機能をフルに使うことが可能になる」Sharder Model 3.0のサポートも取り上げた。そのなかで、とくに32ビットの浮動小数点データのサポートをアピールし、従来GeForce FXシリーズで出来なかった浮動小数点テクスチャがGeForce 6800でサポートされることで、より精密な描写が可能になったことを、デモソフト「Nalu」を使って紹介した。
Naluのデモでは、水中の光反射による「コースティク」効果や「ソフトシャドウ」効果、光の突き抜けを描画する「ゴットレイ」効果や、サポートされた条件分岐処理によって「皮膚とウロコの位置を区別して描画を書き換えることで、処理負荷の軽減を実現した」(シムズ氏)など、Shader Model 3.0のメリットを紹介した。
また、斎藤氏が「マルチメディアの処理能力を付加した新世代のチップだ」と述べた、チップ内に内蔵されたプログラマブルビデオプロセッサについても、シムズ氏は「GeForce 6800だけで、ハードウェアによるMPEG-1/2/4のコーデックを可能にした」と説明した。
発表会には「リネージュII」のエヌ・シー・ジャパンのビジネスチームマネージャー越知雄一氏や、エレクトロニック・アーツのマーケティング部EAゲームスシニアプロダクトマネージャーの柳下雄一氏も登場。越智氏は「数千人といった人数が参加するオンラインゲームは高性能のGPUの存在によって可能になる」と、GeForce 6800 Ultraがもたらすパフォーマンスに期待するコメントを述べた。
従来サポートしてきたShader Model 2.0と今回サポートされることになったShader Model 3.0の機能比較。シムズ氏がとくに強調したのがfp32のサポートと「無限に近い」命令コード長。NVIDIAはShader Model 3.0をサポートするゲームとして、S.T.A.L.K.Rやスプリンター・セルXm,FarCryなど、多数のゲームタイトルが用意されていると説明した
FarcryによるShaderModel2.0と3.0の描画の違い。浮動小数点テクスチャを使った3.0は表面の描画がより細かい。なお、このデモで使ったFarCryはこのために特別に作られたものとNVIDIAは説明している
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