「HDTV動画配信も無線LANで」――家電市場を目指す802.11n
MIMO技術の実用化が始まり、無線LANのスループットが高まってきた。米AtherosのCTOは、家庭内でHDTVコンテンツをワイヤレス受信できる環境が整いつつあると話す。
米Atheros Communicationsのウィリアム・マクファーランドCTOが来日し、無線LAN市場動向を語った。今後は、2GHz帯と5GHz帯のデュアルバンド利用や、MIMO(Multi Input Multi Output)技術による高スループット化が進行。HDTVコンテンツの家庭内配信も無線LANで可能になると話した。
「ニューヨークの交差点で2.4GHz帯アクセスポイントを調べたら50もあった」――マクファーランドCTOは、2.4GHz帯は混雑しすぎと指摘する。無線LANアクセスポイントや対応アプリケーションは増加の一途。5GHz帯とのデュアルバンド化で、2.4GHz帯の混雑を緩和する必要があるとする。
5GHz帯の再編や開放は国内外で進んでおり「5GHz帯が使いやすくなってきた」。同社は、デュアルバンドチップをシングルバンドチップとほぼ同じコスト・サイズで製造可能としており、低価格チップでデュアルバンド市場拡大をけん引する計画だ。
無線LANのスループットを拡大するMIMO技術の実用化も始まった。MIMO技術のうち、同社はまず、エネルギーを高めて信号到達距離や強度を向上させる「ビームフォーミング」(BF)と、複数の信号を合成する「合成ダイバーシティ」(MRC)に対応。MIMOをベースにした規格「IEEE 802.11n」成立後に、送受信それぞれに複数のアンテナを利用する「空間多重」に対応するとした。
米Airgo Networksは、空間多重に対応したMIMO製品を発表済みだが、同社はあえてBFとMRC対応を先行させたという。「空間多重は、受信・送信ハード両方に新デバイスを搭載する必要があるが、BFやMRCなら片方だけでも高速化できる」ため。片方の機器だけにMIMO技術を搭載した場合は、BF+MRCの方が空間多重より高速になるとした。
同社は.11n規格策定に参加。Cisco Systems、Intel、NokiaなどとともにTGn Sync陣営に属している。同規格は2006年半ばに最終ドラフトがまとまると見ており、そのころに対応ハードをリリースする計画だ。
50時間通話できる無線LAN携帯も
無線LANの高スループット化にあわせ、DVDレコーダー、デジタルカメラ、TVといった家電製品や、自動車、携帯電話などにも無線LAN機能が順次搭載されると予測。BFとMRCを搭載した機器なら、HDTVコンテンツ配信に十分な、22M〜23Mbpsの通信が、室内のどこでも可能になるという。
無線LANチップの小型化・省電力化を進め、携帯電話への搭載も進める。「省電力技術のAPSDを使えば、950mAhの携帯電話バッテリーで連続50時間の通話が可能だ」。
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