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AppleとIntel、30年にわたる数奇な関係(後編)(3/3 ページ)

MacがIntel insideに――この衝撃的な発表に至るまでには、Apple設立以来およそ30年に及ぶIntelとの因縁めいた物語があった。前編に続き、Power Mac登場からIntelとの提携までの10年間を振り返る。

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最後の寄り道

 もっとも、MacのIntel製CPU採用までの道のりは平坦ではなかった。

 Rhapsodyも結局は、Mac OSに代わる存在には結局、ならなかった。Rhapsody向けのアプリケーション開発が、それまでのMac用アプリケーションの開発とあまりにかけ離れていたのがその原因で、多くの開発者がMac向けのソフト開発から離れようとしていた。

 そこでAppleは、従来のMac用プログラムを簡単に移行できるAPIセット、「Carbon」を発表する。さらに従来のMacの画面テイストを残しつつも先進的な外観、「Aqua」を生み出し、これを合わせたOSをMac OS Xと呼ぶ。

 一方、「RhapsodyはMac OS X Server 1.0」(現在のMac OS X Serverとはまったく別物)というサーバー用OSとして製品化された。その際、OSの下層のUNIX部分をDarwinというオープンソースOSとして公開する。

 実はこのDarwin OSにもすぐにIntel版が登場、ここでIntelCPUへの移行の噂が再燃する。

Happy Ever After!?

 CarbonとAquaを搭載したMac OS Xが正式にリリースされたのが2001年の3月。

 Appleはそれからわずか4年間で、4度のOSメジャーアップデートを行なった。そしてOSのアップデートの度に、100個、200個という単位で新機能を加えていった。驚くのは、この5つのMac OS Xが実はすべて、Apple社内の秘密の部署でIntel製CPU向けにもコンパイルされていた、という事実だ。

Intel版Mac OSはこの場所で開発されていた
Intel版Mac OSはこの場所で秘密のチームによって開発されていた

 これを聞いた時に「すごい」とは思ったものの、ちょっと話を作っているんじゃないか、とも思った。ジョブズが完璧主義であることは知っているが、はたして出荷しないインテル版OSを本当に作っていたのだろうか。どうやら、本当に作り込んでいたようだ。初期のMac OS Xの開発に関わっていた人物が、今回の発表の後で明かしてくれたことによれば、彼の担当分のソースコードを提出したところ「Intel CPU上でうまく動かない」という理由で修正を頼まれたことが何度かあったというのだ。

 ジョブズは、IBMやMotorolaとのPowerPC戦略が失敗した時のバックアッププランとして、Mac OS Xそのものは、常にPowerPCでもIntelでも動くクロスプラットフォームのOSにしておこうと準備していた。

 PowerPC開発計画は、最近になって何度か危ない目にあってきている。Motorolaが開発したPowerPC G4も、最初は歩留まりが悪く供給量が低かった。そしてPowerPC G5の高速化も低消費電力化も、Appleの期待を大きく下回るものだった。

 その度に、「Apple、今度こそIntelプラットフォームへ移行か」といった噂も流れた。しかし、Appleのビジネスに詳しい人ほど、Appleがハードウェアで利益をあげている企業だという知識や互換機事業で大損害を被ったという知識が、邪魔をして、その計画を信じることができなくなっていた。

 しかし、今回の電撃発表の直後、Appleのワールドワイドマーケティング担当の上級副社長、フィル・シラーに聞いたところ、Appleは、何もWindowsが動くPC互換機用にMac OS Xを提供するわけではなく、Intel版Mac OS Xの動作対象は、あくまでもAppleが発売するIntel製CPU搭載のMacのみ、という話だ。

 今後、実際にOSが出てきてから戦略が変わることもあるかもしれないが、当面はApple製パソコンのみサポートが、AppleのIntel戦略だ。来年、Appleが創設30年目の節目に、Intelを採用することには、何か技術を超えた運命的なものを感じる。

 ここからまたどんな新しい物語が始まるのか楽しみでならない。

AppleとIntelの歴史(その2)

*** 一部省略されたコンテンツがあります。PC版でご覧ください。 ***

AppleとIntelを中心に本記事に関連する主なトピックについて掲載した。

(参考文献「Apple〈上〉〈下〉」世界を変えた天才たちの20年/ジム カールトン (著)、山崎 理仁 (訳)、早川書房)

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