ソーシャルネットワーキングサイト「mixi」には、複数の自分像を1つに統合してしまう力と、人と人とを強力に結びつける力がありそうだ。mixiがきっかけで知り合い、結婚したユリヤさんとMottyさんの話から、そんな“場の力”が垣間見えた(関連記事参照)。
mixiは国内最大のSNSで、ユーザー数は90万人以上。日記や写真を掲載でき、趣味のコミュニティーを作ったり、友人同士でリンクし合える。
「当初は現実世界からの“隠れみの”だった」とユリヤさんは言う。当時のmixiには、職場の同僚と見知らぬ人しかいなかった。ユリヤさんは素の姿――奔放な毒舌キャラ――を、同僚だけに見せることができた。
それから1年以上。mixiユーザーは劇的に増え、学生時代の仲間や、趣味で知り合った友人までもが参加するようになった。すべての友人が「マイミクシィ」(友人同士のリンク)という1つの関係でつながってしまうと、ユリヤさんは、どの“顔”で発言しようか迷うようになり、身動きがとりづらくなったという。
他人の日記のコメントも、リアルとバーチャルのはざまで迷う。ネットで知り合った見知らぬ人の日記には気軽にコメントできたけれど、一度リアルで会ってしまうと、テンションにブレーキがかかってしまうという。
「『こういう人』と分かっていてコメントを書くのと、知らないでやっているのとでは、意味が変わってきてしまう」とMottyさんは言う。知らないからこそ興奮できた部分もどうやらありそうだ。
例えば、見知らぬ人のmixiプロフィールは、想像力をかきたてる。お互いの趣味や、顔写真、日記――断片的なデータから、人物像が見えそうで見えない。「顔写真が張ってあって、『実物は全然違いますよ』と書いてあったりしたら、実際よりもいいのか悪いのか、余計に想像力を刺激される」(Mottyさん)
実際に会うと、想像する余地が激減する。現実の人間関係というしがらみもでき、好き勝手な発言も難しくなる。「リアルの友人とマイミクになっても、あまり行き来しないなぁ」とユリヤさんは言う。
“オレンジの輪”が織りなす奇跡
Mottyさんは、mixiで主催するジャズコミュニティ「JAZZIE IDENTITY」で、メンバーの結束と熱意に驚いた。クラブイベントをしようと呼びかけると、無償で働くスタッフが20人も集まった。
クラブイベントといえば、まず友人を誘い、フライヤーを作って配り、必死に宣伝してやっと数十人集まるもの。mixiで声をかけただけで何人ものスタッフが集い、150人もの参加者を集めるイベントにできたのは、奇跡的だった。
夏にも行う次回イベントは、スタッフだけすでに50人。無償で公式サイトを作ってくれた人もいる。プロ級のDJや生バンドが集まり、イベント制作会社社長がオーガナイズする。mixiの磁力の周りにたくさんの才能がl集まって絡み合い、1つのものを作り上げる。
「みんながオレンジの輪の中にいる、そんな感覚」――ユリヤさんはmixiの人間関係をそう評する。mixiのオレンジ色のインタフェースとマイミク達が、重なって見えると。オレンジ色のあったかい空間を共有する仲間――そんな意識がユーザー同士の結束を強め、やる気を高める“魔法”になっているのかもしれない。
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たくさんの友人ができ、新しい仕事まで舞い込んだ。ネット上の自分のイメージと、現実の自分とのギャップが悩みの種だ。
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