ThinkPadから組み込みソフトへ――IBM大和事業所の今
ThinkPad事業をLenovoに売却したIBM。ThinkPadの開発拠点だった大和事業所は、デジタル家電の組み込みソフト開発や、スーパーコンピュータを使ったビジネスを開拓する拠点に生まれ変わった。
ノートPC「ThinkPad」シリーズの開発拠点として名高い日本アイ・ビー・エム(IBM)の大和事業所(神奈川県)。PC事業をレノボ・ジャパンに譲渡した今、家電メーカーの開発支援や企業向けステム開発・営業拠点としての存在感をアピールし始めた。ThinkPad開発で培った効率的なワークフローや技術力を、これからはPC以外の分野に生かしていく。
大和研究所は、IBMのアジア地域の研究開発拠点「APTO」(Asia Pacific Technical Operations)の1つで、今年で設立20周年。ThinkPad事業が目立っていたが、従来からソフトやハードの開発、コンサルティング営業なども手がけてきた。
今年に入り、相次いで施設や研究所を新設。企業のRFID導入支援を行う「RFIDソリューションセンター」を5月に、スーパーコンピュータの金融や創薬分野などへの応用を研究する「ディープコンピューティング開発研究所」を6月に設立し、デジタル家電の組み込みソフトやハードを開発する専任部隊も設置した。
同社の大歳卓麻社長は「時代はハードからソフトやサービス中心に移ってきている」とし、大和事業所のメイン事業はソフト開発になると話す。デジタル家電や携帯電話などの組み込みソフト開発支援に特に力を入れる方針だ。「世界に冠たるメーカーがあり、要求が最も厳しい日本で、組み込みソフトの開発拠点を持つことの意義は大きい」(大歳社長)
大和事業所内地下にあるRFID研究用の電波暗室。電波吸収体が天井まで張り巡らされた空間に、RFIDリーダーや電波測定器を配置。奥にはノイズ電波を発する大きなアンテナが設置してある(左)。ペットボトルや缶などにRFIDを張り付け、角度や中身、アンテナとの距離による受信感度の変化などを研究する
デザインセンター内にあるUIラボ。ガラス越しに見えるブースで、一般ユーザーにPCやWebサイト、携帯電話などのUIを体験してもらい、その様子をカメラで撮影して改善点を探る。同様のラボはメーカーならたいてい持っているというが、オフィスのすぐ隣にあり、ユーザーからのフィードバックをすぐに開発に生かせるのが強みという
同事業所では7月28、29日に、関係者に事業内容を説明するイベント「Innovation Day 2005」を実施した。システム開発の事例紹介を行ったほか、スーパーコンピュータTop500ランキング首位の「Blue Gene/L」に搭載されているボードや、同社の技術を取り入れた地雷探知機などを紹介した。
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