オンライン小売業界は、派手なビジネス展開が次々に打ち出される業界ではないと思われている。
だが、最近はそうでもなくなってきた。この数カ月間に大手2社が大型買収を実施し、ほかにも2社が資金調達に乗り出している。2006年も活発な投資が続きそうな雲行きだ。
普通なら目立つことなくせっせと商売に励んでいるこの業界が、こうした大きな動きを見せているのはなぜか。Googleの影響とする見方が有力だ。
Googleは強力な資金力と事業展開力を持っているため、同社が新規ビジネスを立ち上げると、関連市場の既存企業は対応に追われることになる。
オンラインストアや比較ショッピングサイト、そのほかの周辺サービスを手掛ける企業は、今まさにそうした状況にあるようだ。
Googleは5月、eBayのようなオンラインストアが提供するサービスの要素を秘めた無料の案内広告サービス「Google Base」を発表した。また、「Google Wallet」や「Google Automat」と呼ばれる現在開発中のオンライン決済システムについても計画の存在を認めている。
オンラインオークションの草分けであるeBayや、Amazon、あるいはCraigslistのような地域特化型の小売りサイトにとっては、Googleの小売り関連プロジェクトと巨大なユーザー基盤の組み合わせに対抗することが緊急課題だろう、とアナリストは指摘している。
Googleが小売り関連プロジェクトを意欲的に進める背景には、オンライン小売市場が急速に拡大していることがある。Forrester Researchの最近の調査によると、米国のオンライン小売り販売額は2005年に前年より22.0%増えて1724億ドルに達し、旅行関連を除いても1096億ドルとなる見通しだ。
また、comScore Networksによると、オンライン小売市場の成長率は過去2年とも25%を超えているという。
「Googleはこの分野でも大成功を収める可能性がある」とUBS Investment Researchのアナリスト、ベンジャミン・シャクター氏は先ごろ、Googleの小売り関連計画について語った。
Googleの担当者からコメントは得られていない。
Google Baseが発表された後、eBayはP2P型インターネット電話サービス会社のSkype Technologiesを20億ドル以上で買収し、数千万人のSkypeユーザーをeBay環境に統合し始めている。
その数週間後には英紳士用品販売大手のGUSが比較ショッピングサイトのPriceGrabber.comを5億ドルで買収した。
また、オークション業者のUbid.comは、Google Baseとその競合要素を主に念頭に置いて、来年1月初めをめどに株式公募で8000万ドルを調達する計画だと、同社のある役員は匿名を条件に明らかにした。
Buy.comも新規株式公開による資金調達を計画している。
さらに、一部のベンチャーキャピタル会社のマネジャーは、Googleがオンライン小売市場で大きなシェアを占めるeBayに追いつくためには、買収を行うことが不可避だと考えている。
「何とも言えない。彼らはうそを言うこともある。だがいずれにしても、Googleが攻めてこようとしているときに、手をこまぬいているのは得策ではない」とUbid.comの役員は、ファンドマネジャーとの仕事上の関係を損なわないように匿名で語った。
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