PSE法、「ビンテージ品のみ除外」に困惑する中古業者(2/2 ページ)
“ビンテージ品”のみPSEマークなしでも販売可能――経産省の方向転換に、対策を進めてきた中古業者が困惑している。「楽器だけを適用外とするのは不公平」との声も挙がっている。
「ビンテージ品だけ」はおかしい
規制除外品の選定法にも疑問が残る。リサイクルショップ・素人の乱5号店(東京都杉並区)の松本哉店長は、「電化製品の安全を守るための法律なのに、ビンテージ品だけ除外というのはおかしい。『レアものだから安全』とは言えないはず」と語り、一部を例外認定するならば、旧法(電気用品取締法)で安全と認められた中古品全般を除外対象として認めるべきと訴える。
中古楽器のPSE法適用除外を求めてきた日本シンセサイザープログラマー協会(音楽家の坂本龍一さんらが所属)も、ビンテージ品だけでなく、中古楽器すべてを除外対象とするよう求めており、経産省との溝は埋まり切っていない。
清進商会の小川店長は「法律の条文には『中古品も対象』とは書いておらず、中古品に規制がかかるのがそもそもおかしい」と指摘し、法解釈を改めて見直すべきと訴えている。
「検査サポート」は無意味?
PSEマークは、中古品販売事業者でも製造事業者として登録し、自主検査を行えば添付できる。経産省は、全国500カ所以上で検査を受けられる体制を整え、中古品の検査をサポートすると発表した。
しかし「検査サポートは意味がない」とハードオフ担当者は語る。「検査機器は10数万円で手に入るし、店舗で検査した方が効率がいい」(ハードオフ担当者)ためだ。
同社をはじめとした中古業者がPSEマークの自社添付をためらうのは、製造物責任や商標権の問題が大きい。他社が製造した商品にPSEマークと自社の商標を張って販売することで、製造物責任(PL)法の責任を問われたり、商標権の問題が生じる恐れがある、という訳だ。
中古業者を製造業者に“転換”すること自体に無理があるという意見も根強く、法の抜け道的な対策を経産省が支援することに対する反発の声も挙がっている。
今週末も、PSE法に反対するデモが行われる予定。本格施行を目前に控え、PSE法をめぐる混乱はしばらく続きそうだ。
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