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個人アニメ作家にFlashがくれた“力”ITは、いま(3/3 ページ)

安月給で馬車馬のように働く末端クリエイターの環境に、1人の制作マンが疑問を持った。「ネットがあれば、個人クリエイターでもビジネスできるはず」――彼は都内を飛び出して島根に移住。個人製作で食べていこうと決めた。

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 テレビアニメといえば、何十人ものスタッフが、1話あたり1000万円程度かけて作るのが常識。たった1人で、数時間〜数日で作ってしまう“制作費ほぼゼロ”のFlashアニメは業界を驚かせ、テレビ局の目を引いた。

 「面白かったとしか言いようがない。深夜枠は持ち込み作品の多い激戦区だが、5人のプロデューサーで担当を取り合ったほど」――テレビ朝日担当プロデューサーの西口なおみさんは、小野さんの作品についてこう語っている。

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テレビ化が決まり、都内DLEオフィス内に製作スタジオを作った。音声の録音は、茶色い袋に入った掛け布団をかぶって行う。「掛け布団ではない。“布団素材のスタジオ”だ」(小野さん)

 「クリエイターがFlashやネットというメディアを持ったことで、テレビ局とも対等に付き合えるようになった」とDLEの椎木隆太社長は話す。局から提示された条件が悪ければ、「ネットで放映するからテレビはいらない」と言える。お金をかけずに作れるため、製作委員会による資金調達も不要。作りたい作品を作れる。

 今後は、テレビで高めた認知を活用し、DVDやグッズ販売で稼ぐ計画だ。すでに「鷹の爪」のフィギュアを作り、ネット販売を始めた。

 「個人が作ったコンテンツで億単位のビジネスが創出できれば、個人クリエイターに未来が示せる」――小野さんはこんなふうに夢を語る。

――あなたにとって、ITとは

 「ネットがなければ、個人で映像製作をやること自体が無理。ネット以前は、映像作品を作っても、自主上映会をやったり、コンテストに出したり、テレビに出したりしないと見てもらえなかった。今なら、PCでカチャカチャカチャやるだけで世界中に公開できる。コンテンツが面白ければそれを宣伝してくれるニュースサイトも出てくる」

 困窮し、自暴自棄になっていた3年前を振り返ってこう語る。「ITは、地獄から這い上がるための、蜘蛛の糸みたいなもの」

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「映像をビジネスとしてやってきた。いまさら趣味なんて言うつもりもないし、芸術と言うつもりもさらさらない。うちの子ども食えなきゃ意味がない」
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