録画はするものの、見ないでため込んでしまう“死蔵コンテンツ”が増えている――野村総合研究所は5月25日、こんな調査結果を発表した。HDDレコーダーやテレビ録画機能付きPCの普及などによって録画が手軽になり、映像再生に対応した携帯機器の普及などで視聴スタイルも多様化しつつあるが、視聴時間は伸びていない、という結果だ。
ネットユーザー1000人(HDDレコーダー保有者、非保有者半々)に対して、映像視聴スタイルに関する調査を5月8日に行った。
HDDレコーダーのディスク容量平均は、昨年4月に行った同じ調査より54Gバイト(32%)増えて221Gバイトに。HDDレコーダーに保存してある番組の数は、昨年より10.4番組(39%)増えて37.3番組になった。「容量があればあるだけ番組が蓄積されるため、HDD需要は尽きない」(同社情報・通信コンサルティング二部の北林謙主任コンサルタント)。
その一方で、1週間あたりの動画視聴時間は平均27.1時間と昨年より0.2時間減っており、ため込んだ番組も見切れていないようだ。「タイムシフトのバッファが長くなっている」――録画してから見るまでの期間が長くなり、番組はどんどんたまる一方に。1度も見ずに削除する番組数も1週間あたり0.8番組と、昨年よりも0.3番組増えている。
携帯プレーヤーに転送して外出先で視聴したり、家庭内LANを敷いて各部屋でコンテンツを共有するスタイルも、まだ定着していないようだ。
家庭内LANの敷設率は40.6%と昨年比3.6ポイント増えたが、HDDレコーダーやネット対応テレビを接続しているユーザーはそのうち10%未満。PSPや携帯型ビデオプレーヤーで映像視聴しているユーザーも、それぞれ全体の10%未満だった。この割合が今後増えても、ユーザーの映像視聴時間はそれほど伸びないだろうと同社は見ている。
多チャンネル放送やビデオ・オン・デマンド(VOD)サービスが普及し、地上デジタル放送の本格スタートでHD番組が増えるなど、映像の供給量・データ量が増える中、気になったコンテンツは、見る時間がなくてもとりあえず録画しておく、というスタイルも定着してきた。HDDレコーダーに大容量を求め、コンテンツをひたすらため込んでいく動きは、しばらく続きそうだ。
関連記事
- 放送と通信の“壁”、家庭内LANが越えていく
放送と通信との融合は、進みそうでなかなか進まない。HDDに蓄積されたデジタルコンテンツを、LANを使って“家庭内流通”させることが、放送と通信の融合につながるとNRIは考えている。 - HDDレコーダーによるCMスキップで“損失”540億円
HDDレコーダーの普及で、テレビCMの価値が損なわれていく恐れがあるという試算を野村総合研究所が公表。ブロードバンドの普及が従来メディアへの接触時間を飲み込んでいる。 - 「レコーダーでCM認知は下がらない」──電通が反論
デジタルレコーダーによるCMスキップでCM効果が下がる、といった指摘に電通が反論するレポートを公表。レコーダーはテレビとの接触をむしろ増やし、レコーダーユーザーはCM認知率が高い傾向にあるという。 - 2011年、2割の世帯が地デジを見られない──NRI予測
地上アナログ放送が停波する2011年になっても、19%の世帯が地デジに非対応――NRIがこんな予測を発表した。 - “光”の普及、カギはテレビ局
NRIが2010年までの情報・通信市場を予測。ADSLに代わってFTTHがブロードバンド市場の主役になり始めているが、FTTH普及には「通信と放送の融合」が必要と見る。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.