壁の模様を“消して”自然な映像 どこでもスクリーン技術
「模様付きの壁を白色スクリーンに変身させる」というプロジェクター投影技術を国立情報学研究所と東大のグループが開発。一般家庭の部屋の壁などで自然な映像を楽しめるようになるという。
国立情報学研究所(NII)などのグループは7月25日、プロジェクターの映像を、模様がある壁に投影しても自然に見えるようにする新技術を開発したと発表した。壁の模様に合わせて補正した映像を投影することで、模様を見かけ上ほとんど消してしまうもので、「模様付きの壁を白色スクリーンに変身させる」という“どこでもスクリーン”技術。一般の壁でも自然な映像を投影できるため、プロジェクターの利用範囲を広げる新技術として実用化を目指していく。
新技術は、NIIの佐藤いまり助手と、東京大学大学院情報学環の佐藤洋一助教授の研究グループが共同で開発した。
投影面の壁などを撮影するカメラをセットし、プロジェクターから光を投影して壁の模様の位置や色などを把握するキャリブレーションを行う。このデータをもとに映像をPCで処理し、模様の影響を取り除くように補正した画像を投影。映像に壁の模様が重なりあったりしない、自然な映像を見ることができる。
人間の視覚特性に着目し、人間が知覚しない色や輝度の誤差などを積極的に利用して補正を行う。従来提案されてきた方法では、壁の模様の一部の暗部に影響されて全体が必要以上に補正されてしまうなどの難点があったが、新技術では映像内容から模様の影響の大小をその都度判断するなどし、自然な画像を投影できるのが特徴だ。
現状では静止画のみ。キャリブレーションなどの作業に30分程度かかるが、その後は汎用PCで画像1枚あたり数秒で処理できる。今後処理速度を高め、動画への対応を目指していく。
プロジェクターの映像を自然に楽しみたい場合は専用の白いスクリーンが必要だが、新技術を活用すれば、寝室の天井に映像を映して映画を見たり、駅の壁に広告を映すといったことも可能になるという。
今後は動画への対応や、プロジェクターに組み込むなどの実用化を図っていく。佐藤助手は「新技術の原理は既に完成度が高く、プロジェクターメーカーなどと取り組めば実用化は早いのでは」と期待している。
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