「安易なコンテンツ流通」より「まず文化の保護を」――権利者団体が提言
権利者団体は、著作権関連の法改正を働きかける経済界などの動きに反論し、「法制度は従来のままでもコンテンツ流通は阻害されない」と主張した。
日本レコード協会や日本文芸家協会など17団体で構成する「著作権問題を考える創作者団体協議会」は5月16日、デジタルコンテンツの流通に関する提言を発表した。
コンテンツ流通を簡単にするため、法改正を働きかける経済界などの動きに反論。「最近、コンテンツの適正な保護よりも安易な流通を図ろうとする意見が多い」とし、「デジタルコンテンツ流通には、文化の保護をまず考えることが必要」だと主張した。提言は、17日、文化庁に提出する。
過去のテレビ番組などのコンテンツをネット配信するためには、全ての権利者から個別に許諾を得る必要がある。日本経団連は、2月に政府の経済財政諮問会議に提出した提言で「手続きコストが高いため、コンテンツの多くが死蔵されている。コンテンツを簡便な手続きで再利用できるようにするなど、流通を促進させるための法制を2年以内に整備すべき」と主張している。
これに対し提言では「利用の手続きがわずらわしいからといって、著作権者の権利を制限しては、文化芸術の発展にとってもゆゆしき事態」と指摘。「著作者は、著作物の流通を妨げるようなことは基本的にはしたくない。再利用も、条件を守ってもらえるならいつでも許諾する」とし、法制度は従来のままでもコンテンツ流通は阻害されないと反論している。
同協議会は、著作権者の情報を整備し、簡便に検索できるポータルサイトの構築に取り組んでおり、これが完成すれば、著作物の再利用が容易になると主張している(関連記事参照)。
「膨大な著作権者の情報をデータベース化するのは困難ではないか」という指摘に対し、協議会の代表で作家の三田誠広氏は、「今は1億総クリエイターの時代。確かに膨大なネット関連コンテンツや自費出版物のデータベース化は困難だ。しかしJASRAC(日本音楽著作権協会)や文芸家協会に登録されている著作者のデータベースは確実に作れる」と語った。
三田氏はさらに「きょう午前中に文化庁で小委員会があり、著作権を登録制度や意思表示制度についても意見交換がされたが、データベースを作れば登録制度と同じ機能が果たせる」と主張。「日本経団連の主張も、著作物を自由に使った後に報酬を払えばいいと言ってるようなものだが、その考えは著作権に関する国際条約・ベルヌ条約に違反する。著作物を利用した後にお金を払うような本末転倒なシステムも必要ないし、著作権の一括許諾システムで十分だ」と語った。
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