薄くて曲がるフルカラー有機EL 有機TFT駆動で世界初・ソニー
ソニーが有機TFTで駆動する有機ELディスプレイで、世界で初めてフルカラー表示に成功した。薄いプラスチック基板上に形成できる技術も開発、曲げられるフルカラー有機ELディスプレイを実現する。
ソニーは5月24日、有機薄膜トランジスタ(有機TFT)で駆動する有機ELディスプレイで世界初のフルカラー表示に成功したと発表した。通常の有機ELディスプレイはガラス基板を使うが、プラスチック基板上にも有機TFTを形成できる技術も開発し、薄くて軽く、曲げられるフルカラーディスプレイが可能になったとしている。
試作したディスプレイは2.5インチ。解像度は120×160ピクセル(80ppi、画素ピッチは318μメートル)で、1677万色表示に対応する。パネルは最厚部で0.3ミリと非常に薄く、ドライバなどを除いた重さも1.5グラムと軽い。
フルカラーで高精細に表示するためには画素を微細化する必要がある。新技術では、有機EL素子の発光層をTFTの上面に配置し、画素同士の間隔を狭くできる「上面発光方式」を採用。この素子を駆動する有機TFTの微細加工プロセスでは、溶媒を使わずに半導体層を微細加工する新たな集積方法を開発。独自の電極構造や絶縁膜の全有機化などにより、有機TFTの特性を向上させるなどし、プラスチックフィルム上で曲げた状態でも表示できるフルカラー有機ELディスプレイの開発に成功した。
ソニーは次世代のフラットパネルディスプレイ(FPD)として有機ELの開発に力を入れており、年内には小型のテレビ製品を発売する計画。新技術は、薄くて軽くやわらかいなどの特徴を持ったエレクトロニクス製品の実現につながるとしている。
研究成果は、米国で開かれるディスプレイ関連学会「SID 2007 International Symposium」で発表する。
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