「コピー10回、妥協の産物だが歓迎」――Intel著作権担当者
「日本のコンテンツ保護は厳しすぎる」と語っていたIntelの著作権担当者が、地上デジタル放送のコピー回数緩和について前向きに評価。ただ「消費者は自由を求めている」とし、コンテンツの自由度上げる取り組みを進めたいと話す。
「コピー10回は妥協の産物だが、コピーワンスよりは自由。歓迎したい」――米Intelで著作権関連業務を担当するジェフリー・ローレンス氏が8月31日に来日し、デジタル放送のコピー回数制限緩和についてこんな見方を示した。「デジタル化でアナログ時代よりも利便性が低下すれば、消費者から拒否される」とし、著作権を守りながらコンテンツの自由度を上げるため取り組みを行っていきたいという。
同社は、PCだけでなく家電やポータブルデバイスなどさまざまな機器に同社製品や技術を盛り込み、相互にネットワークでつなぐ「デジタルホーム」を推進中。コンテンツ保護規格DTCP-IP(Digital Transmission Contents Protection over IP)の策定にも関わるなど、多様な機器間でコンテンツがやりとりできる環境作りに注力してきた(関連記事参照)。
「デジタル時代のユーザー経験がアナログ時代よりも劣っていては、ユーザーに拒否されてしまう」――ローレンス氏は繰り返す。「デバイス間でのコンテンツ移動など、アナログ時代にはできていたことは、デジタル時代でも可能にしていくべきだ」
その観点から、地上デジタル放送のコピー回数制限が1回から10回(HDDに1回+1世代コピー9回)に緩和される動き(関連記事参照)を評価する。「コピー10回は妥協の産物ではあるが、コピーワンスよりも自由で、デジタルライフスタイルの可能性が広がる。歓迎したい」
妥協の産物――コピー10回は消費者にとっての満額回答ではないと見る。「アンケート調査などを見ても、コピー10回では足りないという人はいる。消費者は自由にコピーできる環境を求めているから、本来は米国のように、コンテンツに暗号化技術を付加した上で、対応機器なら自由にコピーできるEPN(Encryption Plus Non-assertion)の採用が望ましい」
「ソフトウェアCAS」で地デジ機器をカード不要に
地上デジタル放送対応機器を増やすため「ソフトウェアCAS」の採用も提唱する。地上デジを視聴する際、現在は放送の暗号を解除するための「B-CASカード」が必要。ソフトCASはこの役割をソフトウェアで行う技術だ。カードスロットなどが不要で、テレビやチューナーだけでなく携帯機器などにも実装可能。ハードよりもコストも低いという。
ただ「ビジネス上の問題」で実装が進んでいないという。「現在B-CASカードをサポートしている(放送局などの)企業のビジネスが変わってしまうため、実装が進まない。2008年ごろの実装を目指したい」
IP再送信は「放送局のビジネス広げる」
デジタル放送のIP再送信も推進し、さまざまな場所やデバイスで放送コンテンツを視聴できる環境を整えたいと語る。「放送局にIP再送信を理解してもらうには、ビジネスの可能性を示すことが必要だろう。世界には日本のコンテンツを見たい人がたくさんいる。ビジネスチャンスにつながるはずだ」
「何かを変えることは最初は脅威かもしれないが、きっと魅力を高めるものになる。ユーザーやコンテンツプロバイダーから何かを取り上げるのではなく、チャンスを広げていきたい」
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