Yahoo!やニフニフでも「退却ー!」――やわらか戦車が“ポータル横断”
ライブドア発「やわらか戦車」がヤフーやニフティに進出する。オープン化の流れの中、強力なコンテンツは、ポータルの壁をやすやすと越える。
「退却ー!」でおなじみのFlashアニメ「やわらか戦車」が“出身地”のlivedoorを離れてポータルを横断する。9月21日発売のリミックスCD「やわらか戦車-REWORKS-」のプロモーションの一環で、Yahoo!JAPANや@nifty、gooなど、ポータルとしてはlivedoorのライバルに当たるサイトにも、13日から順次、動画などのコンテンツを提供。各社の協力を得て広く告知していく。
「Yahoo!JAPAN 動画」「BIGLOBE Music」でプロモーションビデオ(PV)動画を公開するほか、YouTubeにも動画を公開して「ニフニフ動画」でコメントコンテストを開催。「楽天ブックス」は特集ページを設置してCDやDVDの販売ページを拡大する。gooの携帯電話向けサイト「gooミュージック&ビデオ」でも動画を配信する。
「どこに話を持ちかけても、断られなかったんです」――CD発売元で、やわらか戦車の版権管理などを行うファンワークスの高山晃社長は言う。背景には、強力なコンテンツへの強いニーズと、Web業界全体のオープン化の流れがあるようだ。
ネット発だが「絵本のようにゆっくり育てたい」
やわらか戦車は、個人Flashアニメ作家「ラレコ」さんが2005年に「livedoor ネットアニメ」(ネトアニ)で発表し、「戦車なのに柔らくて弱い」「常に退却している」というぶっ飛んだ設定とキャッチーな歌で人気が高まった(関連記事参照)。
ぬいぐるみなどグッズも好調に売れており(関連記事参照)、CD化の話も早くからあったが、シングル化は断ってきたという。
「ヒットチャートに載せたくなかった。すぐに消費され、忘れられてしまうキャラクターではなく、絵本のキャラのように、何年もかけてじっくりと育て、長く愛されるキャラクターに育てていきたい」(高山さん)
リミックスアルバム「やわらか戦車-REWORKS-」(1890円)は、サエキけんぞうさんなど多彩なアーティストにアレンジしてもらった曲を中心に7曲を収録した。“やわらか戦車らしさ”にこだわってじっくり作り込み、「やんちゃ」「面白い」をキーワードに曲を選んだ。
販売目標は1万5000枚とやや控えめ。「あまり盛り上げすぎると失速するのも早いから」(高山さん)とあくまで慎重だ。
堀江社長時代には考えられなかった「ポータル横断」
「livedoorのドメインにこだわらず“ネット発のアニメ”として売り出したい」――ライブドアエンタメグループプロデューサーの辻勝明さんは、ポータル横断プロモーションを企画した背景を話す。「ヤフーに追いつけ追い越せの時代なら考えられなかったが……」
堀江貴文前社長時代、ライブドアは自社ポータルへの集客を最優先していた。だが今年4月からの新体制下では自社ドメインにこだわらない戦略に転換。他社にも積極的にコンテンツ提供するなどオープン化を進めてきた。「1社だけで囲い込んでも仕方ない、という流れが社内にある」(辻さん)
他社もオープン化を進めている。ヤフーは「ソーシャルメディア化」を掲げ、他社サイトとの連携を急拡大中。ニフティやgoo(NTTレゾナント)もAPI公開を進めるなどオープン化戦略を採っている。「オープン化はWeb業界全体のテーマだろう」(辻さん)
各社とも無償のプロモーション協力だが、担当者がそれぞれの媒体の特性をいかしたプロモーション案を積極的に考えてくれたという。やわらか戦車ファンの担当者が多かったことに加え、Webは恒常的なコンテンツ不足。ページビュー向上や関連コンテンツ販売につながる人気コンテンツを求めていた――という事情もありそうだ。
特設ページからは、各社のプロモーションサイトにリンクを張っている。「livedoorからトラフィックが外に出て行くことになるが、出て行っても、やわらか戦車ファンは必ず帰ってきてくれるから」(辻さん)
CD発売を記念し、サエキけんぞうさんなどを招いたパーティを、9月20日午後7時から「六本木スーパーデラックス」(東京都港区)で開く。入場料は前売2000円、当日2500円。別途ドリンク代700円が必要。チケットはWebサイトで販売中。
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“新生”ライブドアが始動した。ポータルとデータセンターを軸にした本来のネット企業に回帰し、地道に営業しながら次世代のネットを模索。世界に通用する新サービス構築に挑む。
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