「笑顔度対戦」「手がリモコンに」――画像認識、最前線:CEATEC JAPAN 2007
CEATECで、画像認識技術を活用した「笑顔を競う真剣勝負」が注目を集めている。技術そのものだけでなくアプリケーションの発想や“見せ方”が、技術の勝敗を分ける鍵になる。
「自然な笑顔で!」「もっと笑わないと負けちゃう」――10月2日に開幕したエレクトロニクス・IT関連の見本市「CEATEC JAPAN 2007」(千葉・幕張メッセ)で、笑顔を争うし烈な戦いがくり広げられている。オムロンの「リアルタイム笑顔度測定技術」を活用した「ベストスマイル決定戦」だ。
カメラで撮影した顔画像をリアルタイムで分析し、笑顔の度合いを%で表示。一定時間内の“平均笑顔度”を競い、勝った方がニンテンドーDSをもらえるという“笑顔の真剣勝負”だ。
記者は勝負には参加できなかったが、笑顔度判定を実際にやってみた。口角を少し上げるくらいだと70%前後で、作り笑顔だとばれてしまったよう。口角を思いっきり上げて笑ってみると100%に上昇したが、少しまゆを動かすだけで笑顔度は変わるため、100%を維持するのは難しい。みけんにしわを寄せて少ししかめっ面をしてみると、一気に20%に低下した。
同技術は、カメラで読み取った2次元の顔画像を、あらかじめ用意した顔の形状の3Dモデルとマッチングして分析。口角が上がる、目尻が下がる、しわができる――といった表情の違いを読み取り、その笑顔度を顔データベースと照合して判定する。データベースは、数千枚の顔写真を人の目で「笑顔」「笑顔ではない」などと評価して作成した。
プログラムサイズは約46Kバイトとごく小さく、コンパクトデジタルカメラにも搭載できる。デジカメで「最高の笑顔の瞬間」を撮影するといった用途のほか、接客業の人が店に出る前に自分の笑顔を確認したり、コミュニケーションロボットに搭載して人の表情を認識できるようにしたり――といった応用例を想定している。
Cellの技術で「手のリモコン」
顔認識技術を活用したデモは、東芝のブースでも行われていた。カメラで撮影した顔画像を3Dで認識し、メイクや髪型をリアルタイム合成。顔の動きに追従して動かす――そんな高負荷な処理が、ノートPCで高速にできる、というデモだ。技術の鍵は、Cellの技術を活用したメディアストリーミングプロセッサ「SpursEngine」だ。
SpursEngineは、映像処理が得意なプロセッサコア「SPE」を4基搭載(Cellには8基搭載)。高負荷な映像処理をノートPCのスペックでも行えるようにした。デモでは、自分の顔にピンクのかつらをかぶらせたり、ペインティングをした上で、その顔を自分の頭の動きに追従させてリアルタイムに動かせる。
SpursEngineを活用した体験デモ展示はもう1つある。「手がリモコンになるシステム」だ。DVD再生中にカメラに向かって手を差し出せば、手の形を3Dで認識。グーなら再生メニューを表示し、パーなら再生・停止などの操作ができる。
テレビのチャンネルを変えたい時などに、リモコン見つからなかったり遠くにあって取るのが面倒――そんな時に便利そうな技術だが「精度がまだ低い」(説明員)らしく、真っ白の壁を背にしてカメラのど真ん中に手を映さないと、正確に認識できないという。
「この程度の感動しかしてもらえないのか」と説明員
「SpursEngineでかなり高度な映像処理をしているのだが、デモなどでそのすごさを伝えるのが難しく『この程度の感動しかしてもらえないのか』とがっかりすることもある」――説明員は苦笑する。
東芝はこの技術を、ブース2カ所で大々的に展示していたが、集まる人は「ベストスマイル決定戦」より少なかった。
リアルタイム処理ではないが、顔を認識して動かせるシステムは「MotionPortrait」」などで実現されているほか、手の位置を2次元で検出して楽しめるアプリケーションとしては「EyeToy」(2004年発売)などがすでにあることを考えると、SpursEngineのデモは処理の仕方はまるで違うとはいえ、“見かけ上”の目新しさに欠ける面もある。非常に負荷が高い3次元CG処理をノートPCでもリアルタイムにやってのけるという、Cellの“すごみ”を表現できるアプリケーションもハードと同時に求められそうだ。
デモではAVノート「Qosmio」にSpursEngineを搭載していたが、実際に同プロセッサ搭載のQosmioを発売する計画。CEATECのデモを通じ、アプリケーションの可能性を探っている。
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