ネットユーザー団体「MIAU」設立 まず「ダウンロード違法化」反対へ
ネットユーザーの声を集約し、政策提言などを行う団体が設立された。まずは「ダウンロード違法化」に反対するパブリックコメントを提出。「ダビング10」「著作権保護期間延長」についても、反対意見を訴えていく。
ネットの声を実社会に届けたい――ネットユーザーの意見を集約し、政策提言などを行う任意団体「インターネット先進ユーザーの会」(Movements for Internet Active Users:MIAU)がこのほど設立された。いわゆる「ダウンロード違法化」など著作権法関連の動きについて、ネットユーザーの意見をまとめ、パブリックコメント提出などで意見を表明していくほか、ネットユーザーが意見表明するためのサポートを行っていく。
MIAUは「『ITを応用すればより自由で幸福な社会を作ることができる』と考える人の声をまとめ、ITがもたらす価値を実社会に伝えたり、ユーザーの声を代弁する活動を行う」としており、発起人は、IT・音楽ジャーナリストの津田大介さん、法政大学の白田秀彰准教授、AV機器評論家・コラムニストの小寺信良さん、映像専門大学院大学の中川譲助教など11人。
ネットユーザーが関わるさまざまな問題について取り組むが、当面は著作権関連の活動に注力する予定。まずは「違法動画・音楽をアップロードしたサイトからのダウンロードを違法化しよう」という動きについて、11月15日まで募集されているパブリックコメントで反対意見を表明しつつ、一般ユーザーが意見表明する支援をしていく。
この問題について議論してきた文化審議会著作権分科会の私的録音録画小委員会がまとめた中間整理には「情を知って」(違法動画・音楽と知って)いた場合は違法とすべきという意見が載ったが、MIAUは「『情を知って』いたかどうかの正確な判断は不可能」「音楽や映像だけでなく、画像やテキストにも規制が及ぶ恐れがある」などといった理由から反対する。
一般ユーザー向けには、パブリックコメントを書きやすくするひな形を、Webサイト上で提供する。ひな形は来週中にも公開予定で、ひな形をベースに書いてもらったパブリックコメントをMIAUあてに提出してもらい、まとめて印刷してMIAUから文化庁に提出する。
小寺さんは「私的録音録画小委員会は、補償金制度について議論するはずが、補償金の問題は先送りになり、ダウンロード違法化について議論された。インプットとアウトプットがずれている。議論自体が無効ではないか」と問題提起する
さらに「ダビング10」「コピー9」などと呼ばれている、デジタル放送の新録画ルールについて、「孫コピーできない仕組みはユーザーにとって不利益」などとして反対し、解決策としてDRMのフリー化や、EPN(Encryption Plus Non-assertion)の採用などを提言していく。
また「著作権保護期間を著作者の死後50年から70年に延長しよう」という動きにも反対。この問題について検討してきた「著作権保護期間の延長を考えるフォーラム」などの議論を見ながら、活動内容を検討していく。
「名無し」の意見を代弁したい
「ネットにいる一般の人の意見を無視して政治が進んでいる」(白田准教授)――例えば、違法コンテンツのダウンロードの違法化や著作権保護期間延長などは、ネットユーザーから強い反発の声が上がっているが、法改正の検討現場にはその声は届きにくい。「ネット関連の問題に対処する際『規制を強化しよう』という動きになりがち」(津田さん)
MIAUはネット上の匿名ユーザーの声を集約し、責任を担保して社会に届けていく役割を引き受ける。同時に、議論のベースとなる知識や情報を提供し、ネットユーザーが意見を形成する手助けをしていく。「ユーザーを1つの意見に誘導するつもりはない。論拠のない議論に論拠を与えたり、『ソース』を提示したりして、ネット上の意見を整理したい」(白田准教授)
インターネット「先進」ユーザーの会という名にしたのは、「全ネットユーザーの声を代弁できるとは思っていない」(津田さん)ため。発起人はそれぞれ、ネットの“空気”を知るヘビーユーザー。メーリングリストなどでもユーザーの意見は吸い上げていく予定だが、何千万人という国内ネットユーザー全てを代表できるわけではない。
「ネット全体を代表するような統一的な組織にするつもりはない。異なる意見を持つ人や、著作権法以外の分野が得意な人がいれば、別の組織を作って主張してほしい。こういった組織がたくさんできるといい」(白田准教授)
10月18日に開かれた会見の様子は「Ustream.TV」でストリーミング中継されたほか、「ニコニコ動画」「YouTube」に後日アップロードする。
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