「ソニー製品の良いところ引き出す」――動画共有「eyeVio」の狙い
iTunesとの組み合わせで魅力が高まるiPodのように、ソニー製ハードの「良いところ」を引き出すサービスを――ソニーが後発ながら今あえて動画共有サイトを開設した背景には、そんな狙いがあるという。
「iPodはiTunesと組み合わせることで魅力的な1つのサービスになる。ソニーにもハードだけでなく、ハードの良いところを引き出すサービスが必要」――ソニーが4月に開設した動画共有サイト「eyeVio」は、そんな狙いで作られたという。現在の投稿数は1日当たり数百とまだまだ発展途上。ソニーとして初めて、iPodに正式対応させるなど、他社製品にも開かれたオープンな仕組みで活性化を図っていく。
eyeVioは、投稿した動画をFlash(flv形式)で公開し、他ユーザーと共有できる共有サービス。プライベートな映像を家族や友人などと共有し、コミュニケーションしてもらうための媒体――という位置付けで、閲覧できるユーザーを限定する機能も装備した。投稿動画の約4割が、ユーザーの日常を撮影したものだという。
ハードとの連携が強みだ。AVC形式によるダウンロードが可能で、ActiveXコントロールを使ってウォークマンやPSP、ソニー製携帯電話に直接ダウンロードできる。iTunes経由でiPod(第5世代)に動画をダウンロードすることも可能だ。
ネット対応テレビでの閲覧を想定し、DVD画質並みの投稿・再生にも対応した。今年度中にはHD画質の再生にも対応する予定で、11月に発売するネットワークTVボックス「BRX-NT1」を液晶テレビ「BRAVIA」につなげば、リモコンボタン1つでeyeVioの動画を再生できるようになる。
「スペック以上の体験を」――YouTube以前から企画
「ブログブームで個人が情報発信する力を付けてきた。次は動画を使って個人がコミュニケーションする時代が来る」――ソニーグループ向けにブログシステムを構築していた同社ネットメディア開発室の本間毅チーフプロデューサーがeyeVio開発に取りかかったのは、YouTubeブームより前の2005年だった。
「テレビやDVDレコーダー、PSP、ビデオカメラなど、ソニーは映像を撮影・再生する製品を作っている。撮影から視聴までをつなぐトータルなサービスが提供できれば、『感動を共有する場』を提供でき、スペックや価格以上の魅力を引き出せる」
eyeVioでは、プライベート動画を共有したり、動画をブログに貼り付けるなどし、動画をきっかけにしたコミュニケーションが生まれているという。「eyeVioによってソニー製品の“体験価値”が上がれば販売の活性化にもつながる」と本間さんは期待。年末までには動画にコメントを投稿できる機能を追加し、コミュニケーションのさらなる活性化を狙う。
ソニー初の「iPod正式対応」
「ソニー以外の製品にも対応するかどうか――eyeVioのポジショニングに苦労した」と本間さんは打ち明ける。「eyeVioをより多くのユーザーに使ってもらえるメディアにしたい」と考え、ソニーとして初めて、iPodに公式対応させたという。今後も他社製品に柔軟に対応していき、サイト活性化につなげていきたい考えだ。
「自らDRMを作れる」ソニーがクリエイティブ・コモンズ採用
投稿した動画には「クリエイティブ・コモンズ」(CC)ライセンスを設定でき「営利目的の2次利用許可」「ダウンロード公開」などを選べる。「ソニーは自分でDRMを作れる会社。サービスにもDRMを付けようという方向になりがちだが、ユーザーのプライベート動画にDRMは必要ない」
だがeyeVioを使って公式コンテンツを配信する企業などもあり、完全著作権フリーにするわけにもいかない。解決策として選んだのがCCだ。「CCはDRMと著作権フリーの中間にあるもので、ユーザーにとって使い勝手がいい」
動画は24時間監視し、他人の著作権を侵害するなど、違法な内容の場合は削除したり、投稿者にメールで警告するなどし、安心してコミュニケーションできる場を保っていく。
単体でビジネス化へ
eyeVioの収入源は広告だ。バナー広告や動画広告を載せるほか、企業が有料で動画を載せられる「公式チャンネル」を開設してもらう、といった手法で利益をあげていく。「eyeVioを“おまけ”のサービスではなく、ビジネスとして成立させたい」
ウォークマンやPSPなど、eyeVioから動画をダウンロードできるソニー製品のプロモーションにもつなげていきたい考えだ。
まずはサイトの利用者を増やし、認知度を高めるのが課題だ。クリエイターが映像作品を発表するイベントなどで活用してもらうほか、ソニー製品にeyeVioのパンフレットを同梱する――といったことも検討する。
また、静止画にBGMを組み合わせて動画を作成してくれる無料ソフト「x-Pict Story for アイビオ」を利用してもらい、動画カメラを持っていなくても投稿できるようにするなど、同社の技術力をいかして投稿のハードルを下げ、サイト活性化につなげていきたい考えだ。
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