世界最速のスーパーコンピュータ開発競争でIBMなどの各社に何年も後れを取っていたNECが、毎秒839兆回の演算を処理できる新型マシンで勢力奪還を目指している。
NECの10月25日の発表によると、同社は東京本社で、浮動少数点演算性能839T(テラ)FLOPSのスーパーコンピュータ「SX-9」を披露した。このスーパーコンピュータには、最高102.4GFLOPS(毎秒1024億回)の単一コア演算性能を持った新開発のCPUが使われている。
Associated Pressの報道によると、まだSX-9の正式なベンチマークは実施されていないが、最高性能を発揮できれば、米エネルギー省のローレンスリバモア研究所にあるIBMの「Blue Gene/L」を上回る。Blue Gene/Lの性能は280.6TFLOPSで、現在のスーパーコンピュータTop500ランキングで首位に立っている。
北米では、ネバダ州リノで11月10日に開幕するスーパーコンピュータの展示会SC07でSX-9が初披露される。しかしSX-9がIBMから首位の座を奪ったとしても、一時的なものになりそうだ。IBMとSun Microsystemsは現在、1P(ペタ)FLOPS(毎秒1000兆回)の達成を目指すマシンを開発中だ。
この1年で、スーパーコンピュータをめぐる競争は様変わりし、性能が劇的に向上した。2007年に発表されたスーパーコンピュータ500台の新しいランキングでは、100TFLOPSを突破したマシンが3台あったが、1年前のランキングで100TFLOPSを達成していたのは1台のみだった。
現在のランキングはIBMのスーパーコンピュータが上位10台のうち6台を占めているが、NECはトップ10入りすることで地位向上を狙う。現在のランキングでNECは、AMDのOpteronプロセッサを使い、Sun製サーバで組み立てたコンピュータクラスタで14位につけている。
地球シミュレータセンターにあるNECのスーパーコンピュータはランキングで20位となっている。このランキングはマンハイム大学、テネシー大学、ローレンスバークリー国立研究所によって編さんされている。
SX-9を構成する各ノードには、それぞれ最大16個のNEC製新型CPUが搭載できる。839TFLOPSを達成するため、NECは計512ノードで8192個のCPUを搭載できるマシンを組み立てた。
発表資料によると、NECは気象、航空宇宙、環境、流体解析などの各種研究プロジェクトでSX-9の利用を見込んでいる。
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