「HD DVD-Rが売れなくなっても困らない」 「HD Rec」が仕掛ける「新しい競争」
HD Rec対応レコーダーで「普通のDVDで安価にフルHD保存」という「新しい競争原理」を持ち込もうとする東芝。仮にHD DVD-Rが売れなくなっても「困らない」という。「BDは困るかもしれないが」という東芝の主張は。
現行DVDをHD DVD-VRでフォーマットし、MPEG-4 AVCでフルHDを記録できるようにする「HD Rec」に対応した「RD-A301」を東芝が年末商戦に投入する。ユーザーが安価なDVD-Rに流れ、次世代メディア普及のブレーキになる可能性もあるが、東芝は「Blu-rayは困るかもしれないが、HD DVDは困らない」という。
容量などを競ってきた次世代DVDレコーダー戦争だが、東芝がHD Recで仕掛けるのは「既存の安価なDVDメディアにフルHD保存」という「新たな競争原理へのシフト」だ。
東芝デジタルメディアネットワークス社DAV商品企画部 商品企画担当 グループ長の片岡秀夫氏は「消費者にとって大切なのは、フルHD番組を安価に残すこと」と指摘し、新しい競争原理の導入で「消費者不在の競争から脱却する」という。
HD Recは「普通のDVD」にもフルHD保存できるようにする技術で、東芝主導でDVDフォーラムに提案して策定された。BD陣営は同様に「AVCREC」を策定したが、両規格に互換性はない。
片岡氏によると、安価な現行DVDによるフルHD保存というソリューションを導入しても「HD DVDは困らない」。というのは(1)DVD-R/RW/RAMはDVDフォーラムの規格だから困らない、(2)HD DVD-RはDVD-Rと同じ製造ラインを毎日切り替え可能な規格であり、つまり4.7G/8.5Gバイト(DVD)と15G/30Gバイト(HD DVD)は「単なる容量違い」になる──ためだという。
東芝が強調してきた、HD DVDメディアが現行DVDと同じラインで製造できるというメリットがここで生きてくるという。対応機器が普及すればコストダウンもしやすくなり、いずれHD DVD-Rも売れるようになる、という図だ。「HD DVDの参入しやすさというメリットが、HD Recで明らかになる」(片岡氏)
一方、BD陣営がAVCRECを導入した結果、ユーザーが現行DVDを利用し、BD-Rメディアが売れにくくなると、「BDは新規に製造ラインを作らなければならない規格のため、BDメディアのコストダウンは厳しくなる」という。つまり現行DVDへの安価なフルHD記録という「新たな競争」に持ち込めば、「BDは困るかもしれない」と東芝は見ているようだ。
「本格普及は600Gバイトで10万円」
「次世代DVD戦争を今年中に終わらせると言ったが、撤回する、もう少し長い目でHD DVDをプロモートしていきたい」と話した藤井美英上席常務(東芝デジタルメディアネットワークス社社長)によると、新製品の目玉はHD Recと価格。「期待の値段で出す」と、実売予想価格は当初から10万円を切る可能性もある戦略モデルだ。
ただ、「次世代レコーダーをどういう層に普及させていくのかは難しい」とも認める。大容量HDD搭載のDVDレコーダーを購入して間もないユーザーも多いと見ており、買い替え需要はそうすぐには喚起できないとも見ている。
RD-A310のHDD容量は300Gバイトだが、「600Gバイトで10万円切るのが本格的な普及の時期では。今回は300Gバイトだが、ヘビーユーザー向けに600G〜1Tバイトで早く出していきたい」と語った。
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