Googleは壁に向かってたくさんの物を投げ、そのうち幾つかはしっかり張り付いた物もある。
もし、ロケーションベースサービスといわれる市場が指し示すものがあるとしたら、携帯電話の基地局を使ってユーザーの位置を調べ、携帯電話の地図と検索サービスを強化するというGoogleの計画がそれなのかもしれない。
しかし、同社の基本的なアプローチ、そして携帯端末の小さな画面が広告に埋めつくされることに対する疑問から、Googleのサービスが期待に応えられないかもしれないという非常に現実的な可能性が浮上する。
Googleがこの分野に新規参入したことに意外性はない。モバイルとロケーションベースサービスは、ハイテク業界で最も注目の分野と目されているからだ。
M&Aコンサルタント会社Montgomeryのジョン・クーパー氏は11月27日、調査会社451 Groupの年次顧客カンファレンスで講演し、今後数年のM&Aで最大級の魅力を持つ分野としてモバイルを挙げた。2007年末までに世界のモバイル端末出荷台数は11億2000万台に達し、ベンダーの関心はエンタープライズユーザーに向かうようになると同氏は予想している。
451 Groupのエンタープライズ向けモバイル担当、トニー・リッツォ氏によると、モバイルは「エンタープライズで2009年に普及点」に達し、2008年は「大きな飛躍の年」になる見通しだ。
SaaS(サービスとしてのソフトウェア)とモバイルが組み合わさり、「SsaA」、つまり「いつでもどこでも使えるSaaS(SaaS ―― Anytime, Anywhere)」が登場すると同氏は予想する。
Googleはほかでもなく、世界最大のSaaSプロバイダーだ。現在、同社はリッツォ氏の予想に従って成功を目指しているように見える。
しかしeWEEKへのメールでリッツォ氏は、Googleの「My Location」の効率性について態度を明らかにしていない。このサービスは「非常に基本的な意味で、ある種役に立つものではある」としぶしぶながら認めている。もっとも「(悪ければ)3マイル(4.8キロメートル)という精度では誰にとってもたいして役に立たないだろうが」。
「ユーザーが例えば移動中の車内にいる場合、携帯電話基地局でどの程度うまく位置を特定できるのか知らないが、できたとしても、GPS機能の代替にはまずならないだろう」と同氏は記している。
リッツォ氏はまた、画面が大きく広告を無視しやすいデスクトップPCやノートPCに比べ、表示面積が限られた携帯端末の画面では、Googleが配信する広告は邪魔になるだろうとも指摘する。
Googleが失敗知らずというわけではない。
Googleは2006年10月にWikiベンダーのJotSpotを買収した際、ソーシャルネットワーキングでの華々しいデビューが予想されていた。しかしまだ実現していない。おそらく今後もないだろう。451 Groupのアナリスト、キャスリーン・ライディ氏によると、GoogleでうまくいかなくなったのはWikiプロジェクトだけでなく、JotSpotの元従業員は現在、まったく別のプロジェクトに取り組んでいるという。
Googleほどの規模の重要企業なら、その気になればソーシャルソフトの分野で大手となることはまだ可能かもしれない。
ライディ氏は顧客カンファレンスの講演で、ITと企業家を対象に実施した調査の結果、Googleのソーシャルツールなら使うとの回答が18%に上ったことを紹介した。Googleは今のところソーシャルツールを何も提供していないにもかかわらず。これは、アル・ゴア氏が大統領選に立候補していないにもかかわらず、大統領候補に関する世論調査で3位になったのと同じようなことだ。
Googleは今回に先立ち、一連の印象的な発表を行っている。11月26日の週だけでも、サービスとしてのストレージを提供する意図をほぼ認めた。わずか3週間前にオープンソースベースのモバイルプラットフォーム「Android」を発表したのは言うまでもない。
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