日立、キヤノン、松下が液晶パネル事業で提携
日立、キヤノン、松下の3社が液晶事業で提携すると正式発表。日立傘下の製造会社を、キヤノンと松下がそれぞれ子会社化する。デジカメに載せる中小型パネルの内製化に弾みをつけ、PDP大手の松下は“保険”として液晶生産にも乗り出す。
日立製作所、キヤノン、松下電器産業の3社は12月25日、液晶ディスプレイ事業で提携することで基本合意したと正式発表した。日立の液晶パネル生産会社2社を、キヤノンと松下が子会社化する。投資負担を軽減したい日立と、カメラなどに搭載する中小型ディスプレイの内製化を進めたいキヤノン、プラズマ大手ながら液晶テレビ需要の拡大にも対応する必要があると判断した松下──の3社の思惑が一致した。
液晶分野では、21日に東芝とシャープが提携を発表したばかり。携帯機器向け、テレビ向けとも世界的に需要が拡大する液晶ディスプレイをめぐり、国内大手の再編が進む。
まず来年3月末までに、日立製作所の100%子会社で中小型液晶パネルを生産している日立ディスプレイズの株式を、キヤノン、松下が日立から譲渡を受けて24.9%ずつ取得する。日立の日立ディスプレイズ出資比率は50.2%になる。
その後、キヤノンが日立ディスプレイズを子会社化。日立ディスプレイズと松下、東芝が共同出資しているテレビ用液晶製造会社、IPSアルファテクノロジを松下が子会社化する方針。
東芝はシャープからのパネル供給を拡大する方針で、IPSアルファの全持ち株を松下に売却することで合意した。中小型パネルを生産している東芝松下ディスプレイテクノロジは「松下はマイノリティ出資であり、今回の提携はテレビが対象のため、問題はない」として東芝との合弁を継続する。
「SEDはやめない」──キヤノン
日立は、赤字を抱える傘下の液晶製造会社2社の経営権を委譲することで液晶事業を事実上縮小し、経営の体質改善につなげる。デジカメのキヤノン、薄型テレビの松下という安定的な供給先を確保した上で、生産力とコスト競争力の向上に不可欠な設備投資の負担も軽減できる。
この日の夕方に都内で開いた記者会見で、日立の古川一夫社長は「日立は長くパネルを手掛けてきたが、やればやるほど奥深い技術であり、1社で勝てる製品ではない」「高度な技術とグローバルな商品力を持つ3社の提携は最強のシナジーをうむ」と話した。
キヤノンはキーパーツの内製化を積極的に進めており、日立ディスプレズの子会社化で、デジタルカメラの背面ディスプレなどに使う中小型液晶の生産に参入する。
今月末には、有機EL製造機器を開発販売してきたトッキを子会社化。日立ディスプレイズの技術も合わせ、有機ELディスプレイの製品化を加速。自発光式による視認性の高さを生かし、高級デジタル一眼レフへの搭載を目指していく。
キヤノンは大型テレビ用にSEDの発売を目指しているが、特許に絡む訴訟で計画が遅れている。内田恒二社長は「SEDは訴訟の控訴審が行われており、現在は技術開発にまい進している。『今回の提携でSEDをやめるのでは』という心配は無用」と、55インチ以上の大型向けにSEDを投入する方針を改めて強調した。
松下の大坪文雄社長は「プラズマを中心に薄型テレビ市場に勝ち抜く戦略にいささかも変更はない。37インチ以上は、大型に強いプラズマで引っ張る」と強調する。2800億円を投じる新PDP工場も先月、兵庫県尼崎市で着工。「プラズマの生産計画に変更はない」(大坪社長)
ただ、大型テレビでも液晶のシェアが拡大する傾向もあり、「多様化したニーズに応えるため、液晶でも確固たる事業基盤を確立することが必要」と判断。「液晶でも垂直統合を実現する」としてIPSアルファを子会社化し、パネル生産にも乗り出す。
IPSアルファの新工場建設は松下が主導して進める。時期は未定だが、30インチパネルを効率よく生産できる第7〜8世代がターゲット。液晶製造設備を使える大型有機ELパネルへの将来展開も視野に入れる。
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