FAST買収でMicrosoftのGoogleとの戦いに新展開
MicrosoftはFast Searchの買収により、GoogleやIBMなどのライバルに新たな戦いを挑もうとしている。
米Microsoftが1月8日に発表したFast Search & Transfer(FAST)を12億ドルで買収する計画は、数十億ドル規模のエンタープライズ検索市場でリーダーの地位の獲得を目指す試みであるとともに、GoogleやIBMなどに対する挑戦でもある。
Microsoftのビジネス部門担当社長、ジェフ・レイクス氏は8日、エンタープライズ検索市場では、AutonomyやFASTなどが提供するハイエンドの専門的な検索技術か、GoogleのSearch ApplianceやIBMのOmniFindといった一般的なインフラ製品が顧客の選択肢となっていると述べ、こうした現状に憂慮を表明した。
こうした中では、社内のさまざまなニーズに対応できる検索技術のポートフォリオを整備しようとすると、顧客は異なるベンダーの技術を選んで組み合わせざるを得ないことになる。
「顧客は、検索ソリューションが社内に乱立してしまうことを望まない」と、レイクス氏は8日、アナリストや記者との電話会見で述べた。
Microsoftは自社の検索製品ラインを強化するハイエンド検索プラットフォームを追加するため、買収先としてノルウェーのFASTを選んだ。SharePointをより魅力的な生産性スイートにすることができれば、Microsoftにとって理想的な展開となる。
レイクス氏は、Fast Enterprise Search Platform(FAST ESP)を既存のよりローエンドのSearch Server 2008 Express、Microsoft Search Server 2008、Microsoft Office SharePoint Server 2007と組み合わせることで、Microsoftは企業におけるユニバーサルデータアクセスのための最も包括的なソリューションを提供できると語った。
さらにレイクス氏は、FASTの検索製品はSharePointやMicrosoftの補助的な検索製品よりも拡張性が格段に高く、数百万件どころか数十億件のドキュメントの検索に対応できると述べた。FASTの技術は、ユーザーがさまざまなデータ要素を基に精度の高い検索を行えるようにする。例えば、同社の技術が採用されているBest BuyのWebサイトでは、ユーザーはプラズマTVを検索する際、画面サイズや解像度に基づいて検索を絞り込むことができる。
米調査会社IDCのアナリスト、スーザン・フェルドマン氏は8日、eWEEKの取材に対し、FASTの製品は、データベース列の巨大な行列から成るインデックスアーキテクチャを備えているため、コンテンツだけでなくデータへのアクセスも強力にサポートすると語った。FASTの製品により、企業はMicrosoftのOffice、SharePoint、Outlook、SQL Serverといったアプリケーションで作成されたデータをインデックス化し、検索して取り出せる。
またフェルドマン氏は、FASTはWeb検索プロバイダーとしての実績があり(同社は2003年にWeb検索事業をOvertureに7000万ドルで売却した)、それが生かされている同社のエンタープライズ検索プラットフォームは抜群の拡張性を備えていると述べた。
Microsoftは買収後、FASTの技術を従来型のオンプレミス(自社運用型)製品として、および「ソフトウェア+サービス」(オンラインサービスとパッケージソフトの組み合わせ)として展開する計画だが、レイクス氏は、この計画がどのように進められるかは明らかにしなかった。
市場競争という面では、MicrosoftはFASTの買収により、エンタープライズ検索の市場リーダーと広く考えられているGoogleや、IBM、Autonomy、そのほかの小規模なベンダーと真っ向からぶつかることになる。
Gilbane Groupのアナリスト、リンダ・モールトン氏は8日付のブログ投稿で、Microsoftは思い切った手を打つ必要に迫られていたと指摘した。検索業界ではGoogleが最大手として君臨し、企業市場に深く食い込んできており、Microsoftが長年強みを発揮してきたコンテンツの作成および取得の分野にもじわじわと侵食しつつあることが背景にあるという。
「ハイエンド分野で広く導入されている技術を持つFASTを買収することで、MicrosoftはGoogleに正面から挑むことになる」とモールトン氏は述べた。
一部のアナリストは、MicrosoftのFAST買収をきっかけに、市場再編が進むと考えている。
「この買収を受け、ほかの大手ベンダーがハイエンドソリューションを自社開発する代わりに、その提供ベンダーの買収に目を向けるのは確かだ」とOvum Researchのアナリスト、マイク・デービス氏は調査リポートで述べた。「もちろん、大きなターゲットはAutonomyだろう。ただ、同社はまだ、独立企業として力を発揮していこうとしている」
GoogleやIBMがAutonomyの買収に動かなければ、OracleやEMCなどのデータ管理ベンダーが非構造化情報の増大に本格的に対応するため、英国のエンタープライズ検索大手である同社を傘下に収めるかもしれない。
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