音楽配信サイトに「適法マーク」 レコ協、「ダウンロード違法化」に布石
レコ協は、適法な音楽配信サイトに付ける「エルマーク」の運用を始めた。適法サイトを容易に見分けられるようにし、「ダウンロード違法化」の実現に向けた布石としたい考えだ。
日本レコード協会(RIAJ)は2月19日、レコード会社が許諾した正規の音楽配信サイトを見分けるためのマーク「エルマーク」の運用を始めた。ユーザーが適法配信サイトを見分けられるようにし、「違法着うた掲示板などからのダウンロード違法化」の実現に向けた布石にもしたい考えだ。
マークは、配信サイトのトップページとダウンロードページに表示。レコ協が音楽配信事業者から申請を受け、審査した上で適法と認められれば無料で発行する。
18日時点で、ドワンゴやレーベルゲート、ナップスタージャパンなど110社が運営する543サイトへの導入が決まっている。「iTunes Store」は含まれていないが、導入に向けて話し合いを進めているという。
今後は、国内の全音楽配信事業者(約120社)のサービスでエルマークを普及させたい考え。映画の配信サイトなどにもマークの導入を呼びかける。
マークが無断でコピーされるなどして違法サイトで使用された場合は、マークの商標権を持つRIAJが使用の差し止めを請求するとしている。
ダウンロード違法化へ布石
RIAJはこれまで、著作者に無許諾で動画や音楽をアップロードした「違法サイト」からのダウンロードを著作権法違反とすべきと、文化庁文化審議会著作権分科会の「私的録音録画小委員会」で訴えてきた。同委員会では「『違法サイトと知って』(情を知って)ダウンロードした場合」は違法とする方向で議論が進んでいる。
しかし「違法か適法か見分けがつかないサイトも多く、全ユーザーが犯罪を犯すリスクを負う」といった意見もユーザーなどから寄せられていた。RIAJは、マークを普及させることで違法サイトを容易に判別できるようにし、反対意見を封じ込めたい考えだ。
「“盗品”のダウンロード、本当に良いのか」
RIAJによると、携帯電話での違法ダウンロードが後を絶たないという。違法着うた・着うたフルの推定ダウンロード数は年間約3億9900万ファイルで、正規のダウンロード数(約3億2700万回)を上回るという。
「被害は深刻でレコード会社のビジネスが立ち行かなくなると危惧(きぐ)している」とRIAJの生野秀年専務理事は話し「“盗品”を堂々とダウンロードすることが本当に良いのか」と、改めてダウンロード違法化を訴えた。
RIAJの違法配信識別ワーキングチームの秦幸雄座長は「携帯の検索サイトと、ファイルを添付できる掲示板が普及したことで、違法な音楽ファイルのダウンロードが増えた」と説明。「違法なものを削除しても次々に出てきて、もぐらたたき状態。今後携帯の通信量が増え、PC用ネットサービスとシームレスになると、違法ファイルのダウンロードはさらに増えるだろう。今ならまだ間に合うとの気持ちで対策を進める」と話した。
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