「インベーダー」30周年で大人を再侵略 タイトーブランド一新
「インベーダーを軸に生まれ変わる」――タイトーは、インベーダーをブランド戦略の中心にすえる。中高年層にも“ゲーセン”を思い出してもらい、新たな顧客開拓につなげる。
タイトーは3月7日、4月からのブランド戦略の基軸に「スペースインベーダー」をすえると発表した。30周年を迎えるインベーダーをブランドキャラクターに採用し、“インベーダー世代”の親子に訴求。赤いインベーダーのロゴをゲームセンターの看板などにあしらい、コーポレートカラーも青から赤に変更する。インベーダーをモチーフにした家庭用ゲームやPCゲームも次々に投入する。
「アーケードゲームとの接点は、旧来のゲームセンターだけでなくていいはず」――同社の和田洋一社長(スクウェア・エニックス社長)はこう話し、「ゲーセンのフランチャイズ展開」を狙う。他業種の企業がゲームセンター事業に手軽に参入できるようサポートし、ゲーセンをコンビニのように身近にしていきたい考え。1978年のブーム当時、大人たちが喫茶店でインベーダーに夢中になっていたように、幅広い世代と接点を持ちたい考えだ。
ゲーセンはインベーダー中心でブランド展開
新ブランド戦略の中心は、ゲームセンター事業のてこ入れだ。これまで「TAITO INN」「TAITO STATION」「TiLT」「Little Fantasy」など多様なブランドで展開してきたゲームセンターを「タイトーステーション」に統一し、インベーダーのロゴをあしらった看板や制服を導入する。
直営店のクレーンゲーム筐体やユニフォームも、赤いインベーダーのロゴ入りデザインに一新。ゲームセンターへの「満足度」をボタンを押して投票してもらう専用筐体も導入する。「お客様にゲームセンターを育ててほしい」(和田社長)
オリジナルプライズも拡充。独自開発のプロペラ付き“ラジコンUFO”や、電子楽器「テルミン」のような演奏を楽しめる「テルミンミン」、「うそ発見器」など、「これまでにない発想のプライズ」(同社)を順次投入するほか、他社と協力し、インベーダーのデザインを取り入れた「ポストペット」や「どこでもいっしょ」のぬいぐるみなどを、ラインアップに加えていく。
インベーダーのライセンス展開も開始。食玩やアパレル、文具などに広く展開していく計画だ。
ネット上では、30周年記念サイトを開設。ニフティのブログサービス「ココログ」ではインベーダーテンプレートの提供を始めた。
ゲーセンのフランチャイズも
「ゲームセンター業界は閉じている」と和田社長は指摘する。「日本に“遊びの空間”は多いが、ゲームセンター運営は『初期費用がかかりそう』『難しそう』などと敬遠されがちだ」
同社は、他業界からのゲーセン参入を支援する計画。ゲームセンターのフランチャイズ(FC)展開を進め、運営ノウハウの提供やオペレーションのサポートなどを行っていく。新規投入するインベーダーロゴ入り筐体は省スペース型にし、喫茶店のような狭いスペースにも設置できるよう配慮した。
「コンビニエンスストアのフランチャイズ形態がなければ、われわれが雑貨や食品などを買うチャンスも減っていただろう」――FC化で、ゲームと顧客の接点を増していく狙いだ。
「ゲームはカニバらない」
インベーダーの世界観を活用したゲームは、マルチプラットフォームで展開する。すでに展開済みの携帯電話やニンテンドーDS、PSPに加え、Wii向けには年内に「スペースインベーダー ゲットイーブン 〜逆襲のスペースインベーダー〜」を発売。シリーズとして初めて、“インベーダー側”を操作して地球を侵略するタイトルだ。
PC向けのオンラインゲーム「スペースインベーダー世界大戦」も、4月からβ公開。世界中のユーザーと対戦できるゲームになるという。
「ゲームはカニバらない(食い合わない)と思っている。某社の方が、『Wiiによってゲームセンターに来る人が減った』とコメントしていたが、生活シーンによって選ばれるハードやコンテンツは変わる。プラットフォームが多様化し、家の中、移動中、外出先それぞれに合ったものを提供できる」
娯楽の多様化によって「可処分時間」の奪い合いが激化し、コンテンツ業界の成長は頭打ちになるという意見にも反論する。「人間の処理能力はもうちょっと優れていて、『ながら』ができる。ゲームは他コンテンツとも共存できる」
自由な発想で立て直したい
インベーダーは、1978年にタイトーが発売したアーケード型シューティングゲーム。日本中で大ブームとなり、「インベーダーハウス」と呼ばれるゲームセンターが乱立した。テーブル型のゲーム筐体(きょうたい)は喫茶店にも進出。100円玉を積んでプレイに没頭する人も多かった。
「インベーダーはイノベーションの象徴だ」と和田社長は言う。「大ヒットした初のゲームで、ゲームの世界にキャラクターが入ったのも初めて。テレビCMする予算もゲーム雑誌もなかったが、ラジオの深夜放送から口コミで広がった。喫茶店にも筐体があり、ゲームセンターに来ない人も巻き込んだ。既成概念に縛られない、自由な発想で作られている」
インベーダーの原点に立ち返ることで、同社のゲーム事業に自由な発想を取り戻し、立て直したい――和田社長はそんな狙いを語った。
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