アキバに集まるオタクは、年齢が下がるにつれてライトになっていく――そう分析するのは、秋葉原総合研究所社長の寺尾幸紘さんだ。
寺尾さんは、TVチャンピオン「アキバ王選手権」(2005年)で優勝。同社は東京・秋葉原の情報サイト「アキバOS」を運営するほか、同人専門の携帯向け電子書籍サイト「ドリマガ」を始めた。
オタク分析が得意という寺尾さんに、アキバとオタクの今を聞いた。
オタクはどんどんライトに?
寺尾さんは、オタクを4世代に分けてとらえる。第1世代(60年代生まれ)、第2世代(70年代生まれ)、第3世代(80年代生まれ)、第4世代(90年代生まれ)で、世代が下がるにつれて「ライトなオタクが増えている」という。
第1世代(60年代生まれ)は特撮好き。第2世代(70年代生まれ)までは、ネットがなかったため、情報収集は雑誌が中心だった。アニメなどの作品数もそれほど多くなかったため、作品ごとの知識が深いという。「宮崎勤事件の影響も受けているため、オタクと呼ばれることに抵抗がある」のがこの世代だ。
オタクは褒め言葉
第3世代(80年代生まれ)になると、ネットを活用して浅く広い知識を持つオタクが増えたという。寺尾さんもこの世代だ。「オタクと呼ばれることが、ほかの人とは違うという意味の褒め言葉になった」といい、第4世代(90年代生まれ)になるとその傾向はさらに強まるという。
「学校でアニメの話をするし、恋人がいるのも普通――それが第4世代。『ドリマガ』のようなオタクビジネスについても、第1・2世代には抵抗があるけど、第3・4世代にはそれがない」
では、寺尾さんは何オタクなのだろうか。「よく聞かれるんですが……アニメかな。そこから派生して、ゲームやライトノベル、コミックも好きです。第2世代なので、広く浅くという感じ。オタクを分析するのも得意です」
人は誰でもオタク
ライトなオタクが増え、オタク文化が広まっていると肌で感じるという。「ハルヒって何?――とオタクではない知り合いに聞かれたんです」と寺尾さんは驚いた様子で話す。電気通信大学に通う学生でもある寺尾さんは、学校で学生が「ニコニコ動画」について話しているのもよく耳にするという。
「車マニアもアニメマニアもオタク。CDをタワーレコードで買うのもアニメイトで買うのも、やってることは変わらない。メジャーかマイナーか、ちょっとした違い。アキバブームによって、人は誰でもオタクだという認識が広まった気がする」
ただ「オタクに対する誤解はまだある」と感じている。「メイド喫茶で“萌え”と口に出すオタクはいないのに、そうだと思い込んでる一般の方は多い。オタクには笑いを取ろうという気質があって、テレビ向けにわざと言ってるだけ」
「オタクとそうでない人を結ぶ架け橋になりたい」――秋葉原総合研究所がアキバOSやドリマガといったサービスを運営する理由だ。
オタクはちょっとおしゃれになった
電車男やメイド喫茶が話題になって以降、秋葉原がひんぱんにメディアに取り上げられるようになった。それに連れて、服装に気を遣うオタクが増えたという。
ジーパンにチェックシャツを合わせ、リュックサックを背負う――そんな定番のイメージは、ズボンがチノパンに、リュックサックがショルダーバッグに“マイナーチェンジ”したという。
「オタクのファッションは機能重視。同人誌を大量に買ったり、ノートPCを持ち運ぶから、かばんのサイズは大きいまま。秋葉原では歩き回ることが多いから、足元は以前と変わらずNew Balanceという人も多い。バンダナや指の出るグローブを付けた人はいませんね」
外国人にも日本のオタク文化を
アキバOSは、「アキバBlog」など秋葉原の情報サイトを真似て作った。アキバOSの特徴は、グルメ情報や地図を掲載し、秋葉原に詳しくない人が読んでも楽しめるようにしたことだ。
「0を1にするのは苦手だが、1を10にするのは得意。1から初めて今は3くらいかな」。3月中には中国語版アキバOSを立ち上げる予定だ。
「これまでも秋葉原の家電ショップに来る外国人はいたけど、最近はアニメショップで外国人を見かける。YouTubeにはニコニコ動画の作品がアップロードされ、外国人のコメントが付く。アキバOSでも、外国人に日本のオタクコンテンツを紹介したい」
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