文化庁「iPod課金=補償金拡大ではない」 JEITAと対立:私的録音録画小委員会(2/2 ページ)
iPodやHDDレコーダーなどへの課金を含む、録音録画補償金制度の改定案を文化庁が提示した。JEITAなどメーカー側は「補償金制度の拡大に向かっているようにしか見えない」と指摘。文化庁は「誤解だ」と反論した。
文化庁「誤解だ」
メーカー側のこういった疑問に対し、文化庁の川瀬真・著作物流通推進室長は「さまざまな誤解がある」と反論。「音楽CDや無料デジタル放送のダビング10については、補償金を存続させる方向にかじを切ったが、補償金は縮小し、ほかの方向に転換していく」と説明を重ねた。
川瀬室長によると、補償金でカバーする範囲として残した音楽CDとダビング10はあくまで例外。特にダビング10は「権利者側はコピーワンス+一定の制限という考え方は支持しているが、ダビング回数について、権利者の要請によって策定されたものとはいえないことが明らか。非常に特殊な過程を経てルールができた」と例外性を強調する。
「権利者の要請」という文言についても「権利者の当初の要請が100%成就しなくても、関係者間で合意があれば、『権利者の要請』となる」と説明。「逆に問いたいが、権利者の要請なしで勝手に著作権保護技術を作られることがあるのだろうか。懸念は分かるが、十分に意見を踏まえて制度設計を考えている」と述べた。
機器の指定方法については「現在は補償金管理協会などで内々でやってる議論を、透明性のある手続きの中で判断する」と、よりクリアな制度に移行することを強調した。
補償金の使い道、透明にすべき
IT・音楽ジャーナリストの津田大介委員は「補償金を続けていくのなら、(iPodのような)一体型機器を含めないと、制度的におかしい」としながらも、小委員会直前に各紙が伝えた“iPod課金”の報道を受け、消費者やユーザーの反応を調べた結果、「少なくない消費者が抵抗感・否定的意見を持っている」と話す。
「『iPodに購入したCDを入れてるだけなのに機器の価格が上乗せされて上がるのが嫌』という人もいるが、『ただお金を払うのが嫌』というわけではなく、補償金の使い道が不明確で抵抗感を持っている消費者が大多数。例えば、著作権の研究になんで補償金が使われる必要があるのか。ガソリン税の暫定税率問題で『道路整備という名目でマッサージチェアに使われている』感覚に近い。対象機器を増やし、財源を増やしていくなら、どういった形で補償金が増えているのかディスクローズし、消費者に納得できる形で行うべき」(津田委員)
主婦連合会の河村真紀子委員は「文化庁の提案について一定の評価はしているが、肯定はしていない」と話す。「課金対象の機器が増えるなら、コピーワンスやDRMがかかっているコンテンツなどはすべて除いた上で料率を計算すべき。そもそも消費者は、愛するコンテンツを作る人にダイレクトに確かな対価を届けたいだけで、それは補償金でなくてもいいはず。確かな方法が技術によって確保されていくのが理想」(河村委員)
実演家著作隣接権センターの椎名和夫委員は、補償金の使い道について「権利者団体は積極的にディスクローズしたい」と話した上で、「補償金の見直し議論はかなり時間がかかり、事実として、権利者が補償を受ける部分はやせている」と訴える。「録音録画小委員会の責任として、ひとまず議論を収束させることが重要では」
法学者も文化庁案に理解 「iPod課金」ほぼ決定か
委員の法学者からは、文化庁提案を「補償金縮小の方向に向かっている」と評価し、この方向で進めるべき――という意見が複数出た。
東京大学大学院の森田宏樹教授は「文化庁案の基本的なスタンスは、DRMの進展に従って補償システムを縮小するという方向と読める。JEITAなどが言う疑義や懸念は、どこをどう読むとそうなるのか。JEITAが質問を出すなどし、共通理解を作っていくべきだろう」と話す。
一橋大学大学院の土肥一史教授も「合意できそうなところを切り出して合意していくべきでは。『現在、補償金の対象となっていない機器からも対価を受けるべき』という結論が、将来出た場合、過去の2年間の補償は誰がするのか」と述べた。
元東京大学教授の中山信弘主査は文化庁に対し、JEITAなどの疑問に応えられる説明を、次回(5月29日)の会合までに用意するよう要請。次回会合で基本的な方向性の合意を目指すと述べた。
文化庁は、合意が得られ次第報告書をまとめ、補償金の対象機器や、違法録画・録音物のダウンロード違法化を盛り込んだ著作権法の改正案を作成する計画。早ければ7月の終わりか8月までに報告書をまとめ、早期の法改正を目指す。
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