MicrosoftのYahoo!買収断念が意味するもの(2/2 ページ)
MicrosoftとYahoo!の攻防は当面、終わった。両社と顧客、業界にとってそれは何を意味するのか。
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MicrosoftはYahoo!買収を断念したことでトラブルを回避できたともアナリストは言う。Yahoo!をMicrosoftに合併しようとすれば、重大な問題が生じていたことが予想されるからだ。
「Yahoo!とMicrosoftの合併は困難を極めていただろう」とForresterのアナリスト、ジョージ・コロニー氏は5月4日のブログに記している。「Yahoo!で最も才能のある社員はGoogleに流れ、破壊的な文化の衝突が起き、またMicrosoftは再び当局の監視を受けることになりかねなかった。Microsoftが直面している最大の課題――実行可能なインターネットベースのアプリケーションという新興モデルへの順応――についても、Yahoo!は助けにならなかっただろう」
バルマー氏は今、インターネット業界でGoogle対抗姿勢を強化するため会社と製品をどう再編するかの決断を迫られている。
「バルマー氏は社風、社員、会社の速度、ソフトウェアのとらえ方(もはやディスクに入れるものではない)、設計センス、品質基準、顧客を新鮮味のないバージョンアップにつきあわせるという使い古された迷惑な戦略、ソフトウェア開発の古めかしいやり方(それがVistaの大失敗につながった)を改革しなければならない」とコロニー氏は記している。
Microsoftがこの改革を達成するためには自らの強みを生かすべきだとForrester Researchのリー氏は言い、次のように指摘する。
「Googleが独占している検索での地位を追い続けるよりも、Microsoftは『戦い』の展開を変え、検索をマーケティングミックスの一部に組み入れるべきだ。MicrosoftはGoogleにはない資産と「関係」を持っている。HotmailやMessengerなどのツールを通じたユーザー4億人との関係、aQuantiveの買収、堅調なディスプレイ広告事業、Facebookのような企業との投資/協力関係がそれだ」
Microsoftがこのマーケティングミックスに加えるべきは、前進の鍵となる強力な検索エンジンだとリー氏は言い添えた。
eWEEKが取材したIT専門家は、多くがMicrosoftの顧客であり、あらゆる事業的思惑の中で同社が中核的な企業のニーズに目を向け続けてくれることを願っていた。
米医療機器メーカーVNUS Medical TechnologiesのIT担当上級ディレクターでeWEEK Corporate Partnerのトム・ミラー氏は言う。「Yahoo!を買収してもわれわれにとって直接的な恩恵はないと思っていた。2つの異なる文化を統合しようとする中で、Microsoftの注意が中核事業からそれてしまうことを懸念した」
マイアミデードカレッジのCIO(最高情報責任者)でeWEEK Corporate Partnerのカール・ハールマン氏は、合併が成立していたとしても自分の組織の日常業務に大きな変化はなかったと思うが、Yahoo!買収によってクラウドにおけるMicrosoftの立場が強まることを望んでいたと話す。「(合併は)Googleと積極的に戦う意思を示すものとなり、長期的にはインターネットクラウドにコスト効率の高いソリューションをもたらしただろう」
ハールマン氏の願いはかなう可能性もある。まだ終わったわけではなさそうだ。
Microsoftは公には口にしないが、数カ月たって、特にもしもヤン氏がYahoo!を正しい方向に進めることができなかった場合、MicrosoftがあらためてYahoo!にアプローチする可能性は大いにある。ヤン氏はMicrosoftが提案を撤回した後、記者団に対し、今後も話し合いに応じる用意はあると述べている。
同時に、MicrosoftがFacebookとの間で非公式な買収交渉を始めたとの報道もある(Microsoftは現在、Facebookの少数株を持っている)。Time WarnerはAOLをYahoo!と合併させる交渉を行っており、GoogleはYahoo!に広告と検索サービスを提供するかもしれない。
Googleとの関係についてはYahoo!は慎重になる必要があるとOvumのミッチェル氏は言う。
「Googleとの関係強化も計画に入っているのかもしれないが、これについてYahoo!は慎重になる必要がある。広告でGoogleと組むことは、MicrosoftがYahoo!の買収を狙っていた時には一種のポイズンピル的な策として十分魅力的だったかもしれないが、Yahoo!の独立をめぐる深刻な疑問を生じさせる。問題は『Yahoo!がどうなりたいと考えているか』だ」
もしMicrosoftが再び買収を提案してきた場合――その可能性はある、しかも前回の1株33ドルを下回る価格で――Yahoo!とヤン氏はこの問題を自らに問い掛ける必要に迫られるだろう。
ヤン氏は「はったりをかけようとして、強く出過ぎたのかもしれない」とYankee Groupのディディオ氏は話している。
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