「かつてない難局」──「復活」ソニーが一転、リストラの可能性も
前期に過去最高益を達成したソニーが一転、円高と景気後退から大幅な減益に。液晶テレビやデジカメなどの販売見通しも下方修正を迫られた。逆風の長期化を覚悟し、構造改革に踏み切る方針だ。
「かつてない難局だ」──ソニーが大幅な減益となる業績予想の下方修正を発表した10月23日、大根田伸行CFOは厳しい表情で語った。米国の金融危機に端を発した円高と世界的な景気後退が輸出企業のソニーを襲う。「エレクトロニクスの復活」から一転、難局を乗り切るための構造改革に踏み切る予定で、人員削減につながるリストラの可能性も示唆した。
同社は2009年3月期の連結業績(米国会計基準)を修正。当初は4700億円としていた営業利益が、2700億円減の2000億円にとどまる見通し。前期比58%減と大幅な減益になる(ソニーが下方修正、営業益6割減に 円高が収益圧迫)。
営業利益の修正のうち、為替の影響はエレクトロニクスで1000億円、ゲームで300億円。前提レートをドルで100円前後、ユーロで140円前後と、それぞれ5円、20円の円高に見直した結果、1300億円が吹き飛んだ。
特にユーロ安の影響が大きい。為替レートが同社の営業利益に及ぼす影響(感応度)は、ドルが1円当たり40億円なのに対し、ユーロは1円当たり75億円。従来は70億円だったが、欧州向けの販売が拡大したため、感応度が高くなったという。
前期はユーロ高が利益に大きく貢献していたが、一転してユーロ安のショックに直撃された形だ。23日時点ではユーロは125円程度にまで下落しており、この水準が続けば「さらに800〜900億円のインパクト」になるという。
景気後退と競争激化の影響による修正はエレクトロニクスで900億円。製品の販売見通しを下方修正し、液晶テレビは100万台減の1600万台に、コンパクトデジタルカメラは200万台減の2400万台に、デジタルビデオカメラは70万台減の700万台にとどまる見込みだ(ソニー「PSP」販売見通しを上方修正 ゲーム事業は黒字化厳しく)。
液晶テレビは欧米や中国などで販売が予想を下回る上、価格下落率が想定より2〜3%悪化しているのも響いており、今期の目標だったテレビ事業の黒字化は「かなり厳しい」という。コンパクトデジカメは「マーケット全体が予想よりシュリンクしている」という。
「エレクトロニクスの復活」を目指して改革を進めてきたソニーは前期、売上高と純利益で過去最高を達成。「この危機の前は営業利益率5%の体質だった」(大根田CFO)。だが事業環境が一変し、「円高と株安が急速に回復するとは思わない」と、厳しい状況の長期化を覚悟している。「来期はさらに厳しい。今までやってきた以上の構造改革が必要」として、具体的なアクションに踏み切る。
詳細は「工場の統廃合や設備投資の見直しなどは検討課題であり、具体的に申し上げる段階にない」(大根田CFO)として明らかにしなかったが、「人員に手を付けるかどうかは言えないが、統廃合があればある程度はそうなる。固定費削減の必要もあり、そういうことがあっても不思議はない」として人員削減に踏み切る可能性も示唆した。
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