AMD、超軽量・低価格ノートPC市場への参入を表明
AMDはハイエンドサーバ用45ナノメートルOpteronとHPC向けの新しいグラフィックスチップを発表。「Yukon」でNetbook市場に参入する計画も明らかにした。
米AMDは2009年、IntelのAtomマイクロプロセッサに対抗する新プロセッサとプラットフォームを投入し、低価格・超軽量ノートPC向けプロセッサ市場に参入する。
いわゆる「Netbook」市場に参入するかどうかをめぐってこれまでAMDの態度ははっきりしなかったが、同社コンピューティングソリューション部門上級副社長のランディ・アレン氏は11月13日のアナリスト向け説明会で、プロセッサとグラフィックス、チップセットを組み合わせたプラットフォーム「Yukon」を2009年に投入し、この市場に参入すると表明した。
AMDはこれまで45ナノメートル(nm)プロセッサのOpteronに力を注いできたが、その一方で低価格ノートの市場に参入するとのうわさも浮上していた。アレン氏は11月13日に米カリフォルニア州サニーベールの社内で開かれたウォール街のアナリスト向け年次説明会で、このうわさを認めた。
AMDは超軽量・低価格ノート向けプロセッサでPCの使い心地を良くすることに力を入れたいとアレン氏は説明。具体的には、出先や旅客機内でこうしたノートPCを使い始めたビジネスユーザーのために、もっと優れた機能を提供したいと話した。
「フォームファクターはとても気に入っているが、使い心地が好きではないという顧客の声を耳にする。そこで当社のロードマップの一環として、プロセッサ、グラフィックス、チップセットを組み合わせ、この市場を真正面から見据えたプラットフォームを開発した」(アレン氏)
AMDは、小さいものでディスプレイサイズ10インチの小型ノートPCをターゲットとする。しかしアレン氏によれば、Atomプロセッサの別のバージョンを使ったモバイルインターネット端末(MID)でIntelと争うつもりはないという。
低価格・超軽量ノートPCの市場は現在、IntelのAtomプロセッサとプラットフォームが独占している。さらに、ASUSTeK ComputerのEee PCの成功を受け、PC世界大手のDell、Hewlett-Packard(HP)、Lenovo、Acerといった各社がこの市場に参入してきた。
IDCによれば、2008年第3四半期は景気悪化にもかかわらず、低価格・超軽量ノートPCが押し上げる形で市場が活性化された。AMDはこの魅力に抗し切れなかったようだ。
アレン氏は詳しい内容には踏み込まなかったが、同氏のプレゼンテーションではAMDが超軽量・低価格ノート向け新プラットフォームとプロセッサ、および一般的なノートPCとデスクトップPC向けの新製品をいつ、どこで投入するのかについて、ある程度の見通しは示された。
2009年上半期にAMDは超軽量・低価格ノート向けプラットフォーム「Yukon」を登場させる。このプラットフォームの総TDP(熱設計電力:プラットフォームやプロセッサが放出する熱量を示す)は25ワットとなる。さらに、Netbookと一般的なノートPC向けに新しいデュアルコアプロセッサも投入する予定。コードネームはそれぞれ「Caspian」「Conesus」となる。
2009年後半には、45nmプロセッサを組み込んだ汎用ノートPC向けプラットフォーム「Tigris」と、AMD製45nmプロセッサのデスクトップ市場デビューとなる「Kodiak」が登場する予定。2010年には4コアの汎用ノートPC向け45nmプロセッサ「Champlain」と新プラットフォームの「Danube」が登場する。
2010年後半か2011年初めには、製造工程を45nmから32nmに切り替える。32nmプロセス採用のプロセッサは、AMDが製造部門をスピンオフして設立したFoundry Companyが製造を手掛ける。
そして2011年には新しいマイクロアーキテクチャをベースとした3種類の新プロセッサを登場させる。1つ目の「Orochi」は、「Bulldozer」という新しいプロセッシングコアを搭載。2つ目のプロセッサは「Ontario」と呼ばれ、「Bobcat」というプロセッシングコアアーキテクチャがベースになる。
Orochiが高性能デスクトップPC向けとなるのに対し、Ontarioは超軽量ノートとNetbook向けに設計される。Ontarioをサポートするプラットフォームは「Brazos」と呼ばれる。
これらプロセッサに加え、AMDはAPU(Accelerated Processing Unit)と名付けた部品の最初の製品「Liano」を初登場させる。AMDが同じシリコン上にグラフィックスとCPUを組み合わせたプロセッサを投入するのはこれが初めてとなる。Lianoをサポートするプラットフォームはコードネームで「Sabine」と呼ばれ、Microsoft DirectX 11グラフィックスとDDR3(Double Data Rate 3)メモリに対応する。
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