「mixiを小さなインターネットに」 招待制・“18禁”廃止の狙いを笠原社長に聞く(1/2 ページ)
招待制の廃止や18歳未満への開放は「mixiを小さなインターネットにする」ための布石。笠原社長はmixiを、人間関係を基軸にしたプラットフォームにしていきたいという。
完全招待制をアイデンティティとしていたSNS「mixi」が、サービス開始5年目にして招待制を撤廃する。2009年春から、招待状なしでも利用できる登録制を導入。18歳以上としてきた年齢制限も緩和し、今年12月10日から、15〜17歳でも利用できるようにする。
運営元・ミクシィの狙いは、競合するSNS「GREE」や「モバゲータウン」への対抗だろうか。両サービスは招待不要で参加でき年齢制限もないため、10代を中心とした若年層に支持され、ユーザー数・収益面で急成長してきた。
mixiもユーザー増加のペースを速め、10代の取り込みを急ぐのか――笠原健治社長は「そうではない」と否定する。「この施策で爆発的にユーザーを増やしたいという意図はない。短期的な利益も追求していない」
狙いを読み解くカギは、同時に発表したオープンプラットフォーム「mixi Platform」の推進にあるという。mixi Platformを利用し、外部開発者がmixi向けにさまざまなアプリケーションやサービスを構築する際、ユーザーの基盤となるソーシャルグラフ(人と人とのつながり情報)は、友人関係や同級生、会社の仲間、親子など、できるだけ多様な方がサービスの可能性が広がる。
ユーザー層が拡大し、オープン化したmixiは「小さなインターネットのようなもの」だと笠原社長は言う。「インターネットというプラットフォーム上の、もう1つのプラットフォームにしたい」
35歳以上、地方在住――mixiが“取りこぼした”層
そもそもmixiはなぜ、完全招待制だったのだろうか。「誰かに誘ってもらった方が、操作方法を教えてもらうなどしてスムーズに楽しめる。マイミクをたどっていけば友人・知人も見つけやすい」というのが一番の理由だったという。
サービス開始当初は「招待制だと安心感が高い」とされていたが、「1500万ユーザー以上が利用している現在『限られた空間だから安心できる』というのはあてはまらない」のが実態。スパムメッセージなどをまき散らす業者は「招待制の壁はやすやすと越えている」ため、招待制でユーザーを守ることはできなくなっている。
その一方で、招待制ではユーザー層が広がらないという悩みがあった。mixiユーザーは20代・首都圏が中心。「mixiに参加したいのだが周囲にユーザーがいない」という問い合わせもコンスタントに届いていた。「mixiに一歩離れたコミュニティーに飛び火しづらかった。登録制の導入で、35歳以上や地方在住の人にも広がるのではと期待している」(笠原社長)
招待なしで入会した場合、最初は孤立無縁で楽しみ方が分からない可能性がある。対策としてユーザーインタフェースを分かりやすくしたり、初心者向けガイダンスを充実させるほか、「友人の検索を支援するような新サービス」(原田明典mixi事業部長)を導入し、1人で入会したユーザーもすぐに知り合いを見つけられるようにする。
マイミクに縛られない新しい人間関係も作る。「mixiの交流は日記が中心。今は(日記を見せ合う関係の)マイミクという1つのソーシャルグラフしかないが、人間関係はもっと多様だ」(原田事業部長)。新たな人間関係の具体像は明らかにしていないが、マイミクより“浅い”関係でつながれるようになりそうだ。
「1ユーザー当たりの平均マイミク数は24〜25だが、Facebookは70〜80人、MySpaceはさらに多い」(原田事業部長)――新たな人間関係を作ることで既存ユーザー同士のソーシャルグラフ拡大も狙っているようだ。
未成年の日記は「マイミク限定」、コミュニティ参加不可能
mixiは18歳以上限定サービスとして運営してきた。「年齢に厳密な意味はなかったが、サービス開始当時(2004年春)の基準で、コミュニケーションスキルやネットリテラシーが付いた年代が18歳だろう」(笠原社長)と考えてのことだったという。入会時に年齢確認をしていたわけではなく、実際には18歳未満のユーザーが年齢を詐称して利用するケースもあったようだ。
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